おわり

第19話 そろそろ

「殊羽、今日家に来ない?」



 休み時間に飛鳥ちゃんが言いにやってきた。なんでもあの教育係さんがいたく俺を気に入ってくれてもう一度食事をしたいんだそうだ。



「いくいく!木下さんだっけ?」


「名前、」


「ああ、帰りに教えてもらったんだよ」


「そう、殊羽のことぼっちゃんって呼ぶのは別にいいの?」


「なんかそう呼びたいって言ってたし」


「そっか。会ってあげて」


「いいよー。あ、でも今日執行部の会議あるんだっけ?」


「ええ、会長から話があるって」



 会長といっても新会長である宗治先輩だ。宗治先輩の企画した合宿は、まあ遊びはみんなで海に行った。なんだか遠く昔に感じる。飛鳥ちゃんが浮き輪でぷかぷか浮いてて、と思ったら来羅ちゃんと遠くまで泳ぎに行っちゃうし、宗治先輩は短く切った髪型でモテまくるし、裕太先輩は日焼けで真っ赤になるし、真ちゃんも結局泳いでたし、薫も眼鏡外してモテてたし。なんて思い出していると飛鳥ちゃんに見抜かれる。



「ねえ殊羽、海楽しかったね」


「そうだね飛鳥ちゃん。また行こうね」



 飛鳥ちゃんは俺をのぞきこんで言う。



「なにか、あった?」


「お?わかる?」



 実は敵さんから味方になれーとか、実験施設で敵のボスさんと似てるように作られたーとかいろいろ聞かされて正直疲れてる。



「ふざけないで」


「心配してくれるの?」


「元気そうね、余計なお世話だったかしら」


「いや、ちょっとね敵さんからお話聞いて」


「会ったの?」


「家に直で、しかも窓から」


「怪我とかしてない?」


「ないない楽しくおしゃべりしただけだもん」


「ろいなさんが前に学校以外では襲ったりはしないって」



 ためらいながらその名を口にする。会長と一緒に消えた会長の姉。



「ほらあの生徒総会の時の、って」


「会ってない、なにか言われたの?」


「うん、でもそんな気にすることでもないよ」


「ウソばっかり。でも私に言えないことなら別にいい、深くは聞かない」



 と言うと自分の席に戻っていってしまった。拗ねてるのかな。席替えをしてずいぶん近い席になったから尋ねてみた。



「拗ねてる?」


「深入りしないって」


「飛鳥ちゃんに言ってもいいことと、うまく説明できないから言えないことがあるんだ」



 少し驚いたような表情の飛鳥ちゃん。微笑んだけれど一瞬だった。



「聞いてもいいのね」


「敵さんに味方にならないかって言われた」


「なるほど、」


「どうやら宗治先輩も誘ってるらしい」


「うん」


「裕太先輩が」


「うん?」



 俺は昨日空が来たことを話した。飛鳥ちゃんには言えないこと以外のことを全部。



「だから今日は」


「そうね、きっとその話をするつもりね」


「飛鳥ちゃんってさ、」


「何?」



 そこで俺はつい施設のことを聞こうとしてしまった。出身者ではない彼女に。ああでも闇月家ならその存在くらいは知ってるんじゃないか?



「飛鳥ちゃん、施設って言われて何か知ってる?」


「実験施設で今は破壊されてなくなったっていうことしか知らない」


「そっか」


「その施設の出身者もいるって、もしかして」


「俺、もそうだよ」


「そうだったのね」


「あ、すかちゃん。俺さあ、もしかして」



 闇月羽月、飛鳥ちゃんのお兄ちゃんに。もしかして、



「そうね、似てるわ」


「それって顔が?性格が?」



 そこで飛鳥ちゃんは少し悲しそうに自嘲する。



「どっちも。よくはぐらかすし、そのくせ考えこむ。それによく笑う」


「敵のボスさんがお兄ちゃんなのかもしれないよ」



 そう言った俺を飛鳥ちゃんは見つめながら、泣きそうになる。長いまつげが震える。



「ねえお兄ちゃんは生きてるのかな?」


「わからない。確かめなきゃ」


「そう、ね」



 どうしたもんか、悩みどころだ。もしそうなら俺はいったいどうして闇月羽月のそっくりさんに作られることになったんだ。影武者とか?



