甲州ビジホ戦線
ポージィ
ᕙ('ω')ᕗきもち、ええんじゃ ᕙ('ω')ᕗ
一体いくつあるのか、武田信玄の隠し湯―――。
大河ドラマの放映以降、山梨には「信玄の隠し湯」を標榜する温泉が異様に増えた。いや、増えたというよりも名乗り始めたってところですかね。
強力な湯の国―――草津温泉を抱えるGUNMA、箱根を有する神奈川に囲まれているお陰で、あまり温泉県として目立つことが無い山梨であるが・・・実は富士山を抱える山梨県の温泉にはこの両県にはないある特徴がある。
富士山の美しい湧水が多数湧く山梨の温泉はアルカリ性の単純泉が多く、塩類泉にはない柔らかでツルツルとした肌触りは美人の湯としての評価が高い。
東京から目と鼻の先―――峠越えのオアシス・大菩薩温泉。
山梨ぶどう郷―――古き良き湯治場・塩山温泉。
昭和の香り漂う歓楽街であり、名作ゲーム「ペルソナ4」の聖地・石和温泉。
SUZUKIが誇る世界最高峰のバイク・隼のオーナー達が集う隼温泉。
甲府盆地が一望でき、日の出1時間前から営業を開始するほったらかし温泉など―――いずれもその泉質はアルカリの強い美人の湯である。
温泉マニアは単純泉に回帰すると言われる。
単純泉はミネラル類が混じらない分、液中における水酸化物イオンの割合が増え、pHがアルカリに寄りやすいのがその特徴であるが、真湯(まゆ)に近いからこそ、メンテナンスのしやすさに定評があるのだ。
バイクでいえば教習車・・・素直で扱いやすいCB400スーパーフォア、今だとNC700?みたいな温泉だ。
メンテナンスコストが比較的安く済む事も理由なのだろうか、単純泉が多数湧く山梨では温泉付きのビジネスホテルが活況である。
甲州街道沿いには無数のビジホが経っており、私自身も10年ほど前からよくツーリングなどで利用しているが、山梨のビジホは快適この上ない。
首都圏から近い事もあり、安い・快適を売りに進化を続けるこの山梨のビジネスホテルは温泉のほか、ワイン風呂などの地域の特色を活かした変わり湯、サウナに露天風呂まで付くところも多く、宿泊客には併設した居酒屋の割引が効くなど、競争も激しい。全国的に見ても充実したサービスが受けられるビジホバトルフィールドなのである。
特筆すべきはスーパー銭湯と一体化した複合型のビジホだ。一度チェックインしてしまえば煩わしいスーツなど部屋に脱ぎ散らかし、財布もスマホも持たずにバーコード付きのルームキーを腕に巻き、楽な館内着に着替えてバラエティ豊富な大浴場へGO!
サウナや内湯、露天、壺湯、変わり湯と梯子湯したら、最後に水風呂で皮膚表面を締めて気分は爽快!浴後は館内の居酒屋でエクストラコールドと刺身などをキメ、〆に野菜たっぷりのほうとうを食って部屋でダラダラとテレビを見て眠りに落ちるのである。
まさに現世(うつしよ)の極楽浄土がそこにはあって、山梨県民の温泉に対する認識が垣間見えるビジホ文化が、山梨にはある。
湯の華の結晶化や腐食で配管が直ぐにダメになってしまうような塩類泉や酸性泉では、このように盛んな競争はなかった筈だろうし、そう考えると山梨はやっぱり、富士山の溶岩質によって磨かれた美しい水の恩恵を受けて成り立っている街なのだなぁと思う。
話は戻るが、信玄の隠し湯―――山梨には信玄公がやたらと隠したがるのも頷けるような不思議な秘湯も多い。
身延の山中にある奈良田温泉は気温や気圧で湯の色が変化する非常に珍しいアルカリ性の硫黄泉で、七色の湯とも呼ばれる。その泉質は肌触りのヌルヌル感が特に強く、初めて入った時はローション風呂かと思った程である。
これは流石の信玄公も隠しておきたいはずだ。
一方で、西方に目を向けると長野県との県境に増冨ラジウム温泉がある。
非常に濃厚なミネラルを含んだ貴重な天然のラジウム温泉であり、塩山周辺の温泉とはまた違った温泉の形を見る事ができる。湯治場としての価値も高い。
* * *
遠く離れた九州で「温泉県」を名乗った大分に、真っ向から異を唱えたのが関東最大の温泉県・GUNMA。
しかし、忘れてはならない。
伏兵はGUNMA以外にもいる。
時代を越えて現代社会に適合した温泉文化―――連日の仕事に忙殺される首都圏の社畜の皆様に安価で質の高い癒しを提供し続ける温泉県―――そう、それが、温泉界の武田信玄・山梨県なのである。
ᕙ('ω')ᕗ
ᕙ('ω')ᕗᕙ('ω')ᕗ
ᕙ('ω')ᕗᕙ('ω')ᕗᕙ('ω')ᕗ
ᕙ('ω')ᕗきもち、ええんじゃᕙ('ω')ᕗ
甲州ビジホ戦線 ポージィ @sticknumber31
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ポジコロ入院記アフター/ポージィ
★18 エッセイ・ノンフィクション 完結済 5話
アル中について/ポージィ
★5 エッセイ・ノンフィクション 完結済 2話
ポジコロ入院記/ポージィ
★147 エッセイ・ノンフィクション 完結済 23話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます