第二章 14 お咎め回避茶番
「……サディ、今までどこかで見てたでしょ?」
「…………う」
「サディ、見てたわよね?」
「……そ、その通りデース……」
「あたしは援護に来てって言ったわよね?」
「……た、確かに言ったデース」
ニメがどんどんサディににじり寄っていく。完全に問い詰めている形になっていた。
「理由は?」
「……リ、リュウに、戦闘経験を積ませようと思ったのデス……。もう少しで決着がつきそうだったので、そうしようと思ったのデスよ……」
サディがニメから目を逸らしながら、小さな声でそう答える。嘘はついていない。
「……はぁ。まあ、そうじゃないかとは思っていたわ」
「す、全ての責任は私にあるのデス! なのでジゲンは悪くないデース! だから、罰なら私だけにお願いするのデスよー!」
「サディ! そんな! 自分だけ罰を受けようとするなんて!」
僕はそう言いながら、素早くサディの隣に歩み寄る。これぞ秘儀、茶番でうやむやの術だ。
あとはサディが、この茶番に乗ってくれるかに掛かっている!
「いいのデスよジゲン。これは先輩である私の責任なのデース」
そう言って、サディが僕をそっと優しく抱きしめてくる。――きた! 乗ってきた!
さすがはサディ。よく分かっていらっしゃる。
「ああ、サディ! サディ! そんな、そんなことって!」
「いいのデス、いいのデスよジゲン。私はあなたに無事でいてほしいのデス」
「うわあぁぁ! サディイイィィ! ダメだよおおぉぉ!」
「――茶番が長いわよっ!! いつまでやってんのよっ!!」
ニメがついに僕たちの茶番に怒りを放った。けれど、ここまでは予定通り。
あとはニメがこの茶番に負けて、罰を取りやめてもらうだけだ。
「……はぁ。そんなことしなくても、最初からお咎めなんてなかったわよ」
――ん?
…………え? ……あれ?
「お、お咎め、なし?」
「お、お咎めなしデス?」
僕とサディは驚いたように、ニメの言葉をオウム返ししてしまう。まさか、最初から罰がなかったなんて。それは予想していなかった。
「確かにあたしは援護に来てって言った。でも、サディの考えは間違っていないし、実際にリュウが経験を積む機会にもなったと思うわ。だから今回のはお咎めなし。最初からそうしようと思っていたのに、あんたたちが急に何か始めるんだもの」
「……なんだ、良かった」
「……よ、良かったデース」
「なら、さっさと戻るわよ。あんたたちいつまで抱き合ってるのよ」
ニメに言われるまで忘れていたが、そういえばずっとサディと抱き合ったままだった。
名残惜しくもサディの体から腕を離す。……ああ、本当に名残惜しい。
そのあと僕たちは保安局に戻り、悪鬼討伐のボーナスを課長からもらった。
今回は二体なので、合わせて一万円。だけど、そのうちのいくらかはニメへの借金返済のために、すぐになくなってしまった。
今しばらくは、節約生活から抜け出せそうにない。
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