第27話パンサー編裏話 ジャッカル1

 ジャッカルはゴルキチたちと遊びながらも、ゴルキチたちと違っているところがある。ジャッカルはゴルキチの知り合いの中で唯一ギルドに所属するメンバーである。

 所属するギルドは「ウォーリアーズ」。世紀末なジャッカルが作中でつくっていたチーム名とおなじだ。


 ドラゴンバスターオンラインでも、プレイヤー同士がチームを作ることができる。他のゲームではクランやギルド、商会などと呼ばれているものだ。

 ドラゴンバスターでは、プレイヤー同士のチームをギルドという。ギルドに加入したメンバー同士は離れていてもリアルタイムでチャットができる。

 個人個人で離れたところでチャットできる仕組みにテルがある。テルはテルしている二人にしかチャットが見えない。

 同じようにギルドメンバー同士のチャットも外にはチャットが見えない仕組みになっている。ギルドメンバー同士のチャットはギルドチャットと呼ばれている。

 他にギルドメンバー同士はメッセージを送ることができる。これはフレンド登録している者に送るメッセージと同様でゲーム内メールのようなものだ。


 ドラゴンバスターオンラインでは、プレイヤー同士の戦闘行為を行うことが出来ない。プレイヤーの攻撃はプレイヤーに当たるし、体当たりすると吹き飛ばすことは出来るものの、ダメージを与えることは出来ないのだ。

 その為、ドラゴンバスターオンラインでは対人戦がない。そういうシステムのため、ギルド同士の戦争といったものも存在しない。

 ただの仲の良い者同士の寄り合いみたいなものがギルドではあるが、一つだけ他のゲームにはない大きな要素がある。

 それは、アジトの建設だ。ギルドは一つだけアジトを作ることができる。アジトのサイズは通常の家を建築すると際の土地より二倍以上広い土地まで敷地にすることができるので、それなりに広い砦のようなものが建築できてしまうのだ。

 もちろん、フリー建築にも対応しておりギルドメンバーは自由にアジトをカスタマイズできるのだ。


 アジトのシステムはプレイヤーに大変好評で、アジトを建てるためだけにギルドを結成するプレイヤーも後を絶たない。

 ジャッカルのギルド「ウォーリアーズ」ももちろんアジトがある。「ウォーリアーズ」のアジトは、古ぼけた少し廃墟のような砦だ。世紀末感を出す為に、ワザと壊れた壁にしたり、蜘蛛の巣をはってみたりと細かいところに拘りが光る自慢のアジトだった。


 ジャッカルは近く、ゴルキチ達をここへ招待したいと考えてはいるがまだ実現していない。ゴルキチとは趣味が合いそうなのでぜひ見て欲しいところだ。


 「雷神の王狼」の観戦と「王狼の渓谷」での花見に誘われていたジャッカルは、「ウォーリアーズ」のメンバーにそのことを伝え、「王狼の渓谷」に行く予定だった。

 「ウォーリアーズ」の多くのメンバーは「暴帝」に興味を持った様子で、多くは「暴帝」に向かっている。「ウォーリアーズ」では、プレイヤーの行動を強制することはない。メンバーはそれぞれ好きなように動いていて、同じ目的だった場合パーティを組むこともある。

 ジャッカルが「王狼の渓谷」に行こうと準備していたところ、「ウォーリアーズ」ギルドメンバーよりギルドチャットが入る。


<暴帝にチートしている奴らがいる。ギルド名はパンプキンブラザーズ>


 チートだと!チートはダメだ。チート行為は不正にアイテムを取得したり、無敵になったりとゲームのプログラムをいじくる行為で、ゲームバランスが崩壊するばかりか場合によってはゲームそのものが壊れてしまう。


<どんなチート行為なんだ?>


 ジャッカルはまずは状況を確認しようと、ギルドチャットで状況を聞いてみる。


<暴帝への不正なダメージだ。一回の戦闘で、たった一回斬りつけるだけで暴帝の体力が10パーセント減ってる。最もプレイヤースキルはかなり低いみたいだから、せいぜい一発が限界っぽいけどな>


