4人の創世
「……ふうっ……♪」
「……ふん」
あらゆる空間、あらゆる時間が黒と白、肌色で包まれた平和な世界を後に、漆黒の衣装と無表情の仮面に全身を覆った魔王と、みすぼらしい衣装からトカゲ頭を露出させるゴンノーが辿り着いたのは、両者にとって非常に懐かしい、しかしどこか虚しい心を感じる光景が広がる場所であった。2人の足元から地平線の果てまでどこまでも続いていたのは、何の色も持たず、自身にふさわしい色彩を求めているかのような灰色の大地。2人の頭上を覆っていたのは、風も吹かず雲も見えない、ただ無表情の闇がどこまでも続く空――レインによって時間が破壊された遥か未来とはまた違う形で、目的地であったこの『過去』は、あの世界の果ての光景の如く、何も動かず何も現れず、完全に時間が止まっているようであった。
これが何を意味するのか、2人は知っていた。
「いやぁ、本当になぁぁぁんにも無いですねぇ、魔王……ふふふぅ♪」
「いちいち口に出すな、鬱陶しい……」
この『過去』には、何もない。
命や空気は勿論、山も川も海も空も、そして時間も、何も存在しない。
この世界に存在するのは、『魔王』と『ゴンノー』たった2人だけである。
そんな壮絶な状況でも決して心を乱すことなく、自身の記憶の中で強烈に刻まれた2人の言動をそのまま模写し続ける事が出来るのは、自分たちの魔術だけではなく未来で待つレイン・シュドーたちと共有し合った沢山の記憶のお陰かもしれない――魔王とゴンノーは、彼女たちと同じ思考判断を持つ心で互いに感じ、そして感謝の思いでその心を暖めた。
とは言え、そんな感銘に浸ってばかりはいられない事もまた2人はしっかり承知済みだった。『過去』に辿り着いたのを確認次第、やらなければならない事があるのだ。忘れていないだろうな、と命令口調で話す魔王に対し、ゴンノーは気持ち悪さと愛情を前面に押し出しながら心配ないという旨を返した。そして、両者は互いの手を握り合いながら、もう一方の空いた手をゆっくりと上にかざした。その途端、何も色がついていなかった空が、どこまでも澄み切った『青』へと変貌し始めたのである。
心に思ったことを大袈裟かつ気持ち悪く露呈できるよう自身に魔術を施したゴンノーが、自分たちの魔術が上手く行っている事に対して興奮した態度を見せる一方、敢えて心に思ってもいない事を声に出せる冷酷な心を埋め込んだ魔王は全く関心を示さないかの如くそのまま天高く手をかざし続けた。2人の掌から限りなく溢れ続けるオーラは青い空を突き抜け、やがてこの世界の『外』――魔王やゴンノーがいるこの場所では認知できない所にまで噴き上がった後、ゆっくりとこの世界全体を包み込み始めた。
この膨大なオーラに秘められていた力は、単に空を青色に染め上げるだけではなかった。これから長い時間をかけて行う『計画』の進行を邪魔しかねないもの――あくまで想像の中ではあるがこの世界の『外』からレインたちを妨害するかもしれない何かから守るため、世界全体を分厚い壁の如く『時間の歪み』で覆ったのである。それに加え、魔王やゴンノーの中には無数に断片化された世界を思うがままに行き来するレイン・シュドーたち自身がうっかり迷い込んできてしまう、と言う危惧もあった。レイン・シュドーと言う世界平和の神髄から様変わりした今、2人はあの純白のビキニ衣装に対してもごく普通に疑念を持ったり歪んだ愛情を注いだりする事も可能になったのである。
そして、何重にも渡って構築された『歪み』により、この世界が完全に全ての外敵から安全に守られる事を確認した魔王とゴンノーは、次なる工程へと移り始めた。この無限に広がる無色の大地に様々な彩りを添え、自分たちの記憶の中にある『世界』を形作る事である。そして、その中にはやがてレイン・シュドーへと変わる事になる命――あの愚かな人間たちも含んだ全ての生命も含まれている事を、魔王もゴンノーも既に承知し、理解していた。