「殊羽、行こうか生徒会室」



 飛鳥ちゃんの凛とした声に、歩く姿に、長い髪に、俺もあいつを思い出す。



「うん、行こうか。走る?」


「え?なんで?」


「ねえ飛鳥ちゃん?走るの得意?」


「…ニガテ」



 って、何聞いてんだ俺は。






 ○○○○○○





「走るのは苦手。運動は好きなんだけど」



 そう殊羽に言った時にふとお兄ちゃんとの会話を思い出した。お兄ちゃんは私とかけっこをした後にこう聞いた。



「走るのは嫌いか?」


「キライじゃないけど、ニガテ」



 たしかお兄ちゃんは苦笑いをしてここは狭いから、と言って私の頭を撫でたんだ。屋敷の廊下はあんなに長いのに、どうしてだったんだろう?


 殊羽が言ったことが、敵の言ったことが本当じゃないということだって十分あり得るのに、



「飛鳥ちゃん、裕太先輩になんて切り出すつもり?」


「とりあえず今日の議題を聞いてから」


「そうだね、もしかしたら全部話があるかもしれない」



 となりを歩くこの人が、



「あ、それと俺さ、その敵の空くんに施設でドラゴンと会ったことがあるだろって聞かれたんだ」


「まだわからないけど、お兄ちゃんと殊羽が会ってるかもしれないのね?」


「そう。でね、俺はそいつのことは覚えてないんだ。だけど飛鳥ちゃん、」



 殊羽が歩みを止めて私を呼ぶ。



「俺は飛鳥ちゃんに似た女の子によく会ってた」


「私に?」


「その女の子はそのお兄ちゃんとよく一緒にいたらしいんだ」



 私の顔をどうしてだか見ない。



「殊羽はその子が私じゃないかって思ってるの?」


「・・・」



 無言になる殊羽に、どうしていいかわからない。



「そんなはずがないんだ、だって」


「殊羽?大丈夫?」



 まるでその言葉がきっかけのように。



「その呼び方とか、すごく似てるけど絶対フィフスは飛鳥ちゃんじゃない、だって」


「殊羽、私は」


「だって俺はあいつを殺したんだ」



 私は・・・の続き、なんて言おうとしたんだろう。だから私のことを見る殊羽の顔が時々、たまらなく苦しそうになるんだと、すんなりと納得がいってしまった。なんと声を掛けたらいいかわからないけれど、名前を呼ぼうと息を吸い込んだ。



「おい」



 そう声を掛けられた。振り返ると銀色の短髪、今日はタキシードではなくスーツ姿で、どこかけだるそうにしていた。



「先生」


「ああ、先生だ。分からないことがあったら何でも聞け」



 こんな時に違和感のある言葉だ。殊羽が先生を見て呟く。



「先生も」



 そこで私も何となくそう思う。私も含めた視線に気づいたようで、なぜか少し楽しそうに話す先生。



「そうだよ、施設出のもんだよ。どうだい?施設出身者の3人が集まったことだし少し話でもしないか?」



 私も数に含まれた。



「そうだよ飛鳥ちゃん。君は施設にいたんだ。きっと信じられないだろうけど」



 そして先生は話し始める。私と殊羽に平等に。生徒会の会議に遅れると話し始めに言ったら、そんなに手間は取らせないと言われた。そして廊下の真ん中で私と殊羽と先生とで話をした。でも先生は意地悪で、いちばんだいじなところは話してはくれなかった。



「ま、精々青春を楽しめよ」



 そう言い残して帰る先生の後ろ姿を見ていたら、殊羽がいつもの声で私を呼んだ。



「飛鳥ちゃん、」



 振り返るとあの笑顔で、



「じゃ、行こっか」


「うん」



 ついつられて笑った。



「飛鳥ちゃん笑顔可愛い、もっと笑ってよ」



 そういう言葉を平気で言う。



「茶化さないでよ、恥ずかしい」


「照れてるんだ」


「うるさい」



 私はこの人が、






 ○○○○○○




 先生は

 その男は生きていると言った

 お前はお兄ちゃんを覚えているか

 そう言った


 そして

 お兄ちゃんなんてそもそも存在しない

 そう言われた


 私は

 何かが引っかかっているような

 そんな気がした


 ふと思った

 もうお兄ちゃんの顔を思い出せない


 それから私は久しぶりに笑った

 可笑しくて仕方なかった


 でも先生?

 殊羽の顔が懐かしい

 なぜか知らない?


