第37話トレハン編裏話 しゅてるん
――しゅてるん
トレジャーハントの新情報を見たしゅてるんは少し頭を悩ませることになる。
しゅてるんが狙っているのは、メタリックスプレーというアイテムになる。
何故しゅてるんがメタリックスプレーを狙っているのかというと衣装コレクションに新しい色が追加できるからだ。しゅてるんは自宅の衣装タンスを眺めながらどうやってアイテムを取るか思案を始める。
しゅてるんの自宅は、黒と紫に支配されたゴシック風の家となっており、蝶の柄もポイントポイントで入っている。このデザインは某有名ブランドを模倣したもので版権的に大丈夫なのかと思わせるものだ。また、彼女の家はお店も運営しているので家のエリア分けがなされている。
家は設定次第で誰が入れるのか決めることができようになっていて、本人以外は入れないプライベートモード、登録した人のみ入れるカスタマイズモード、誰でも入れるパブリックモードの設定ができる。
店を運営したい場合には、家自体をパブリックモードに設定し、プライベートエリアに続く扉にプライベートモードもしくはカスタマイズモードの設定を行う事で、扉を誰でも開けることはできなくなりエリア分けが可能となる。
しゅてるんのお店にあるメインアイテムは、各色揃えたゴシック衣装とレアではない各種ニーハイソックス。
ゴシック衣装にはいくつかのデザインを用意しており、テイラーの調整スキル用のレースや蝶のパーツも取り揃えている。
まさにしゅてるんの趣味が凝縮した店舗なのだ。
例の馬王の森で取れるレアニーハイソックスや、各種レアカラーの衣装については販売していない。これらはプライベートエリアにある、衣装タンスに大事に仕舞われているのだった。
話を冒頭に戻すと、トレジャーハントの追加情報を閲覧したしゅてるんは頭を悩ませていた。
取得可能なアイテムはボスによって分かれており、しゅてるんの欲しいメタリックスプレーは難易度10「サキュバス」を倒さないといけない。
難易度10となるとしゅてるんの腕前では勝率五割といったところで、せっかく地図を集めても半分は無駄になる計算だ。
トレジャーハントは各種ボスから取得できる地図を使い、地図に記載のある場所で掘り起こすと宝箱が出てくる。
それを開けるとサキュバスなどのボスが出てくるという仕組みになっている。ここで出るボスを倒して初めてスプレーなどのレアアイテムが低確率で出るのだ。
地図自体も必ず出るわけではないので、サキュバスの勝率が五割は正直面倒だ。これが、男キャラクターで出現するインキュバスから取得できるならしゅてるんのフレンドであるチーズポテトに頼めるのだが......
考えていても仕方ないのの。頼める人がいないか探しに行ってみるのよ。
しゅてるんは衣装タンスを閉じ、強者を求めて出掛けることにする。目指すは難易度10の中でも最高峰と言われる「天空王」だ。「天空王」を倒せるプレイヤーであれば「サキュバス」をほぼミス無しで倒せる可能性も高い。
行ってみると超級プレイヤーが揃い踏みしていてビックリする。
チーズポテチ、グルードそしてリベールたんだ。
三人共「天空王」をソロで倒し切る超絶スキルの持ち主。でもでも、私の目当ては女キャラクターであるリベールたんのみよよ。
しゅてるんはリベールに熱い視線を送り続ける。
「ええ、チーズポテト殿。王はレシピを求めておられる」
ちょうどしゅてるんが着いた時にリベールが王命について話をしていたところだった。
王様はレシピが欲しいのかあ。ん。王様が「サイハイソックス」は要らないよねね。王女様かなな?
レシピなら私が欲しいスプレーと被らないよねね?
少し不思議に思いつつも声をかけることにする。
「こんちー」
その後グルード、チーズポテト、リベールの順に「天空王」にソロで挑んで行く。
しゅてるんの目から見ても三人のプレイヤースキルは圧巻の一言に尽きる。最高峰の「天空王」とはいえこの三人にかかれば形無しだ。
数度「天空王」を討伐した三人が一息つくのを見計らい、しゅてるんはリベールににじり寄る。
「リベールたん、地図から一人てやるのの?」
「そのつもりだ」
リベールは騎士風の口調でしゅてるんに応じる。
「リベールたん、私と組まない?」
リベールたんはログイン時間が決まっていてそんなに長い時間ログインしないから、私が地図を集めておけば効率がよくなるのの、ということをリベールに説明し、リベールは不思議そうな顔をしていたもののしゅてるんの提案を受けてくれる。
しゅてるん単独でボスに挑んだ場合、勝率は五割になる。ボスからレアアイテムが出る確率は低く、リベールとしゅてるんの欲しいアイテムは被っていない。となると、リベールにボスを倒してもらえれば倍の数を倒すことができるのだ。
リベールはしゅてるんだけが大変だと思っているようだが、しゅてるんにしてみれば効率が二倍になる。この点を余りリベールは分かっていないようではあったが......
ともあれ、欲しいアイテムには並々ならぬ執着を発揮するしゅてるんは、ひたすら難易度9ボスを狩り続け地図を集め続ける。
リベールが来る時間になると、転移魔法を使いリベールを輸送する。リベールの武器修理については、しゅてるんの自宅で彼女の別キャラクターが行った。
余談ではあるが、しゅてるんの家を見たリベールは少したじろいていたという。もちろんリベールをプライベートエリアに入れる登録は速攻行ったしゅてるん。
自慢のコレクションをリベールにも見てもらい割に満足したことはしゅてるんの心の中だけの秘密だ。
宝箱を開け始めて二日目には、待望のメタリックスプレーを手に入れる。三日目にもメタリックスプレーが出る。四日目にはようやくリベールの求めていた「サイハイソックスのレシピ」が手に入ったのだった。
しかしどうもリベールの様子がおかしい。不思議に思ったしゅてるんはリベールに問いかける。
「リベールたん、王女様へのサイハイソックスのレシピじゃなかったの?」
首を振るリベール。てっきり王女様へのサイハイソックスのプレゼントと思っていたしゅてるんは、ここにきてようやくリベールの言っている「レシピ」とは「天空王のスープレシピ」ということを知る。
リベールたんは公式サイト見てないのかなな。余り情報を集めそうには見えないから、きっと「天空王のスープレシピ」の名前だけでトレジャーハントしたのかなあ。
チーズポテチはラスティスプレーに執着していたから、きっと「天空王のスープレシピ」もすでに持ってると思うのの。思案したしゅてるんはチーズポテトに連絡を取ることを決めるのだった。
「あー、ちょっと待ってねね。チーズポテチに連絡するねね」
リベールに伝えると、しゅてるんはチーズポテトにテルを行い、状況を聞いてみると「天空王のスープレシピ」は既に三枚取得済みとのこと。
リベールにチーズポテトがレシピを持っていることを伝え、メタリックスプレーと「天空王のスープレシピ」をチーズポテトに交換してもらうことで話がついた。
アイテムを交換するときのリベールたんの焦った表情は可愛かったのの。
使わなくなってしまった「サイハイソックスのレシピ」は折角なので、作成しようということになりメイリンたちと一緒に試着会を行うことになる。
リベールはセーラー服で登場し、しゅてるんは意外な服装に少し驚いたものの、セーラー服のリベールたんも可愛いなあとニヤニヤしていた。サイハイソックスも似合っていたんだけど、恥ずかしそうにしてるのがたまらなかったのの。
その時のことを思い出し、未だにニヤニヤが止まらないしゅてるんであった。
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