「……ふふぅぅ……考えるだけでもう体が嬉しさで弾みますねぇ、魔王♪」
「ふん……愚かな話だ……」
レイン・シュドーが怒り、憎しみ、そして哀れに思った、この世界を覆いつくす脆弱で愚かで虚しい命の全ては、そのレイン・シュドー自身の手によって創り出されたものである――魔王の口から放たれたのは、その事実に関する憤りの言葉であったが、その無表情の仮面の下に宿る心はすべて隣ではしゃぐトカゲ頭の魔物・ゴンノーが代弁してくれた。レイン・シュドーによって作られたものが、遠い未来に全てレイン・シュドーへと変貌していく。この世界に存在する全ての命は『魔物』であると同時に『レイン』である。自分で自分を生み出すなんて、これほど喜ばしく幸せな事実が他にあるだろうか――魔王に叱咤されるまで、ゴンノーは気持ち悪い笑いと共に心からの思いを溢れさせ続けていた。
「……設定する年代はどうするか?」
「それは決まってますよぉ、魔王♪私たち『魔物』が最初に確認されたのは……」
レイン・シュドーと言う純白のビキニ衣装のみを身に纏った逞しい美女が初めて魔物と戦うよりもずっと前、世界に初めて魔物と呼ばれる存在が出現した――魔王とゴンノーの中に宿る『レイン・シュドー』の記憶が正確な年代を教えてくれた。その時点の世界は1つに纏まっておらず、愚かな人間たちが築き上げた町や村と呼ばれる集団で暮らす場所が世界各地に点在し、その中で様々なやり取りをしていた頃。まだ人間たちは互いの利益のみを求め、それが合致しない場合は互いに血で血を洗う様な争いも生じていた時代――心の中に秘められた類稀なる叡智によって、魔王とゴンノーの中にはすぐにこれから創る世界の構想が出来上がり始めた。
一度生み出してしまえば、あとは勝手に人間たちが思いのままに動いてくれる。そこを気ままに魔物を襲撃させれば、世界は自分たちの記憶通りに進んでくれる。未来のレイン=自分自身を含めた厄介な邪魔者は一切入ることがない。一言も話さない魔王の代わりに、ゴンノーは興奮する思いを露呈し続けていた。
そんな中、ゴンノーはふとある事に気が付いた。記憶が確かならば、初めて魔物が人類に目撃されたその年に、レイン・シュドーにとってかけがえのない存在がこの世に生を成したと言う事実――いや、正確に言えば2人の中にある『構想』を。
「いやぁ、感慨深いですねぇ……あのライラさんも、私たちの手で作れちゃうなんてぇ……ふふふふぅ……♪」
「ライラだけでは無かろう……リーゼ・シューザ……あの老いぼれもだ」
自分たち以外にレイン・シュドーを成長させる要素を持つ、非常に目障りで厄介な存在だ、と魔王が心と真逆の悪態をついた、その時だった。
「「……ふふ♪」」
突然後ろから聞こえた2つの声に、驚愕の心を大袈裟に示したゴンノーは勿論、魔王も一瞬その冷静沈着さを失いかけた。全ての外敵を世界に侵入できなくさせたはずの『壁』があっさり越えた異物が侵入した事ばかりではない、2人の目の前に出現したその人物の口調は――。
「……こんにちは、『魔王』♪」
「……はじめまして、『ゴンノー』さん♪」
――魔王とゴンノーの中に宿る『レイン・シュドー』の記憶に秘められた、彼女を崇高な存在へと導いてくれたかけがえのない存在、リーゼ・シューザとライラ・ハリーナそのものだったのである。