 そう言うとせんせーは笑顔になった

 何も言ってはくれなかった




 先生は

 その女は死んでいると言った

 お前はフィフスを覚えているか

 そう言った


 そして

 フィフスをそもそも殺していない

 そう言われた


 俺は

 何かがとれたような

 そんな気がした


 ふと思った

 もうフィフスの顔を思い出せない


 それから俺は久しぶりに泣いた

 悲しくて仕方なかった


 でもせんせー?

 飛鳥ちゃんの顔が懐かしい

 なんでか知らない?


 そう言うとせんせーは笑顔になった

 何も言ってはくれなかった

 



 〇〇〇〇〇〇





「そーせんぱいからお話があります」



 裕太が司会の役割をし、生徒会の会議が始まる。出席者は現会長の宗治、裕太、殊羽、飛鳥、薫、真だ。ホワイトボードいっぱいに裕太の字でこう書かれている。


 作戦会議



「みんなもう気づいてると思うが、来羅がいなくなった」


「いなくなったということは今日は欠席ではないんですね」


「ああ、昼休みからいない。先生方には体調を崩して帰ったということにした」


「敵さんの仕業だぜ。犯人は玲元会長様だとオレは考えてる」


「敵さん、玲様?何を言ってるんですの?」


「長い話になるがいいか?もう一つ。この話を信じられないなら生徒会を辞めてもらっても構わない。生徒会執行部としての仕事の域を超えるからな」


「わかりましたわ」


「他の皆は?」


「僕もわかりました」



 真に続いて薫が答える。無言で宗治もうなずき殊羽と飛鳥に視線を移す。



「俺はなんとなくわかってるんで」


「私も」



 長い宗治の説明が終わると真は無言で立ち去った。薫も立ち上がり言った。



「僕は信じますし戦いに参加したい気持ちはあります。でも戦力にならないと判断したので作戦会議には参加しません。だけど生徒会執行部を辞めるつもりもありません。救急道具を持って待機します。真さんが心配なので失礼します」


