伝説の秘宝


騒輻輳都市☆チキチキ☆スプロールレース~強奪せよ伝説の秘宝~


カランカラン


お、よぉチューマ。ずいぶんと久しぶりじゃねぇか。


お前も、あの噂を聞き付けて来たってわけか?


ずいぶんな騒ぎになったからなぁアレは。とりあえず、何か飲むか?あいにく安酒しかうちにはないが……。


そうだなぁ、まず何から話すか………。事の始まりは、ある宝がアリエスに運ばれてくるって情報が流れてだな………


~~~~~~~~


「さぁ~~!!!皆様聞き付けましたね!?」

「スプロール・ヴァルゴから運ばれてくる伝っ説のお宝ァ。」

「その名もぉぉお~~!!!」


「「アテナの涙」」


二人組の男が、店内に吊るされているゴンドラから、まるでパフォーマンスをするかのようにマイクを握り、階下の群衆を煽る。


ここはテルミドール。ドラゴンストリート随一の酒場。と言っても酒やつまみが特別旨いわけではない。デイブレイカーが集まる随一の酒場ってわけだ。


「売れば一躍巨万の富だ。大企業一つを買い取ったってお釣りがくらぁ。」

「しかし俺ら二人は諦めました!!」

「俺達はデイブレイカーじゃねぇからな。」

「そのとーりだぜチューマ!俺らは人外相手の商売人!」

「このヤマは金になる。俺達はそう踏んだ。」

「今やスプロールの未登録共はお祭り騒ぎ、誰もが宝を狙ってる!!!」

「だが、詳しい情報はまだお前達には流れていないはずだ。」

「そうさ!一体【いつ】【どこに】【どうやって】【誰が】【なんのために】運んでくるのか!」

「その情報を俺達は持っている。」

「さぁ、いくらで買う!?」


~~~~~~


ってなわけで、俺の店は大盛り上がりよ。普段出入りしないデイブレイカー達もここに集まって満員ってな?


我も我もとあのバカ二人に群がって、最終的には全員で同じ情報持って飛び出していきやがった。


が、金で買える情報なんてタカが知れている。

その事に気付いてる奴等は、また別口で情報を得ていたんだろうなぁ。


~~~~~~

テルミドールでの情報競りから3日前

グッドマンビル127F.ブリーフィングルーム


「と、言うわけでお前達にはこの宝、『アテナの涙』を狙ってもらう。」


暗い室内で、円卓の中央に現れた、ラグビーボールのような球体のホログラフを囲む4人組。


4人組を見下ろすように、サイバーアイを装着したスーツの男が壇上で話す。


が、円卓に両足を乗せながら、頭の後ろで手を組み面倒くさげな態度を取る金髪サングラスの男が口を挟む。


「なんだそりゃあ。聞いたことねぇぞそんなもん。」


「知る人ぞ知る。というヤツだ。価値にしてメガ・コーポ一つを楽に買い取れるだけの金

に変えられる。」


「マジでぇ!?」


鼻息荒く立ち上がるのは赤髪の女。それを横にいた侍が嗜める。


「はしたないでゴザるよガーネット。とりあえず落ち着いて金を、違った。まず何を買うか。違う、働かなくて済むでゴザろう?」


「まずアンタが落ち着けよ椿屋ァ!」


「まぁまぁ、話が逸れてるよ皆。で?グッドマン。続けてよ。」


落ち着いた物腰で促すのは、この中では一番若々しい顔をした、というかまだ少年だ。目の前には小型の電子端末が置いてあり、話口とは裏腹に手は忙しなく動いている。


「ありがとう、レイン。みな価値については理解してもらえたと思う。そして、この宝は今現在、西方の輻輳都市ヴァルゴから運ばれている。」


「ヴァルゴぉ?海の向こうからなんでまたこっちに運ばれてんだ?」


「話は最後まで聞くことだソマリア。」


「あいあい悪かったなぁ。続けろよ。」


「運ばれている理由だが、これは不明だ。だがしかし、輸送元と輸送先はわかるぞ。<世界政府>だ。」


「ブフゥゥウウウ!!!」


「うわぁぁぁぁあ!!!!ちょっ!きったないなぁもう!!!ビショビショじゃないか!」


「わ、わりぃわりい………世界政府だ。なんて言うから……つい。」


「あーあー、ちょっとガントレット殿。拭くもの拭くもの。」


「ファミリーネームで呼ぶんじゃねぇよ。ホラ。」


「全く……手がかかる子でゴザる相棒の顔が見てみたいでゴザるよ……。」フキフキ


「お前だぁ!ちょっ!どこ触っ!ぁ……!~~ッ!貸せっ!!自分で拭くから!!」


「…………お前達いい加減に話を進めさせてくれないか?」


「………輸送してくるのは世界政府、こちらに運ぶのにも何らかの理由があるのは確かだが、お前達が宝を狙う事に変わりはないからな。気にすることはない。」


「なるほどね、運ばれるってことは解ってるけど、詳細は伏せる、と。」


「そういうことだ。今回の報酬は『アテナの涙』を売却した金額を振り分ける。どちらにせよ、今までとは文字通り桁が違う報酬と思っていいが、手元に来なければ売却はできないな。」


「理解したでゴザる。この情報が他に流れる可能性は?」


「ゼロではない、が、流れたとしてもその時にはもう遅いだろう。」


「俺等が奪っちまった後なら、情報が漏れたところで後の祭り。ってなァ!了解したぜグッドマン。」


「ちょっと待て!世界政府を相手取るんだろ!?盗んだところで、アタシらの身元がバレちまったら終わりじゃないか!」


「そこは心配ないよガーネット。僕が偽造電脳を用意しておく。椿谷はウェットだから、最初から必要ないよね。顔に関しては心配なら、各々仮面でも着ければ?最も、電脳で判断する以上、必要ないと思うけどさ。17時間もくれればダミーは作れるから、それまで準備に励んでよ。」


「あ、あんた実は凄いんだな。ちょっと見直したわ。」


「実はってなんだよ!失礼なヤツだなぁもう!!」


「そうそう、意外、にやるときはやるんだ。コイツ。」


「ソマリア?またハッキングするよ君のそのスッカスカの頭を。」


「おいおい何度言わせるんだ俺はソレが嫌いだ。覗いたら最後一杯奢るからなレイン。」


「仲良くするでゴザるよ皆。拙者らはチームでゴザる。」


「おぉ?いいこと言うじゃねーのサムライ。まぁ、まだ動き出すまで17時間あんだろ?俺はちーっと街歩いてくらぁ。」


「ふむ、それでは拙者らも一度ここを離れるでゴザる。張り付いていても、しかたないでゴザるからな。」


「んん?なあんだ。アタシはてっきり、これから作戦会議でもするのかと思ってたぞ?」


「………」


「………」


「………」カタカタッターンッ!


「………」


「では拙者らはこれで、あとで会おうでゴザる。ソマリア、レイン。」


「お、おいちょっと椿屋ァ!」


「ハハハ!あばよレイン、また17時間後だ!」


「うん、行ってらっしゃい。作戦は僕とグッドマンで少し練っておくよ。」


エレベーターに乗り込んだ椿屋とガーネット、そしてソマリア。お互いに一切口は開かない。


「おいぃ!なんだよ二人とも!なんで黙ったまんまなんだよぉ!」


「(アホのガーネットにはとりあえず後で話すとして……)」


「(こいつらはバカだからなんも考えてないだろうし無視してもいいか。)」


「(だが、手段をどうするかでゴザる。)」


「(どうやって一杯食わせるかだよな。)」


「(ガーネットと拙者でお宝はいただき、そのまま御免。)」


「(こいつら全員騙して俺の一人勝ち。残り17時間で考えなくちゃあな。)」


「………」


「………」


「………」オドオド


チーンッ 1F、エントランス、グッドマン像前でございます。


「先に出て良いでゴザるよソマリア殿。(こんなヤツに後ろをとられたら何されるかわかったもんじゃないでゴザる。)」


「いやいやいや、先に出ろよ椿屋。(こいつ、まさか俺の動きに感付いたか…!?後ろから斬る気か!?)」


「いやいやいやいや、入り口にはソマリア殿の方が近いでゴザるからほら遠慮せずに。(!?この慌てよう、やはり拙者を……!?)」


「なぁにやってんだよアンタら。ほら、椿屋行くぞ~。」ドンッ


「あっ。」


「………」


「で、ではまた後で会うでゴザる。ソマリア殿。」アクシュー

「ソマリア、でいいぜ椿屋。『チーム』として、頑張ろうな。」アクシュー


「良いことを言うでゴザるなぁ~。ソマリア。拙者も『チーム』のために、尽力するでゴザるよ。(くぅ~~それは拙者がさっき言った台詞でゴザるこの語彙力のないチンピラめ!!)」ギチギチギチギチ


「せいぜい俺も足を引っ張らないようにさせてもらうぜぇ~~。(この野郎テメーの台詞をわざわざ言ってやったんだよ。なんだ良いこと言うって、自画自賛かこのゴザル猿!!)」ギチギチギチギチ


「「ハハハハハ!!」」ギチギチギチギチ


「なにやってんだよアンタら………。」ゲンナリ


そしてエントランスから出ると、ソマリアは愛車である自動二輪装甲車、『マスタング』に飛び乗り街へと消え


椿屋とガーネットは、並び歩いてダウンタウンの方向へと、向かうのであった。

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