第44話ゴルキチ編 相変わらずの斜め上
リベールは砦に近づくにつれ増えるプレイヤーと歓声にうめき声を出しつつ、ようやく砦前まで到着する。
なんと、砦の衛兵さんがしゃべった!砦の衛兵はNPCなので会話することはないが、どうも運営が衛兵を操作しているらしい。
リベールは先ほど考えた邪推が当たってるんじゃないかと懸念する。運営がリベールのログインを見てたんじゃないかという懸念だ。
竜二は知らない。彼の考えてる以上にリベールは有名なキャラクターになってることを。
いよいよ、難易度8「死霊騎士」二体同時に挑戦だ。これまでボス二体同時討伐自体は存在した。しかし、最高でも難易度5までだった。
今回の難易度8「死霊騎士」二体同時は、ドラゴンバスターとして新しい要素になる。そのため、突発イベントで試すのだろう。
二体同時。これまでのリベールでは不可能だったが、今はやれる。ゴルキチ用に作成した戦闘用AIは安全な位置を確保する仕組みになっており、リベールの使う位置情報AIに比べ格段に融通性がある。
遊びが大きいので、二体でも対応可能なのだ。その分敵に時間あたりで与えるダメージはそれなりに減る。
ゴルキチと同様戦闘用AIを使用する際には、リベールであってもショートカットを使うが、リベールのショートカットは全て一動作に限られており、一つ一つの動作はゴルキチの半分以下だ。
その分正確かつ精密な操作が要求されるが、そこはリベールの得意とするところだ。
ショートカットが短い分、ゴルキチより遊びが少なくなるがフィールドにプレイヤーを含め三体以内なら問題は起こらない。「死霊騎士」は過去に動作を全て記録しているので、新しくマクロを作成する必要もない。
つまり「死霊騎士」二体であっても問題はないのだ。
ボスエリア移動前に、戦闘用AIと操作マクロを起動するリベール。実はさらに二つのマクロがあったのだが、現在は使っていない。武器修理マクロと会話応答用マクロがそれに当たる。
現状竜二が画面から離れてリベールを使うことがなくなったので、引退復帰後からこの二つのマクロはお蔵入りしている。
難易度8「死霊騎士」のボスエリアは石造りの城風の大広間での戦闘となる。荒廃した大広間は、アンデットが住むに相応しい雰囲気を出しており、城を守るかつての騎士の成れの果てが死霊騎士という設定になっている。
ブレスや飛び道具といった特殊なスキルがない代わりに、非常に剣の腕が立つのが死霊騎士の特徴になり、片手剣と盾による巧みな攻防をかいくぐり斬りつける必要があるテクニカルなボスになっている。体のサイズも大きくはなく、人型骸骨が防具を装備し、片手剣と盾を持っている。
いよいよボスエリアに移動するリベールを左右から挟むように二体の死霊騎士が対峙する。
リベールが向かったのは右だ!
下段に常闇の斧を構えると転がるように死霊騎士に接近する。
死霊騎士の剣がリベールに向かうも低い体勢のため剣は届かない。
伸びきった死霊騎士の腕をかいくぐるようにリベールは斧を切り上げ死霊騎士の胴体に的確に当てる。
そのまま後ろに抜け、振り向きざまに振り上がった斧を振り下ろし、死霊騎士の頭を痛打する!
もう一体の死霊騎士が駆けてくるが、リベールに斬られた死霊騎士が邪魔になり近寄ることが出来ない。
リベールは片方の死霊騎士を壁にし、もう片方の死霊騎士を寄せ付けぬよう流麗な立ち回りで彼らを圧倒する。
遠距離攻撃手段を持たない死霊騎士たちでは、どうすることも出来ず片方が倒れ、もう片方も間も無く崩れ落ちる。
死霊騎士が全て倒れた瞬間、観戦していた多くのプレイヤーからチャットが入る。
「リベール!」
「リベール!」
「さすがリベール殿!」
NPC傭兵のチャットも入っていた気がするが、見なかったことに決めたリベールはボスエリアから元の砦に移動する。
「リベール殿、死霊騎士の討伐ありがとうございます」
出てきたリベールに真っ先に話しかけたのはNPC傭兵だった。彼はリベールに巻物を一つ手渡すと敬礼のモーションを取る。
この巻物はイベントの死霊騎士を倒した全てのプレイヤーに配られているものだが、演出のためかリベールにはNPC衛兵自ら渡してくれたようだ。
巻物の中身を見てみると「ガーダーストッキングのレシピ」だった。運営はストッキングやらニーハイソックスやらそういうのばっかりだな!心の中で毒づくリベール。
討伐という名誉ある行動をしたので、イギリスにあるガーター勲章のガーダーとかけて当レシピになったのだろうが、発想が斜め上すぎる......
「衛兵殿、私はこのあと用命があります故これにて」
リベールも衛兵に向かい敬礼のモーションを取ると、踵を返し砦を立ち去ることにする。
後ろでは歓声が物凄い......俺は何も聞いてない何も聞いてないと繰り返しながらリベールはゴルキチの居るアビスまで帰還するのだった。
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[鬼畜王より王命来た!]少女騎士リベール その232ぺったん
<スペック>
名前:リベール
性別:女
職業:ベルセルク
特徴:身長低め、茶髪アップに黒目の怜悧な顔、ぺったん
装備:武器 レア度9常闇の斧 レア度8 竜鱗の軽鎧(薄い赤色)、海龍皮のスカート(青)、龍燐のスカートガード(薄い赤)
出没場所:衛兵もノリノリだ!死霊騎士を倒せ!
21.名無しのドラゴン
リベールたんも運営さんもノリノリだなwww
24.名無しのジャッカル
「王命を果たしに」超カッコイイです。一度は言ってみたいかもw
26.名無しのバスター
運営さんもまさか発言までするとは。しかも微妙にカッコイイ。
28.名無しの魔法少女
リベールさん、ボスエリアに移動したわよ。
37.名無しのバスター
二人以上なら、死霊騎士を分断して倒すと一体と同じになるんだけどなあ。リベールたんソロだし
39.ぺったんマスター
うめえええええwww死霊騎士を壁にしてるwww
48.名無しのドラゴン
そういや、巻物配ってるけど報酬何なの?
51.名無しのジャッカル
ガーダーストッキングのレシピだよwww
54.ぺったんマスター
ハアハア。ガーストリベールたん。
57.名無しのテイラー
>>54
たぶん着ないからw
59.名無しのバスター
ガーター勲章とかけて、ガーダーストッキング何だとよwww
60.名無しのドラゴン
ひどい斜め上を見たwww
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――六日後
アジト用の資材を集め始めて六日が立つ頃にようやく資材が集まり、アジトの建設がスタートする。メイリンを通じて依頼を行ったあのツリーハウスに住む家専プレイヤーは快く依頼を受けてくれ建設の運びとなった。
メイリンが言うには、物凄い食いつきで依頼を受けてくれたそうだ。アジトは通常の家より広い土地を使用できるため、なかなか建築の機会はないそうだ。そのため、家専プレイヤーにとっても非常にいいお話だったというわけだ。
あとはアジト完成まで待つばかりとなり、内装についてメイリンら女性組が楽しそうに話しているのをゴルキチは横で聞いていた。
いよいよアジトが出来るんだなあ。ギルドらしくなってきたぞ。意識を新たにゴルキチはグッと拳を握り締めた。
そして翌月......新たなイベント告知が来る。
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