目障りでごめんね、と優しく返すその声色はまさしくあの叡智を秘めた女性議長そのものであり、こうやって会うのは初めてですね、と敬語で語りながら見せる無垢な笑顔は間違いなくレインの最後の味方であったライラ本人で間違いなかった。だが、両者と向き合った魔王やゴンノーの心に沸いたのは、二度と会えないと思いこんでいた存在と巡り会えた事への感動ではなく、目の前にいる2人に対して抱いた多数の疑問であった。レイン・シュドーの記憶を残しつつ様々な事柄を感受する心を敢えて改変させていたのも理由の1つであったが、それ以上に目の前にいる存在、特にライラ・ハリーナであるはずの女性の姿形、声色、そして心は、魔王とゴンノーの記憶にあるあどけない少女とは異なり――。
「「……ふふふ♪」」
――『レイン・シュドー』とほぼ同じものに変貌していたのだ。
何がどうなっているのかと素直に驚くゴンノーと、何故貴様らが生きているのか、と『人間の敵』である自身の立場故に憤りの姿勢を示す魔王に対し、リーゼとライラはレインと同じ純白のビキニ衣装に包まれた胸を揺らしながらにこやかに答えた。新たな世界を始めようとする2人に、『宣戦布告』をしに訪れたのだ、と。
~~~~~~~~~~
「レイン……じゃなかった、魔王にゴンノー、私の最期は覚えてる?」
「何故わざわざ聞く……老いぼれだった貴様を、今のような若い姿に戻したのだろう?」
「私のほうは……ごめんなさい、言わないほうが良いですね……」
「そうしてくださいなぁ……せっかく生み出す人間へ対する感情がムカムカしてきますからねぇ……くそっ!!」
純白のビキニ衣装のみを纏う2人の美女が告げた通り、女性議長リーゼ・シューザはレイン・シュドーと一体化する形でこの世界から完全に姿を消し、浄化の勇者であったライラ・ハリーナは愚かな人間たちの欲望の前に命を散らしてしまった。その事実に直面したレインはそれぞれの犠牲、そして最後まで自分を慕ってくれた思いをしっかりと受け止め、彼女たちの思いを自分の強さへと変換していった。そして、他の大多数の人間たちが愚かな存在と一緒くたにさせられ、叡智を宿した人間たちもこの世界に必要ではない存在だと見做した中でも、レインはこの2人だけは別格に考え、ずっと心の中に秘め続けていた。
その事が、両者が本人も予想しない形で復活する要因となった、とリーゼとライラはレインと寸分違わぬ優しい笑みで語った。相変わらず無表情の魔王や、気持ち悪い声を挙げ涎まで垂らしながら興奮するゴンノーとは対照的な、美しさを漂わせる表情だった。
「レインさんが私たちを完全な形で覚えてくれたお陰で、私たちは『存在』を維持できたんです。ね、リーゼ♪」
「そうよ、ライラ。てっきりレインと1つになれたと思ったら、世界の外側で目覚めるなんて思わなかったもん♪」
先に『外側』で新たなる目覚めを迎えたライラの方が自分自身を暖かく迎えてくれた後、あの世界そのものであるレイン・シュドーが自分たちをかけがえのない存在として認知し続けたお陰で、魂だけになっても自分たちの存在が保たれた――そんな不思議だが神秘的な事実を彼女は教えてくれた、と嬉しそうに語りながらリーゼはその長い黒髪をたなびかせながらライラに笑顔を見せた。そして同時に、レインの思いを受け取ったことで、自分たちもまた『未来』のレイン・シュドー――時間も空間も超越する存在と同等の力、同等の姿、そして同等の心を身に着けることができた、と。
「ほぉ……『わたくし』と同じ……あのリーゼさんとライラさんが……あぁあぁぁああ悶えそうですぅぅぅぅ♪」
「本当に鬱陶しい……だが、貴様ら2人が我と同等の力と姿を手に入れたのは、それだけではあるまい」
「……ふふ、流石レイン・シュドーね♪」
「私の大好きなレインさんそのものです♪」
「その名で呼ぶな」
