第40話ゴルキチ編 ギルド設立
ゴルキチは先日ジャッカルが持ってきた話について頭を悩ませていた。ジャッカルはてっきりリベールにでもギルドの象徴になって欲しいとかの話だと思っていた竜二だったが、聞いてみると「ゴルキチにこそギルドリーダーとなってギルドを設立してみないか?」という提案だった。
ギルドはプレイヤー同士で集まるチームのようなもので、チームメンバーはギルドチャットという専用チャットが使えたり、ギルド用の家である「アジト」を建築出来たりする。
現状ドラゴンバスターでは対人戦がないため、ギルドはギルドチャットと「アジト」建築がギルドを作るメリットとなる。
今後のアップデート次第でギルドのあり方も変わってくるかもしれないが、現状仲良しグループの集まり程度でしかない。
ただ、「アジト」はプレイヤーが建築できる家より断然大きな土地に建築することができるので、人気のある要素となっている。
今のギルドのあり方であれば、そこまで気負わずに設立してもいいものだが、自分がリーダーとなると少し違うよなあと思う竜二だった。
ゴルキチのフレンドリストはリベールを入れていつもの三人のみだ。今後おそらくグルードがリストに追加されると思うが、それでも合計五人でしかない。
ギルドを作るには最低人数という項目があり、その人数は四人。四人集まればギルドを設立することは一応可能ではある。
設立する場合はリーダーになるプレイヤーがギルド設立申請を行い、残りのプレイヤーが設立申請をしたギルドにメンバー登録を行う。メンバー人数が四人になれば晴れてギルドとして成立するというシステムだ。
ギルドメンバーになるのなら見知った人がいるのならギルドに入るのも吝かではないのだけど、自分がリーダーとなると悶々としてしまう竜二は、どうするべきか答えが定まらないでいる。しかし今日は悩んでばかりはいられない事情があった。
先日予定していた鍋パーティが本日開催なのだ。響也と茜はすでに買い出しに出かけており、先輩ももうすぐこちらにやって来るはず。ちょうど竜二が立ち上がった時に呼び鈴が鳴り先輩の来訪を告げる。
「やっほー。竜二くん」
先輩はいつものビジネスカジュアルな格好ではなく、デニム生地の短いスカートに黒のタイツ、足にはファーブーツ。上半身は白のダウンコートに赤のハイネックセーターとラフな格好だった。
竜二は部屋の中にいたのでさらにラフな格好だ。ジーパンに黒のカッターシャツというオシャレを全く感じさせないスタイルであった。
梢を家に招き入れた竜二はさっそく二人で鍋の準備を行い、響也と茜の帰宅を待つ。その間二人はいかに二人の仲を取り持つかを話していたが、二人共経験値が低く近くに座らせるくらいしか思いつかなかったという残念さを発揮している。
そうこうしているうちに響也と茜が帰宅し、いざ鍋パーティが始まる。
鍋は白菜とモヤシがたっぷり入った坦々鍋というものにした。鍋の最後はラーメンを入れて楽しむのだ。
四人は楽しく会話していたものの、残念な人たちだったので結局共通の話題であるドラゴンバスターの話ばかりになってしまった。恋愛はどこにいったのだろうか。
最初、仲を取り持つつもりだった高校生組と大人組双方とも目的をすっかり忘れドラゴンバスターの話に花を咲かせている。
「いや、ジャッカルさんがさ。ギルド設立とか言うんだよ。どう返せばいいか悩んでるんだよ」
竜二が先日のジャッカルの提案について三人に話すと三人は口々にゴルキチのギルド設立に賛成する。
「兄さん、俺はギルドどこにも入ってないから兄さんのところに行くよ!」
「竜二くん、面白そうだから私も行く!」
「迷惑じゃなかったら、あたしも参加していいですか?」
三者三様ではあったが、三人の意見は一致している。つまり、竜二をリーダーとしてギルドを設立しようということだ。
