透明な花束

瀬名 鳴

prologue

 はじまりは恋。ささやかで、慎ましい恋心。

 貴方が好きでした。その綺麗な顔立ちも、儚げな瞳も、笑ったときにできる笑いじわも、全部。

 そばにいれるなら。私はそれだけで幸せだったのよ。

 しかし私は、愚者でした。実に愚かでした。

 愚かな私はその淡い花束のような恋心を燃え上がらせ、挙句の果てに、彼を残虐に殺しました。大好きだった彼は、今はもう土の下です。眠ったまま、戻らないのです。

 墓に備えられた赤いヒヤシンスの花は、今日も私に問いかけます。


「まだ、憎いの?」


 そんな嘲りの声と共に、生き残った私を冷ややかに見つめるのです。


「……あなたが憎い。あなたが死しても尚、」


 私は、あなたの代わりにはなれないのだから。


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透明な花束 瀬名 鳴 @flo_wersflower_s

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