リーゼもライラも、無表情の仮面から放たれる魔王の言動の大半は心に思っていない事、もしくは心が正反対になった事である事を認識しているかのように、レインと全く同じ可愛らしくも凛々しい笑顔を見せた。この表情を含んだ、純白のビキニ衣装のみを纏う勇者レイン・シュド―に、2人はずっと憧れの心を抱いていたのだ。美しさと逞しさ、頼もしさと優しさを持つあの勇者のようになりたい、いやどうせならレイン・シュドーそのものになりたい――世界の『外側』で心だけが蘇った2人が、レインと同じ肉体を自ら手に入れたのは、そのような一途な思いがあった。そしてその上で、リーゼもライラも敢えて髪型や肌の色合いなど一部だけレイン・シュドーから変える事で、レインに対する憧れの思いを決して忘れないようにしたのである。
「どうですか、私のこの髪型……あぁん、そこは胸とお尻ですよぉ♪」
「ふふふふぅぅぅぅぅ……ライラさんをこう弄ぶのは……不思議ですが楽しい心地ですねぇ♪」
リーゼが生前最後に得た純白のビキニ衣装に長い黒髪と言う姿を選んだ一方、ライラはレインと同じ純白のビキニ衣装と豊かに実る胸を手に入れるのと同時に、長い黒髪を左側に纏めて結い、それを白い紐で止めると言うお洒落かつ可愛らしい髪型を選んでいた。レインと全く同じ体つきに興奮しながらもしっかりそのトカゲの骨のような手で髪の心地を楽しんでいるゴンノーの様子に、姿や心は違えど『レイン』に認められたという嬉しさをライラは存分に味わっているようであった。まるでかつて満足にじゃれ合う事すら出来なかった過去の悲惨な日々の分を補うかのように。
そんな奇妙な光景の横で心にもない呆れ交じりの罵倒を投げながら、魔王はリーゼに尋ねた。そんなにレインに会いたいなら、あの『時間の歪み』のような壁をわざわざ通らず未来のレインの元を訪ねればよいのではないか、そもそも『宣戦布告』というふざけた言葉は何を意味するのか、と。その瞬間、リーゼとライラの表情が、レイン・シュドーの持つ真剣なもの――恐るべき強敵に立ち向かう前に見せる、少し笑みの混ざった表情へと変わった。そして両者は一旦魔王とゴンノーから間をとった後、改めて『魔物』たちに向けて自らの名前、そして名目上の地位を名乗った。
『女神』リーゼ・シューザ、『勇者』ライラ・ハリーナ、と。
「……女神か……」
「ほぉぉぉ、勇者ですかぁぁ♪」
「ふふ、『女神』に護られた『勇者』たるもの……」
「『魔王』に敵対宣言を告げるのは当然ですよね♪」
私たちはこれから行われるであろう『悪行』を絶対に許すつもりはない、世界の安定を司る存在として見過ごす訳にはいかない――言葉こそ真剣かつ敵対心が溢れるものであったが、女神リーゼも勇者ライラも、揃って口元には魔王やゴンノーと語り合うことが出来る喜びを隠さないかの如く笑みが零れていた。これからずっと2人を見守り続け、愚かな人間たちが滅んでいく様子を楽しませて貰う、と言う本心は、言わずとも魔王もゴンノーもしっかり察していた。
そしてその上で、ライラは勇ましく、そしてどこか悪戯げな笑みを漏らした後、魔王とゴンノーに向けて言葉の矢を放った。
2人が行う悪事が世界の外に広がる事がないよう自分たちもしっかり監視させて貰う、もし世界の壁を破ろうとする者がいれば決して容赦しない、と。
「……ふん、なら貴様らも、この世界に一切干渉をするな」
「その時は、私たち魔物も一切容赦をしませんからねぇ」
「……分かりました、魔王」
「了解、ゴンノー」
互いに別の場所から協力し合いながら、共に平和な世界を築き上げていこう――『宣戦布告』の形を借りた共闘が成立した事を示す握手を、4人は互いに交し合った。それと同時に、魔王とゴンノーは何故リーゼとライラがこの時間を訪れたのか、その本当の理由を理解することが出来た。握り合った手は、今の段階では魔王もゴンノーもレイン・シュドーとは異なるもの。大きさは勿論、その温かさも全くレインのものではない。もし本当に、レイン・シュドーそのものの手で、ライラやリーゼの掌の感覚を味わいたいのなら、世界の『外側』まで来るように――自分たちの思いを女神リーゼと勇者ライラは言葉を介さない形で伝達したのである。
