紅葉狩りと夢

 京都府毘沙門堂びしゃもんどう

 私がここに来た理由は1つ。

 紅葉狩りだ。

 私はカメラを手に、ゆっくりと歩いていく。



 カシャッ

 背後から聞こえた音に、私はとっさに振り向いた。

 そこにいたのはデジタルカメラを手にしゃがんでいる人。

 カメラのレンズは地面に向けられている。

「……?」

 私は、そーっと近づき、上からカメラの液晶を覗いた。

「────っ!!」

 そして、愕然とした。

 ただ、落ちているモミジを撮っているだけのはずなのに、液晶越しのその姿はとても美しい。

「きれい……」

 気がついたら、小さな声が出ていた。

 その声に、その人───青年は驚いたようでバッとこちらに顔を向けた。

「あっ……えっと、あの……こんにちは?」


 その後、私はなんとか彼と仲良くなった。

 彼のカメラでは、たくさんの風景が美しく輝きを放っていた。

 何の変鉄もない何かをいかに美しくせるか。

 そして、彼のカメラにはたくさんの───笑顔があった。

 彼が言うには、その場に偶然居合わせた人らしいのだが、私には決して撮れないであろう写真が無数にあった。


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