第35話トレハン編 三者三様

 難易度9「サキュバス」はドラゴンバスター最小サイズのボスで、運営が将来対人戦を導入するかどうかの指針としたいという専らの噂になっている。そのサイズはプレイヤーが操るキャラクターと変わらない。

 見た目も人間に近く、長いストレートの黒髪に、豊満な肉体美、藤色のビキニを着た姿なのだが、明らかに人と違う特徴がある。それは、背中から生えた黒い小さなコウモリの翼と、お尻から生えた黒い先の尖った尻尾だ。

 人型サイズのボスだからといって侮ることは出来ない。何しろサキュバスは難易度こそ9とは言え、実質の強さは難易度10に設定されている。


 一発の火力は、難易度10最下位クラスとは言え、難易度が難易度だけに強力な火力を備える。

 主な攻撃は遠距離からの魔法。近寄ると隙があるのかというと、そうではなく接近戦用の衝撃波が飛んでくる。

 何より厄介なのは、シールド魔法になる。サキュバスの視線が通る範囲にシールド魔法を張ることで、攻撃を防いでしまうのだ。

 このシールドはグラディエーターの盾より高性能で、一切のダメージ、衝撃を通さない。さらに厄介なことに、サキュバスのシールドは透明なため目で見ることが出来ない。

 流石難易度10相当のボスと言える強さを持つサキュバスだが、防具がビキニだけなので、防御力そのものは低い。攻撃を当てることが困難なテクニカルなボスと言えるだろう。

 余談ではあるが、インキュバスも性別が違うだけで動きはサキュバスと同様であった。


 テクニカルなボスはリベールにとってやりやすい相手なので、竜二のマクロはそれほど時間をかけず完成する。後はお披露目を待つばかりだ。




 地図を出すためにリベールが向かったのは難易度10「天空王」の座す天の頂という山脈だった。

 「天空王」は職業が導入されたり、良い装備が行き渡ったりしたので、ソロで倒せるプレイヤーも今となっては複数存在する。しかしながら、さすが最高峰のボスだけに、一部傭兵プレイヤーを除いては敷居は未だ高いものだ。


「リベール殿。王命ですかな?」


 気さくにリベールに話かけてきたのは、近衛騎士チーズポテトだった。隣には、名剣ソウルシーカーを携えた「シールドマスター」グルードまで控えている。


「ええ、チーズポテト殿。王はレシピを求めておられる」


 リベールが応じると、二人は頷きリベールの目的はトレジャーハントから出るレシピで、まずは地図を取りにここへ来たのだなと理解する。


「こんちー」


 ゾワりと鳥肌が立つリベール。この挨拶はアレだ。ゴシック衣装に薄紫のニーハイソックスといういつもの格好に特徴的な喋り方のしゅてるんだ。


「揃い踏みですな。誰から行きますかな?」


 親しげに肩を竦めおどけてみせるチーズポテトに残り三人は顔を見合わせる。


「私は見に来ただけなのの。天空王で地図集めはしんどいから、別のボスでやるよよ」


 しゅてるんは「天空王」に挑まないそうだ。艷っぽい視線で彼女はリベールを見つめるばかり。どうもリベールに会いに来ただけに見える。


「じゃあ、順番に行きますか」


 初めてグルードが口を開き、まずは自分から行くと提案する。


「なら、次はわたくしめが出ますぞ。リベール殿はどうされますか?」


 「天空王」は特殊なボスではないので、一度に全員が挑んでもそれぞれソロで戦える。実のところ待つ必要はない。しかし、リベールは彼ら二人の超絶プレイを見たくあったので二人の後に続こうと考えた。


「お二人の戦いをよろしければ、見て見たいのです。よろしいですか?」


 リベールの願いに二人は問題無いと頷き、まずはグルードがボスエリアへと消えて行った。


 グルードの特徴は超攻撃的なシールド捌きだ。天空王の攻撃の出先を先読みし、盾で出鼻をくじく。突進しつつ盾を殴りつけるように振るい、天空王が口から吐く炎を口先で塞ぎ込み、ソウルシーカーで斬りつけ、完全に動きを止める。