ギルド設立を断る方向に傾いていた竜二はこれに困惑する。しかし、三人が賛成する形でゴルキチによるギルドは設立の方向に話が進むことになった。
この後、時間があればドラゴンバスターへログインすることを決めた後、鍋パーティは無事解散の運びとなる。
食事の後片付けが済んだ竜二は、ゴルキチでログインし王都コンツノープルへ移動する。ジャッカルにメールしようとするとちょうどジャッカルが目に入ったので彼に手を振るゴルキチ。
「やあ、ジャッカル」
ゴルキチの挨拶に手をあげるポーズで応えるジャッカル。
「ゴルキチ。考えてくれたのか?」
「ああ、ギルド作ってみるよ。メンバーも集まりそうだよ」
「お?メイリンさんにイチゴちゃんは入るだろうと思ってたんだ。あと一人、入りたいというプレイヤーがいたんだよ」
ジャッカルが言うにはギルド設立の四人については、メイリンとイチゴにジャッカルの知り合い?を加えて設立できると彼は考えてたらしい。それで設立人数が足りると思ってたみたいだ。
「ああ、もう一人はみんな知ってるプレイヤーだよ」
あえてここでは名前を出さずに後で驚かしてやろうとニヤリ口元を緩めるゴルキチ。
「おお、そうか!人数は多いほうがいい!俺の所属するギルドの隣に土地を確保しておいたぞ」
ギルド「ウォーリアーズ」の隣の土地を確保してくれたそうだ。確保してくれたプレイヤーがゴルキチのギルドに入りたいと言っていることをジャッカルはゴルキチに説明してくれた。
土地まで確保してくれるとは、そんなプレイヤー知り合いにいたかなあと逆に不安になるゴルキチであった。
「こんちー」
ジャッカルとゴルキチがチャットしているところに、ゴシック衣装に薄紫のニーハイソックスを装備したしゅてるんがやって来る。相変わらずブレない衣装である。
「しゅてるんさん、こんにちは」
ゴルキチは挨拶のポーズでしゅてるんに応じる。
「ゴルキチちゃん、ギルド作るのの?」
「はい。これから申請しに行こうかと。その前に土地を確保してくれた人にお礼をと思ってます」
「その必要はないよよ。確保したの私だからねん」
ちょっと待て!しゅてるんさんが土地確保って!俺は彼女に恩を売ってないし、親しくしていたわけでもないんだけど。しゅてるんが土地確保してくれたことに驚きを隠せないゴルキチであった。
「しゅてるんさんが!ありがとうございます」
「すぐ埋まっちゃうからねね。ウォーリアーズの隣だしよいとこよよ」
さて、挨拶もしたし申請に行くかとゴルキチは別れの挨拶をしゅてるんにしようとすると、
「私もゴルキチちゃんのギルドに入れてねね」
としゅてるんは返してきた。
ですよねー。しゅてるんは土地も確保してくれたし、アクは強いが悪い人でもないし他のみんなとも知り合いだし問題はない。ただ、アクが強すぎるが。
「はい。申請お願いします」
まあある意味楽しいかもしれないと、まだ見ぬギルドに思いを馳せるゴルキチなのであった。
この後、自宅へ帰宅したメイリンとイチゴもログインし、ゴルキチの作成したギルドに登録申請を行う。もちろんグルードも同じように申請を行った。
グルードを見たしゅてるんは若干驚いていたものの「ゴルキチちゃんの魅力ならわかるかもも」とか謎のセリフを残していたという。
四人以上が登録したことで、無事ゴルキチのギルドは正式にスタートすることができたのだった。
『ギルドが発足したらまず何をするのか?』
という問に対し全員は、「名前を決めること」と答え、あーだこーだ名前を全員で考えた結果微妙なものになってしまう。徹夜明けの変なテンションで作ったかのような名前になってしまった。
その名とは「王国教習所」
なぜ教習所なのかとか、本当に意味が分からないが決めた時はこれで盛り上がってしまったのだ。後から名前は変更することもできるので五人はこれで取り敢えずは納得したみたいだ。
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