第二章 13 サディの母性が爆発する

「リュウ、頑張るデスよー!」

 サディが拳を振り上げてリュウを応援する。もちろん本人には聞こえていないので、サディの気持ちだけなのだけど。

「リュウって戦いが苦手って言ってたけど、そんなことないと思う」

 最初に会った時に聞いたリュウの言葉を思い出しながら、僕は呟くようにそう言った。

「そうなのデスよ。リュウはちゃんと戦えるのデス。なのにリュウは、自分は戦いが苦手とか言うのデスよー! そんなに謙遜しなくてもいいデスのに!」

「たぶんリュウが、戦いは苦手って言うのは、もちろん謙遜の意味もあると思うけど、でもそれ以上に……」

「それ以上に、何デス?」

「それ以上に、サディとニメが強すぎるからじゃないかな」

 僕がそう言うと、サディはポカンとした顔をした。どうも僕の言った意味が分かっていないようだった。仕方がないので、深く説明してあげることにする。

「リュウは人並みに戦えるけど、それ以上にサディとニメが強すぎるんだ。そのサディとニメと、自分とを比較しちゃって、それでリュウは戦いが苦手って言っているんだと思う。サディとニメに比べたら、自分はまだまだです、っていうような感じで」

「……そう、なのデスか?」

「あくまで推測だけどね。でもたぶん、そうなんじゃないかな」

「…………」

 サディは下の方にいるリュウを無言で見つめ始める。そして少ししたのち、

「ああああぁぁぁぁ――――っ!」

 と、サディは大きな声を上げた。

「ああ、ジゲン! そう言われたら、何だか無性にリュウが可愛く思えてきたデスよ! リュウ、そうだったのデスね! 今まで気づいてあげられなくて、ごめんなさいデース!」

 サディはそう言うと、なぜか体をくねくねとさせる。どうやらサディの母性が爆発してしまったらしい。リュウを見る目が完全に変わっていた。

「あ、僕変なこと言っちゃったかな……?」

「変なんてとんでもないデース! むしろ感謝してるデスよー!」

「そ、それは良かった」

 サディとリュウの間に新たな関係を作ってしまってから、程なくして。

 ニメとリュウも、悪鬼を倒すことに成功した。

 それを確認した僕とサディは、ニメたちのもとへと向かう。向かうと言っても、ほとんど今いる場所から下へ飛び降りるだけだったけど。

「ニメ、そしてリュウ! お疲れ様デース!」

 ニメとリュウのもとへ行くと、開口一番にサディがそう言った。――ちょっとサディ! さすがにそれは! ニメはただでさえ鋭い女なんだから!

「…………。お疲れ様? そう言ったわね?」

「あっ! しまったデース!」

 しかも、しまったって言っちゃうし! もう、サディってばお茶目さん!

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