「ああわかった。ありがとう、薫」


「その、気をつけてくださいね。お守りのルビーみんなにあげます」



 小さな包みがいくつかテーブルに置かれる。



「みんなに渡そうと思ってたのにいなくなっちゃう人ばっかりで。僕が忘れてきたりしてタイミング逃しちゃったからなんですけど」



 苦笑いをした薫が宗治に声をかける。



「特に先輩は、来羅さんを大事にしてくださいね」


「ああ。言われなくてもそのつもりだ」


「来羅さん。敵にまわってるってことですよね」


「操り人形、だな」


「ええ、自由にしてあげたいです」


「かおるんおっとこまえー。別に戦力外じゃないのに、人手はいくらあっても足りないくらいなんだけど?」



 二人の会話に裕太が入る。裕太の方を見るが歩き出し扉の前でこちらを振り返る薫。何かを言おうとするがためらう。



「僕は救護に回ります。真さんにも声をかけてきますね」


「そうか、それがいいな。今日は会議だけだから帰ってくれて構わない。ありがとう」


「いえ。どういたしまして」



 裕太が薫が出て行った扉を見ながら呟く。



「オレも普通の人だよ」



 本題は玲との戦闘についての作戦会議。一緒に戦うことになるドラゴンのメンバーの紹介を聞いていた。



「メンバーはこのくらいだろう、ボスのドラゴンだが」


「飛鳥ちゃんはこの執行部に入った理由はお兄ちゃんのことが知りたかったからだよね、この情報屋さんにそれを聞きたかった」


「ええ」


「聞きたい?」


「ドラゴンがお兄ちゃんかもしれない」


「知ってるのか?」


「あーそれについては俺から、」



 殊羽が手を挙げ、自宅に空が来たことドラゴンについて自分の出生の秘密について話す。



「これは全部空くんから聞いた話だからと思ってたけど」


「どうやら本当みたいですね」



 飛鳥は裕太を見つめる。視線を受けながら目をつむって話す。



「飛鳥ちゃんと後でじっくり話したいことがある。飛鳥ちゃん施設出身だなんて知らないでしょ?」


「し、らない」



 先程先生から言われたがなぜか知らないと答える飛鳥に、殊羽が少し変な顔をする。



「でしょーいろいろ話してあげるよ。君の双子の姉妹の話も」


「「双子」」



 飛鳥と殊羽がほぼ同じタイミングで呟く。



「そう、双子。飛鳥ちゃんにそっくりなもう一人の女の子」


「フィフス」



 殊羽が呟いた言葉に裕太と宗治は驚く。



「憶えてるのか?」



 宗治の言葉に、



「俺が初めて殺した相手、です」



 いつもの満面の笑みで答える殊羽。苦い顔の宗治に反して裕太が笑顔で返した。



「どこまで覚えてるか聞きながら殊羽君にも話してあげるよ、作るもとになったドラゴンの話も」


「はい」



 裕太が少し大きめの声で言う。



「情報屋はまたただ働きをしようかな」


「お金ならあるけど」


「いいよ、お金をもらうのが嫌になるタイプの情報だからさ」



 飛鳥の呟きにそう返すと飛鳥が座るソファの背もたれに腰かけ足をぶらぶらとする。



「ちゃんと話せ」


「話すよ、そーちゃんは心配しすぎ」


「そーちゃんと呼ぶな」


「そーちゃん先輩はもう全部聞いたんですか?」


「ああ、一日かけて話してもらった」



 茶化す殊羽に一瞬無言になるが答える宗治。飛鳥が後ろにいる裕太を見ずに話す。



「何日かかってもいい。私が知らないことを知りたい。お兄ちゃんのことも、ドラゴンのことも、姉妹のことも、施設のことも、私がなぜそのことを覚えていないのかも」


「オレがどうしてそれを知ってるか、は?」


「話したいのなら」


「気にならないなら話さない」


「気にはなるけれど、あなたはいつも苦しそう」



 そう言った後ソファに立ち膝になり、後ろから裕太を抱きしめる飛鳥。



「なっ!?」


「え!?」


「飛鳥ちゃん?」



 三人とも驚くが手を離さずに話し続ける。



「前に私の教育係をしている者なんだけど、私のこと家族だって言ってくれたわ。メイドさんたちも、」


「闇月の」


「そう、でもみんな私に秘密がある。話してくれないことばかり。それを言えない理由も、分かってるつもりだった。その理由がまだまだいろいろあることを今知ったわ」


「そう、だね。きっと飛鳥ちゃんの秘密を知ってる人はいると思う」


「それはきっと苦しい」


「オレはそれを仕事にしてきたから」


「裕太先輩はきっとすごく優しい人ですね」


「んもう何さっきから飛鳥ちゃん!」


「そう、思っただけです」


「そうだな、悪ぶってばかりで」


「そーちゃんまでうるさいなー!」


「裕太先輩かわいい」


「しゅーしゅーは黙ってろ!」


「ふふっしゅーしゅーって、」



 飛鳥が思わず笑う。手を離された裕太はソファから降りるとしゃがんで殊羽の背もたれのあたりにひょこっと顔を出す。



「しゅーしゅー今飛鳥ちゃんの笑顔みてかわいいって思ったでしょ?」


「なっ、思いました」


「2人とも茶化さないで」


「オレを辱めた仕返しだ!飛鳥ちゃんも恥ずかしがれ!」


「恥ずかしかったんだな」


「恥ずかしかったんですね、」


「うるせぇ!」






 ○○○○○○






「らいらっち、髪切ったの?」



 ここは学校の屋上。今日は冷たくなってきた風が抜けていく。そこには来羅と白がいた。柵のギリギリのところで白が腰かけて、今来たばかりの来羅を見ている。



「誰?真っ白だね。しろろん!!」


「しろろん!!」



 しろろん、と呼ばれたことを痛く喜び目を輝かせる白。



「さすがらいらっち、いいね!」


「でしょ!!で?しろろんは来羅に何の用?なんかしろろんを見てるとね、」



 来羅が短くなった髪を人差し指で遊びながら言い放つ。



「戦わなくちゃって思う」


「ね、俺も思う」



 その声が二人とも、いつもよりも鋭く、お互いを強く睨み付ける。強く吹いた風が二人の短い髪を掻き見出し、雲がまた流れていく。



「らいらっちも思い出した?」


「また忘れちゃったけど、今また思い出したよ」


「もしかしてれーれーが」


「うん。玲が帰ってきてる。だから私また忘れると思う」


「そう、ドラゴンがね仲間にならないかって、でも」


「でも仲間にはなれない」


「うん、らいらっち?」


「うん、しろろん、」


「「死なないで」」



 そして二人は楽しそうに笑う。流れた涙は一筋だけで、お互いに拭った後ほっぺたをつねりあって遊んでいた。それに飽きると、どちらからともなく離れた。



「「またね」」




 ○○○○○○



 