そして、魔王とゴンノーに伝えたい内容を全て語り尽くした2人の純白のビキニ衣装の美女は、産声を上げる前の『世界』の外――彼女たちが永遠の命を成す場所へと戻る準備を始めようとした。しかしその直前、両者は顔を見合わせて動きを止めた後、魔王やゴンノーの元に歩み寄りあるお願いをした。
「……どうしますかねぇ、魔王?」
「断る理由などない。貴様らなど除け者にすらならん」
「わぁ……ありがとうレイン!」
「レインさん、ありがとうございます!」
いい加減にその名で呼ぶな、と心と真逆な苛立ちの反応を見せながらも、魔王は嬉しそうなゴンノーの元にそっと歩み寄り、漆黒に塗りつぶされた手をそっとゴンノーの骨で出来た手に重ねた。そして、そのままゆっくりと2人は天高く手を上げ始めた。その掌には、レイン・シュドーの純白のビキニ衣装に似た色を放つ、まるで卵のような形をしたオーラが出来上がっていた。
「あぁん……興奮しちゃう……あの中に私がいるなんて……♪」
「私もよ、ライラ……レインから私が生まれるなんて、もう最高すぎるわ……♪」
その輝きを見つけるリーゼとライラはすっかり顔を赤らめ、これから始まる出来事への期待と興奮、そして憧れのレイン・シュドーが自分自身の『過去の姿』を創り出した張本人、自分たちの生みの親であると言う事実を目の当たりにできることに対する光悦感で心がいっぱいだった。髪型と肌の濃さだけは違えど、既に彼女たちはレインと全く変わらない存在に変貌していると言う事を、存分に示すかのような反応だった。
そして、暖かな光の塊が最小限まで縮んだ直後、まるで爆発するかの如くそこから大量のオーラ――闇でも光でも虹色でもない。『レイン・シュドー』と言う存在そのものが、世界中へ溢れ返り始めた。眩しさの中にレインの笑み、レインの美しさ、そしてレインが抱く人間の愚かさが万遍なく散りばめられ、それが『生命』と言う仮初の存在――ある意味では上級の魔物へと変貌していく過程を、4人はしっかりとその目で見届け続けた。
やがて全てが終わり、自分たちの経つ場所が果てしなく続く『世界の果て』の灰色の荒野に変貌した事、それ以外の場所には様々な色彩に溢れた仮初の存在が溢れ返った事を確認したとき、魔王とゴンノーの傍にはもう女神リーゼも勇者ライラもいなかった。『歪み』によって隔てられた世界の内側からは2人の存在すら把握する事も出来なかった。
「……行っちゃいましたねぇ、魔王」
「ふん、感傷に浸る暇はないぞ、ゴンノー」
「ええ、分かっていますともぉ……!」
これから忙しく、そして楽しい日々が始まりますねぇ――そう言いながら、最初の魔物を作ろうとゴンノーがそっとオーラを近くの石に注ぎ始めた時だった。
「……ほう……」
「……なるほどぉ……♪」
魔王と共に、ゴンノーは一瞬だけ、リーゼとライラの反応を感じ取った。それはほんの僅か、瞬きをする間もないほどであった。だが、そのほんの僅かな間に起こした2人の行動が、やがてこの腐りきった世界を大きく変え、自分たちの運命にまで影響していく事を、この魔物たちは感じ取っていた。そして『魔物』として抱いた脅威と同時に、『レイン』としての嬉しさを、魔王とゴンノーは心の中にしっかりと刻み込んだのである。
格好つけて『女神』と『勇者』を名乗った2種類のビキニ衣装の美女は、あの眩い光の中で生まれる事がなかった1つの命を、自分たちの持つ力を使ってそっと生み出していたのだ。
彼女たちがずっと憧れ、理想的な姿として追い求め続けている、この世界の全てを形作るもの――。
「……ふう……」
――純白のビキニ衣装のみを身に纏う、レイン・シュドーと言う存在を……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます