第三章 1 喜べ、オフだぞ
第三章 転
同時に出現した悪鬼二体を討伐した、その翌日。
ただ今の時刻は九時。定例ブリーフィングの時間。
僕たちは決まったように、ソファ姉に座って課長の話を待っていた。
「……すまない、待たせたな」
課長が用事を終え、僕たちの方に向き直る。ようやくブリーフィングが始まった。
「今日は、お前たちに重要な話がある」
そう言うと、課長はデスクに肘をついて両手を組み、神妙な面持ちになった。
重要な話……。一体何だろうか。
もしかして……、いや、考えるのはやめよう。
僕たち四人はごくりと唾を飲み、続く課長の言葉を待った。
そして、
「喜べお前たち、今日はオフだぞ!」
と、課長が大きな声でそう言った。
「オフ!?」
「オフデス!?」
「オ、オフ!?」
ギュルルルン、もしくはギュイイイン、と。
オフと聞いた瞬間、僕以外の三人のテンションが、うなぎ上りに上がった音がした。
「やったああああぁぁぁぁ――――っ! オフだああああぁぁぁぁ――――っ!」
「ふうううぅぅぅ―――っ! オフデース!!」
「うおおおおぉぉぉぉ――――っ! 久しぶりの休みだああああぁぁぁぁ――――っ!」
重要な話と言ったけど、あながち間違いじゃなかったらしい。
少なくとも、三人にとっては。
「お前ら喜びすぎだ! そんなに休みが欲しかったのか!」
「当たり前でしょ! もう一週間も休みなしなのよ! 当然じゃない!」
「いつもは三、四日に一回はオフだったのに、今回は一週間も休みなしデース!」
「おれも、少しは休ませてくれたらなー、なんて、ちょっと思ってたり」
話を聞く限り、普段はどうやら三、四日に一回はオフがあるらしい。けど、この一週間はその休みがなかったようだ。
三人のテンションが上がって、そして若干怒り気味なのは、そういう理由らしい。
「分かった分かった。最近休みがなかったのは、素直に謝ろう。悪かっ――」
「ねぇ、どこ行く!? どこ行きたい!?」
「久しぶりにゲームセンターで勝負したいデース!」
「お、いいわね! そうしましょう!」
「ついでにジゲンの歓迎会もするのはどうですか?」
「リュウ、それはナイスアイデアね!」
「なら、今日はジゲンの歓迎会も兼ねて、ゲームセンターに行ったあと、食事会でもするデース! 私、焼肉が食べたいデスよ!」
「よし、そうしましょうか! 今日はゲーセンに行って、それから焼肉!」
「了解です」
「オッケーデース!」
「じゃあ決まりね!」
「――お前らあああぁぁぁ―――っ!! 人の話を聞けえええぇぇぇ―――っ!!」
何だろう、この展開……。こんなハイテンションは初めてなんだけど……。
「え? 課長何か言った? 聞いてたわよ?」
「聞いてたら、何か言った? とは言わないんだよ! 人の話を聞けって言ってんの!」
「はい。聞きますから、どうぞ」
「どうぞデース」
「どうぞ」
三人は急に大人しくなって、課長の話を聞く体勢になった。――って、ええぇ!?
まさかのそれには、課長もストップが掛かる。凄すぎる変わり身の早さだった。
「……お、お前ら、急にいい子になるのやめなさいよ」
「え? あたしたちは最初から、すごくいい子でしたけど?」
「くっそ、ムカつく。……まあいい。とにかく、今日はオフだ。存分に漫喫しろ。ただし、明日に差しさわりのない範囲でな。それだけは仕事をする者として、悪鬼を倒す者として、よく肝に銘じておくように。……以上、解さ――」
「よっしゃ、みんな行くわよ!」
「レッツゴー、デース!」
「行きましょう!」
課長から解散の合図が出るや否や、先輩方三人は一斉に勢いよく立ち上がり、ドアに向かって歩き出した。もう、完全に待っていられない人みたいになっていた。
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