貝塚交通公園飛ばない鳥

作久

もう飛べない青い鳥号

 貝塚交通公園。福岡市の東側というのは筥崎宮のあたりがおそらく観光客には人気だと思う。もしくはさらに東側の香椎廟。ああ、今はそれより東にある宮地嶽神社が光の道効果で人気なのだろうか。


 そんな福岡市東側、名前もそのまま東区を通る市営地下鉄箱崎線と西鉄の接続口である貝塚駅の正面にある公園、貝塚交通公園について書いていきたい。ここは公園としては珍しく営業時間が設定されていて夕方の5時で閉園である。閉園日もあり火曜日と年末年始だそうだ。中身も公園としては変わっていてそこここに実際に動作している信号機や交通標識が立っていて教習所の様になっている。そういう作りだからだろうかゴーカートがあり子供は乗って遊ぶこともできるようにしてあるようだ。もちろんブランコや滑り台などの遊具もあるが、公園というより簡易な、微妙に遊園地と言った方が皆に理解してもらいやすいのかもしれない。なんというかちょっと違う。


 こういう公園というのはわりに人がいなく寂しいことがあるのだが、ここら周辺は若い街ということもあり昼下がりには子供連れが自転車の練習をしたり散歩をしたり、憩いの場や息抜きの場として寂しくないほどにはにぎわっている。


 さてこの公園、交通公園ということだからだろうか、作られたのがそういう時代だったのだろうか、こういういわゆる公設公園の常だろうか、SLの静態保存もされている。昔夢ある数多の若者を東京へと導いたろう寝台特急ブルートレインかいもんを後ろに連結し在りし日の東京へのロマンを今に残している。


    そんなここにはとても珍しい鳥が一ついる。それも飛べない鳥が。


     しかも、日本に唯一ここにだけ、ここにだけ存在する鳥。


               それはヘロン。

            個体名はJA6159と言う。


         鳥といったが、ヘロンは正確には飛行機だ。


 丸っとした0系新幹線を思わせる鼻をした機首とそこから伸びた鼻の下にタイヤがポンとそのままついているなんというかそう、象のような愛嬌のある顔が特徴的な小型の飛行機である。翼には4発のレシプロエンジン。4発も積んでいるというと大型かと思われるかもしれないが機体はそんなに大きくない。機体の周りは1分もたたずに歩いて回れるし全長で言えばそこらを走る乗り合いバスよりは少し大きい程度の大きさだ。体型も今の空を飛んでるシュッとした飛行機に比べ幾分ぼてっとしたシルエットをしていて、なんというか顔と言い体型と言い全体に緩さを感じる飛行機だ。


 これを書こうと思いぐるり子細をじっくりと見て驚いたのはこの旅客飛行機、どうやらタイヤの格納ができないようなのだ。昔はそれが普通だったのだろうが今しか知らぬ者からするとなんとも不器用に見えてなおさら愛らしく感じてしまう。


 彼もかつては日本の空をいくつかの仲間と共に飛んでいた。仲間はもう静態保存ですら存在して居ない。エンジンを換装された従兄妹の様な機体であれば一人だけ現存するようだがそれはどこかの工場の上にいるらしく保存状態は芳しくないようだ。ここにいるヘロンは管理されている公園内に安置されているから、まだいましばらくは私たちの目の前にいることができるだろう。しかし、それでも塗装の捲れや錆、そこここに見える部品の傷みは見てて痛々しいほどになっている。いずれは、そう遠くない時にひっそりと彼らは絶滅することになるだろう。


            ふと足を止め眺め上げる彼の顔。


 板付にある福岡空港。彼もそこにおり、飛び立ちしたかもしれない空港。そこを飛び立った飛行機の腹とそれが落とす影が、彼か彼女かわからない飛べないヘロンを慰めるように頭を撫でていく。


              昔々は飛んでた空、

           今は見上げるしかできない空、

        それは秋に澄んで高いヘロンの上にしかない空。


 これを見て彼、彼女を一つ気になった方、折と気分が合えばでいいから会いに行ってあげてほしい。覚えてあげてほしい。子供の声があるから寂しくはないと思うが、それでも喜ぶと思うから。

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貝塚交通公園飛ばない鳥 作久 @sakuhisa

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