 「暴帝」はレイドボスで、倒されるまで体力が回復することはない。どれくらい残り体力があるか、「暴帝」をクリックすることで見ることができるので「ウォーリアーズ」のメンバーは暴帝の体力をチェックしたのだろうとジャッカルは推測する。


 ジャッカルの知り合いでおそらく最も腕が立つグルードが10分間フルに戦ったとしても20パーセントも「暴帝」の体力は削れない。上手くいって17-18パーセントというところか。

 グルードは盾使いのため、攻撃力特化タイプには火力で劣る。それでも10分間暴帝と戦いきれるだけの安定したプレイヤースキルを持ち、暴帝にダメージを的確に与え続けることができる。

 そのため、攻撃特化の「ウォーリアーズ」のメンバーとはいえ、グルードほど「暴帝」の体力を削れるものはいないだろう。これに迫れるとすれば自分くらいか。グルードは「王狼の渓谷」に行くと言っていたので、すでにそちらへ行っているのだろう。

 「暴帝」でのチート行為のことは、俺が状況確認した後、グルードにも伝えよう。ジャッカルは今後の動きを決め、ログアウトする。



 ジャッカルはログアウトすると、別のキャラクターを起動する、キャラクター名はチーズポテト。

 運送業の傍らドラゴンバスターオンラインに興じるこの男にとって、昨今のモバイル端末の発展は喜ばしいものだった。いつどこにいてもノートパソコンを準備すればドラゴンバスターオンラインを楽しむことができる。


 この男はチーズポテトとジャッカルという二つのキャラクターを持っていて、チーズポテトがメインで動かすキャラクターだったものの、最近ジャッカルで遊ぶことも増えてきた。

 チーズポテトでボス討伐やら自ら率いる「ウォーリアーズ」というチームの仲間達と遊ぶのも確かに楽しい。

 しかしながら、ジャッカルでゆっくり遊ぶのも楽しいものだった。ジャッカルのフレンド達が楽しいのも多いに遊ぶ時間が増えたことと関係している。

 本日は出先のため、ノートパソコンでドラゴンバスターを遊んでいる。


 チーズポテトは「ウォーリアーズ」のアジトにログインすると、さっそく「暴帝」が棲息する「龍の大地」へ移動する。

 ギルドメンバーと連絡を取り合い、パンプキンブラザーズのメンバーが「暴帝」に挑戦できないよう、彼らの動きを妨害しながら「暴帝」の誘導を試みる。

 ドラゴンバスターオンラインでは、キャラクター同士にダメージが与えれないものの、実際に斬りかかって吹き飛ばしたりをすることが可能だ。キャラクター同士すり抜けることもできない。


 「暴帝」はレイドボスという特殊なボスで、フィールドを動き回る。目を付けた目標を追いかけ、目標に攻撃を仕掛ける。攻撃を仕掛けられたプレイヤーはボスエリアに移動することになり、その間は他のプレイヤーは「暴帝」に挑むことが出来ない。

 よって、パンプキンブラザーズが「暴帝」に挑戦できないよう、「暴帝」がパンプキンブラザーズに目標を定め彼らに近づかないよう動く必要があった。

 「ウォーリアーズ」のメンバーで道を塞ぎつつ、「暴帝」を袋小路にまで誘導しようと試みるが、誘導がなかなか難しい。


 袋小路に入ってしまえば、入口を塞ぐだけでパンプキンブラザーズの侵入は防げる。ただ、「暴帝」が討伐されるとまた初期位置に戻ってしまう。

 他のゲームでありがちな、ボスを誘引しやすくなるアイテムやスキルがドラゴンバスターオンラインにはない。

 誘導がやりやすくなればもっと楽になるのだが......チーズポテトはないものをねだっても仕方ないと、他のギルドにも声を掛けることをはじめたのだった。


 チーズポテトは状況確認が済んだので、グルードにテルを入れる。


<グルード、暴帝にチート行為が出たんだ。よければ時間があるときに龍の大地に来てくれるか?>


<チート行為ですか!それはなんとしても止めないといけませんね。どんなチート行為だったんです?>


 チーズポテトがグルードにパンプキンブラザーズのチート行為を説明すると、グルードはぜひ協力させてくれと言ってくれた。

 グルードは「王狼の渓谷」に集まっているプレイヤー達にもチート行為のことを話してみると言ってテルを切った。

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