 天空王が空に舞えば、ワザと隙を作り誘い込み、巧みなシールド捌きで逸らし、斬りつける。相変わらずの圧巻プレイだとリベールは感じていた。

 グルードの盾使いのセンスはきっと誰にも真似できない。これこそが「シールドマスター」と言われる所以だろう。

 グルードにとって盾は防ぐものではなく、攻撃を叩き潰すものなのだ。


 続いてチーズポテトがボスエリアに挑む。

 リベールはチーズポテトのプレイをしっかりと見るのは実のところこれが初めてである。近衛騎士という職業は、唯一ハルバードを装備できる職業になる。

 逆にハルバードしか近衛騎士は装備できない。さらには、防具性能も通常の戦闘職より低いものになる。

 ハルバードは確かに高性能と言えば、高性能だ。といっても同じクラスの武器に比べ攻撃力が勝るのかというとそうではない。

 ハルバードの真価は、斬る・突く・叩くの三つの打撃種類を単独で行うことができることに尽きる。ハルバード以外の多くの武器はどれか一つしか行うことができない。


 リベールの槍では突くのみであるし、グルードの剣は斬りつけるのみだ。全ての打撃種類が使えるからといって、強いのかというと一概にそうとは言えない。できる動作が多い分、操作がかなり複雑になる。

 ボスモンスターは部位によって、硬い柔らかいが設定されている。例えば鱗に覆われた部分は固く、腹の部分は柔らかいといった感じで。それに加え、斬る・突く・叩くによってダメージの通りやすさも変わってくる。

 硬い角であっても叩く動作ならダメージを与えることができるし、狭い僅かな弱点には突く動作なら当てることができる。


 ボスモンスターの弱点を知り尽くし、的確に斬る・突く・叩くを当てることができて初めてハルバードは有用な武器となるのだ。そこまで使えて初めて、防御力を落としてまでハルバードを使う意味が出てくる。


 ではチーズポテトはどうだったのか。

 「天空王」に対峙するチーズポテトは、静かに「天空王」に接近しつつ、何かを待っているようだ。

 「天空王」がチーズポテトを威嚇する咆哮を上げる。そのまま口に炎が貯まり始める「天空王」チーズポテトはこの長い一連の動作を待ち構えていた。

 彼は大きくハルバードを振りかぶると、穂先にあるハンマーの部分を「天空王」の脳天に叩きつける。振り抜き、回転し再度ハンマーを叩きつける。

 それにも怯まず「天空王」は口の炎が貯まりきりいよいよ吐き出そうとする。しかし、チーズポテトの攻撃は止まない。再度二回ハンマーを叩きつけたのだ。

 流石の「天空王」もまともに四回ハンマーの打撃を頭に食らうと酩酊する。この隙を逃すチーズポテトではない。今度は穂先の槍でもって「天空王」の目を突き刺す。悲鳴をあげる「天空王」だが、まだ酩酊状態が解けていない。チーズポテトのハルバードが再度「天空王」を突き刺す。


 酩酊を逃れた「天空王」は怒りの眼差しでチーズポテトを凝視しようとするが、目線にチーズポテトは入らない。彼はすでに「天空王」の背後に回っていた。次は穂先の斧の部分で翼を斬りつける。


 チーズポテトの攻撃は的確に過ぎた。彼ほどハルバードを愛し、使いこなすプレイヤーは他にはいないだろう。一芸特化。グルードもそうだがチーズポテトもハルバードを使うことにかけて右に出るものはいないようであった。


 チーズポテトが出てくると、次はリベールの番だ。

 リベールはいつもの流麗な動きで「天空王」を倒すのだった。ボスエリアから出てきたリベールをじーっと見つめるしゅてるんが、何か言いたげな様子ではあったが......


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[久々に王命]少女騎士リベール その209ぺったん


<スペック>


名前:リベール

性別:女

職業:ベルセルク

特徴:身長低め、茶髪アップに黒目の怜悧な顔、ぺったん

装備:武器 レア度9常闇の斧 レア度8 竜鱗の軽鎧(薄い赤色)、海龍皮のスカート(青)、龍燐のスカートガード(薄い赤) 

出没場所:「天空王」


203.名無しのドラゴン

天空王エリアやばいwww


204.名無しのバスター

傭兵二人に、ニーハイの人、そしてリベールたん


205.名無しの魔法少女

オールスターじゃない!見に行きたい。


207.名無しのドラゴン

いや、これはすごい。傭兵二人とリベールたんはソロで挑んでた。全員涼しい顔で倒してたぞwww


208.名無しのテイラー

皆トレハン目当てかな?


209.名無しのバスター

>>208

多分そうだと思う。人が増えてきたwww


212.名無しのドラゴン

まあ、このメンバーならそうなるわなww

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