第22話ランバージャック編 アレとは

「リベールたん、服とアイテムをどぞぞ」


 竜二は結局髪染めを出すことができず、リベールで「馬王の森」へと足を運んでいた。しゅてるんは嬉々として、それはそれは嬉々として、服と集めているアレを渡して来る。

 しゅてるんと会話するだけでも、精神力がガリガリ削れるのに、リベールで!しかもゴシック衣装に......


ニーハイソックスなんて!


 しゅてるんの集めているアイテムとは、ニーハイソックスだった。

 「堕落した馬王」からドロップする、「馬王の尻尾」を材料にニーハイソックスを作成することで、見た目が服にも関わらず、レア8相当の防御力を持つ足装備になるのだ。

 「馬王の尻尾」は色の種類があり、しゅてるんは全色集めきるまで「馬王の森」に篭っているというわけだ。

 しゅてるんが渡してきたものは、彼女が普段着ているものと同じ、黒っぽいゴシック衣装と白のニーハイソックスだった。ニーハイソックスの色だけは違う。


 仕方なく、本当に仕方なくリベールは黒っぽいゴシック衣装に白のニーハイソックスを装備するのだった。

 これはネタを提供してるってもんじゃないぞ!リベールは心の中でしか叫ぶことがかなわない。


「んじゃ、馬王よろしくく」


「了解した」



 難易度9「堕落した馬王」は、その名の通り馬をベースにしたボスだか、サイズがもはや馬と呼べないほど巨大になっている。横幅は10メートル。体高は4メートルと破格の大きさだ。

 毒々しい濁った緑のタテガミに、同色の尻尾。尻尾からは、毒液が滴り地面を焦がす。顔は気性の激しい競走馬が着けるようなブリンガーと呼ばれる目隠しのような、甲羅が付いており鈍い銀色に錆びが浮いている。

 目は淀み、口から出るヨダレもまた猛毒であった。


 リベールは馬王の住む毒々しい湿地帯に移動していた。

 ここは馬王の住処にふさわしく、稀に浮き上がる大きな気泡、バロニアを巨大化したような植物、枯れた大木、多数の大型のキノコなど全てが毒々しい。


 嘶きが響き渡る。

 馬王は静かに悠々とリベールへ接近してくる。

 リベールも馬王に向き合い、常闇の斧を下段に構える。


 馬王が突如疾駆する!

 静から動、初速が尋常ではない。

 馬王に轢かれたかに見えたリベールではあったが、そうではない。

 リベールは、頭を突き出す馬王の更に下へしゃがみこみ、足の間を抜けたのだ。

 もちろん、そのままやり過ごすリベールではない。下段に構えた斧を突き上げ、馬王の加速力をも攻撃力に変えたカウンターを、的確に当てていたのだ。


 これに馬王は怒り狂う。馬王の激怒の叫びに呼応し、全身から毒の汗が吹き上がる。触れただけでもタダではすまない。

 通常こうなると、退避するしかないのだがリベールは違う。

 どのボスでもそうだ。

 全方位攻撃など存在しないのだ。


 馬王も同様だ。抜けるポイントはある。

 馬王が再度突進を開始する。目にも止まらぬ速さだが、次は突進するだけではない。

 股の間は抜かせない!そう馬王は言っているようだ。

 馬王の纏った毒の霧と突進がリベールに迫る。


 リベールは動かない。ただ静かに斧を上段に構える。


 目前に迫る馬王は不意に跳躍する!

 前足を持ってリベールを踏み潰すべく跳ぶ!

 リベールは斧を振りかぶったまま跳躍し、馬王の下降に合わせ、鼻面に一発見舞った!ヨレる馬王にさらに追撃。

 毒霧はリベールをすり抜けていく。


 毒霧も突進も飛び掛りも踏み潰しもリベールは全てさばき切るのだった。



 ボスエリアから出てきたリベールにしゅてるんは憧憬の眼差しで彼女を見つめる。


「さっすが、リベールたん。馬王なんてイチコロねね」


 しかし、いちいち来るセリフだな......リベールの中の人竜二は独白する。


「リベールたんがいないときは、グルードちゃんが来てくれるし、はやいはやい」


 しゅてるんは満足そうだ。彼女は続けて口を開く。


「しかも、リベールたんのゴシック衣装に絶対領域!そしてニーハイ!たまらないわわ」


「は、恥ずかしい......」


 つい本音が出てしまう竜二であった。


「かわいいー。素に戻ってるよよ」


 さらに突っ込まれてしまったリベールは、もうどうにでもしてくれと膝を付いた。

 こうして、竜二の罰ゲームが始まったのである。

 竜二はリベールに削られ、しゅてるんに削られ、もう竜二の精神力はゼロよーと自分で自分に突っ込みながらヤケクソになって二週間を過ごすことになるのだった。


 これが終われば、ゴルキチとリベールのアリバイが出来る、そのためなんだ。そのためなんだ。と心に何度も繰り替えずが、すぐに竜二のもう一人の心が告げてくる。

 アリバイとこの二週間、得るものと失ったものどっちが大きいんだ?と。

 答えなんて決まってるだろおおおおお、もう一人の心に突っ込む竜二なのであった。


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[久々に王命]少女騎士リベール その209ぺったん


<スペック>

名前:リベール

性別:女

職業:ベルセルク

特徴:身長低め、茶髪アップに黒目の怜悧な顔、ぺったん

装備:武器 レア度9常闇の斧 レア度10 ニーハイソックス(白)、レア度2 ゴシック衣装 

出没場所:「堕落した馬王」


203.名無しのドラゴン

リベールたんが、しゅてるんの森に出てきてるぞー。


204.ぺったんマスター

リベールたんのニーハイ!ハアハア。


206.名無しのジャッカル

しゅてるんさんに協力してるのかな?あそこしゅてるんさんが独占してるしなあ。


208.名無しの魔法少女

ニーハイ可愛いwww


206.ぺったんマスター

絶対領域が素敵。リベールたん。ハアハア


216.名無しのバスター

>>206

ちょっと落ち着けwww


218.名無しのテイラー

ゴシック衣装のリベールたんもなかなかよいね!


220.名無しのドラゴン

>>206

しゅてるんさんと同じ衣装着てるし、協力してると思われ。


224.名無しのバスター

リベールたん、意外にこういう衣装好きなのかwww


226.名無しの魔法少女

ああいう凛とした人ほど、可愛いの好きなのよ。きっと。


241.名無しのテイラー

セーラー服着てたこともあったわね。確か。

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――魔女帽子こと木下茜

 受験勉強をやりつつ、スマートフォンをいじる茜は、響也とメッセージのやり取りをしていた。


<結局、ゴルキチさん出なかったんだ>


<うん、だからしゅてるんさんところに、俺とリベールさんが交互に行ってるよ>


<リベールさん、しゅてるんさんがいつも着てるゴシック衣装にニーハイなのよね?>


<ああ、そうみたいだ。直接会ってないから見てはないけどね>


 うああ。それは生で見たい。こっそり見に行こう。茜はリベールがゴシック衣装を着ている姿を妄想し悦に浸る。

 結果的にゴルキチさん、よい仕事したわよ!グッと拳を握り締める茜だった。

 茜はもちろん翌日リベールを見に行き、悶えていたらしい。少しだけその様子を、ドア越しに見てしまった姉は顔が引きつったという。


※しゅてるんの集めているニーハイは、かなりのレア品です。服型の防御力ある装備はほとんどありませんので、普通の女キャラクター、特に見た目に拘るプレイヤーには人気のアイテムです。 BY作者

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