女子高生サヲリの災難

所変わってここはサイバー高天原、下校途中のジョシコセイ達は、ワイワイと家路を急ぐのだが、その中に、木刀を担ぎスキップで道を進むご機嫌なオナゴが一人。


彼女こそサムライスレイヤー。高天原女子高等学校3-Zに所属。好きなものは豆。


「今日こそは警察の厄介にはならないわよ。ドジはもうおしまい。はい。御仕舞い。私は今日はなにもしない。ただお家に帰って映画を見るだけ。」

「そう、そうよ!私は今日!ついに入手したのだから!この伝説の名盤!!」


ドジャーン!!


【ランボー怒りの縦一閃】


「もうホロデータにも、ましてやARにもなってないこの不朽の名作!!」

「ブルーレイなんて旧時代的なものだから出力デバイス?を探すのにも丸々一年かけたもの!」

「やっと、やっと私にその姿を見せてくれるのねあはぁランボー!」


満面の笑みで、その円盤上のディスクと呼ばれるものが入ったケースにキスをする。


「///ランボー!いよっしゃぁぁぁあああ!!」


高らかにそのディスクを天に突き上げるが、一陣の風が吹き抜ける。


「えっ?」


手元から滑り落ち、転がり始めるディスク。


「ちょっ!ちょっとダメよ!その、先はダメぇ!」


ディスクが向かう先は、高天原高等学校名物、死の坂『デス・ウォーカー』


登り終えた者は、まるでゾンビのように校門を跨ぐことから名付けられた、全長500m、斜角27度オーバーの激坂である。


無情にも転がるディスク、泣き叫び追う女子高生。

あぁそういえばまだ名前も出ていない。

彼女はサヲリという。


あまりの速度に唇はめくり上がり目は釣り上がる。


だが追い付けないサヲリ。


サヲリ「こ、こうなったら!!オーヴァードライブを..!」


が、坂の麓、一台のバイクがはこちらに走ってきているではないか。


サヲリ「はぁぁあ!天の助け!止まって!そのディスクを止めてぇぇええ!!!」


その刹那の一瞬は、この世の絶望を全て集めても足りない。


パリンッ


「あぁ?なんか踏んだか?………まぁいいや。」


走り去るバイク。サイドミラーには呆然と立ち尽くす女子高生の姿。

足元の夢のカケラを見下ろすサヲリ。

不思議と涙は出ない。

ゆっくりと鞄に手を伸ばし、中から赤い鬼の面を取り出す。

サヲリ「鬼は~外…。」


面を顔に取り付ける


鬼「いざ成敗。」


その姿、まさしく鬼神!!


鬼「悪い子はいねぇがぁぁぁあ!!!」


木刀を振り上げ、バイク男を追う赤鬼。


「うおぉ!?なんっだってんだよ!!またか!次から次へと!!」


バイク男は悪態をつくと鬼に話しかける。


「おい、嬢ちゃん!誰に雇われたか知らねぇがもう着いてくんな!怪我したくねぇだろうが!」

鬼「ランボーの恨みぃい!!!今ここで張らすぅぅぅうイェッっ!」


ビルの壁を蹴り、加速をつけてバイクに斬りかかるサオリ。


「聞く耳持たねぇか!しかもその動き、さっき見たんだよ!!」


片手で銃を抜き、全弾発射する。


が、サオリは木刀で銃弾を弾く。


「余裕だなおい。サムライなんてこんなもんだ。さっきと一緒だぜ!!」


が、その予測は大きく外れる。


鬼「セイヤァ!!」


サオリの木刀から、豆のようなものが周りに散布され、宙を跳ねる球はその豆に阻まれてしまう。


「ハァ!?」

鬼「覚悟ォォォオ!!」


木刀を男の頭に振り下ろすサヲリ。

しかし間一髪、片方の銃で斬撃を受け止める。


「おいおい!そりゃ豆か!?んな硬ぇ豆あってたまるか!」

鬼「あるんです!!」

「ふざけんなクソ!付き合ってられるか!!」


サヲリを振り払い逃げるバイク。


サヲリ「待ちなさい!弁償!弁償!!」


再度追おうとするサヲリの足元に、突如銃弾が撃ち込まれる。


サヲリ「新手!?」


ガーネット「あんたねぇ!止めてくれたのはありがたいけどアレはアタシ達の獲物!横取りは許さないよ!」


頭上のアパートからマシンガンを構えるガーネット。


椿屋「ガーネットお主はいつも高いところから登場するでゴザルな。」


ガーネット「うるっさいなぁ!仕方ないだろ!道を走ってたら追い付けないんだから。とにかく!アレに手を出すことは許さないよ!」


サヲリ「そんな!ダメです!私だって私の大事な物をあの男に奪われたんですよ!?初めて(見るランボー作品のひとつ)だったのに...!グス...!」


ガーネット「なんだって!?」


アパートから飛び降りるガーネット。


ガーネット「あんた、そんなことされたのかい?」

サヲリ「はい...グスッ...。」

ガーネット「許せねぇ...!よし!あんたも一緒に来な!そんな最低な男だったとは...威嚇射撃で終わらせるんじゃなかった...!」

ガーネット「椿屋!あんたもそれでいいだろ!?」


後ろを振り向き相棒に同意を求める。


椿屋「へぇ~そうでゴザルか、ならばドラゴンストリート随一の洋食屋を拙者が教えるでござる。あの角を右に曲がって」


が、サムライは道往く女子高生と楽しげに話している。


ガーネット「あんたなにしてんだよ!」

椿屋「ちょっとうるさいでゴザルよ。で、そこからまっすぐ進むと」

ガーネット「うるさいじゃねーよ!任務中に何やってんだテメーは!」

椿屋「何って、ガーネット、お主道案内も知らないのでゴザルか?こう、地図を書いたりしてわかりやす」

ガーネット「道案内は知ってんだよ!なんで、そんなことしてんのか聞いてんだよ!」

椿屋「ところでお主、名前はなんと言うのでゴザルか?拙者は椿屋 小十老汰でゴザル。」

サヲリ「私はサヲリって言います。よろしくおねがいします!」

ガーネット「無視してんj」

椿屋「そうと決まれば話は早い、行くでゴザルよ。サヲリ殿。」

ガーネット「無視すんなよ!アタシもいく!」

椿屋「勿論でゴザル。二人とも、相手は強敵。気を引き締めていくでゴザル。」

ガーネット「おー!」

サヲリ「あの、でもお二人さん。」

ガーネット「あん?」

サヲリ「もう、随分離されちゃいましたけど...」

ガーネット「………」

椿屋「………」


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