 思い出した

 私達は同じ親から生まれて

 バラバラに実験された


 青い色が怖いのは

 私が別れたのがお昼前だから


 赤い色が怖いのは

 俺が別れたのが夕暮れだから

 あんなに晴れた空がひどく残酷で

 一度目は私を逃がしてくれて

 二度目は俺と一緒に逃げた

 両親は死んだ


 施設を出てからはじごくだった

 施設を出てからはてんごくだった


 青は私を殺した もうたくさん

 赤は俺を生かしたもうたくさん


 私は赤がうらやましい殺したい

 俺は青がうらめしい 殺したい


 なんでしろろんは

 なんでらいらっちは


 私はそれでも青を守らなきゃいけない

 俺はぜったい赤を守らなきゃいけない


 だから戦う

 戦わなくちゃいけないんだ






 〇〇〇〇〇〇



「そろそろ玲の家に乗り込もうと思う」


「じゃあやっぱり」


「ああ、白」


「あいよーボス」


「屋上でらいらっちと会ったよ、もう玲は帰ってきてるって、仲間にはなれないって言われたよ」


「そうか、白よく頑張ってきたな」


「へへ、葉ホント最近赤みたいだね!ありがと」


「いいや、みんながんばってるからな」



 ここはホテル。葉の声が響く。その声を受けすぐ隣の席に座る空が呟いた。いつもとは違い控えめな格好に髪をおろし、帽子もかぶっていない。



「がんばる…かあ」


「もうらいらっちは」


「敵だね」


「ドラゴン報告」


「空、どうした?元気ないぞー」


「殊羽と話してきたよ。普通に驚いてた。ああ俺の化け物姿には全く驚いてなかったけど。んで服借りたから、今日返そうと思ってたのに、」


「あー多分味方になるだろ?」


「んーわかんないじゃんか、それに今日のドンパチもあるし」


「空は強い、心配なら休んでればいい」


「ふっざけんな、暴れるに決まってんだろ?俺じゃなくて。殊羽が死んじまったらっておもっただけ」


「気に入ったんだな、よかった」


「別にそういうわけじゃねえ、」


「すなおじゃないなぁ」


「うるせえ!白!!この話は終わり!作戦会議しようぜ!!」


「そうそうその調子!じゃー作戦会議するとね、今生徒会でも宗治くんと裕太がみんなに話してる頃だと思うんだ」



 そういうとドラゴンは白の頭をポンポンと二回たたいた。



「なにー?」


「白。大仕事、頼めるか?」


「…もちろんだよ、ボス」



 白の笑顔を確認してから話し始める。



「宗治くんたちも今日乗り込む。だけど彼じゃ来羅ちゃんに敵わない可能性がかなり大きい」


「愛しちゃってるからね」


「うん。他の子も心根は普通の人だし君らより戦闘の場から離れて長い、そこで」


「俺だね」


「そ」



 無言で挙手したのは葉芽。どうぞとドラゴンが言うと即答した。



「却下だ」


「どうして?」


「この中で白を選ぶのは何故だ?」



 そう言って葉芽が白を睨み付ける。



「お、おい葉芽、やめろ」



 心配したのは空、それを止めたのは葉。葉芽に触れようとした空の手をつかむ。



「空、だいじょうぶ」


「でも、」


「ドラゴン、そいつを買いかぶりすぎだ」



 白も葉芽を見つめて言う。



「がっくん、別に強さとかじゃないよ」


「そうだな。今は葉芽がこの中で一番かな」


「ボスに言われるとイライラする」


「きゃー、ごめん」


「いいよ、ともかくらいらっちは俺担当だから」



 そうそうとドラゴンが言うと葉芽が今度はドラゴンを睨む。



「ドラゴン、わざわざ関係の深い者同士、組み合わせなくていいんじゃないか?そういうめぐりあわせは」


「葉芽。廻りあわせは大事だよ」



 笑顔のドラゴン。葉芽はしばらくしてドラゴンから顔をそむけてため息をつく。



「姉さん、僕この人嫌いだ」


「そうだな葉芽、ふふ、あははっ」


「笑わないでよ、姉さん」


「いや、ドラゴンも葉芽も変わらないなと思って」


「あーよかったー」


「はははっ空も変わらないな、そんなにほっとして」


「うるせえよ!」


「空は結構僕が怖いんだよな」


「俺のこともね!」


「うっせ!一番弱くて悪かったな!!」


「だから強いって」


「ううバカにすんな、葉」


「はいはい、空も落ち込みすぎないで」


「落ち込んでねえ!!!」


「じゃ白、後からみんなで行くから」



 ドラゴンの言葉に白が大きくうなずく。



「みんながいるなら大丈夫!」

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