レインとレインの旅立ち

 レイン・シュドーたちの持つ時間で何万、いや何十万日もの遥か昔、腐りきった愚かな世界を変えるために暗躍を続け、レインという存在を単なる人間からどんなものよりも崇高な存在へと変えた『魔王』は、無数の純白のビキニ衣装の美女に見送られながら仲間と共に遥か未来へと去っていった。全ての目的を終えた以上、もうこの世界に『魔王』は必要がない、そう考えたからである。

 その後、魔王はどの時間へと消えていったのだろうか。辿り着いた先で、魔王、いや遥か未来のレイン・シュドーは、何を見ることになるのだろうか。が『』に変わり、あらゆる時間を支配しながら数の概念を日々崩し続けるレインたちは、揃ってその答えを認知していた。そして彼女たちは――。


「ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」…




 ――間もなく訪れる帰還者を迎えるため、目的地周辺のあらゆる場所を黒と白、そして肌色でぎっしりと埋め尽くしていたのである。


 レイン・シュド―が元の時間に帰る場所、そして新たなレインが過去へ旅立つ場所として決めたのは、かつて『魔王』本人が創造した、最後の人間であり最後の勇者であったトーリス・キルメンを大地に封じ、そこから無限にレイン・シュド―が生み出されるように設定された世界であった。過去から未来へ無数の世界が時間ごとに区切られて重なり続けるレインの世界とは異なり、トーリスのいる場所はそこから切り離された別の空間に漂っており、レインがその存在を認識出来るようになるまで随分『時間』がかかってしまった。

 だが、この異空間で無限に増殖し続けていたレインたちはその事に決して怒る事なく、むしろその――かつて魔王と共に強くなり続けていたレイン・シュドーがようやくこの段階にまでたどり着いたという事実を心から祝福してくれたのである。そして同時に、この世界からトーリス・キルメンという存在はほぼ消滅しているという事も、レインたちは知る事となった。当然だろう、無限にレインが現れる事に対して快楽を持つという屈辱を味わい続けたトーリスがそこから逃げるために取った手段は、自らの意識をレイン・シュド―と同格にする事以外なかったのだから。


 かつての『勇者』――すべての存在を欺く事でしか存在意義を見つけられなかった愚かな存在の代表格が眠る大地を無限に踏みしめていると言う快楽も含め、この場所こそ魔王の帰還にふさわしい所はない、とレインたちは改めて自分同士で語り合いながら笑顔を漏らした。



「「「「「「「「「「「「何度見ても飽きないわね、レイン♪」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「「「もう何千兆回目かなー♪」」」」」」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「「「「「「「数なんてもう関係ないよねー♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」



 本当に心から素晴らしいと思える光景は、無限に見続けても決して見飽きる事はない――全ての時間、全ての世界で全く同じ心、同じ思考判断、そして同じ純白のビキニ衣装を身に纏いながら永遠に増え続ける美女たちは、この世界の空も海も大地も全てを覆いつくしながら、今か今かとその時が来るのを待ち続けた。このワクワクする心と若干のもどかしさもまた、レインたちにとっては素晴らしい娯楽の1つになっていた。


 その直後であった。全てがビキニ衣装の美女でびっしりと埋め尽くされた世界の中心に空いた肌色の大地の上に、突然禍々しくどす黒いオーラが蠢き始めたのは。それとほぼ同時に、近くの空間が切り裂かれ、内部に『世界』の外側を示すかのような無数の色彩が彩る光景が見えた。そして、そこからもう1つ、どす黒さと同時にどこか胸糞悪さも秘めたオーラの塊が、吐き出されるかのように大地に着地した。

 やがて、切り裂かれた空間が元に戻るのに合わせるかのように2つのオーラは次第に複雑な形を成し始めた。一方は全身に漆黒の衣類を纏った、畏怖と威厳に満ちた姿へと変わり、もう一方は少しづつ猫背気味になり、全身が朽ちていくかのようなみすぼらしい衣装と骨だけの体を見せ始めた。そして、レイン・シュドーたちの目や心に映ったのは、今や懐かしい思い出の一部となった、全ての魔物を統治する存在『魔王』と、その魔王にわざと反旗を翻す演技を行い、その計画の補佐および人間たちの掌握を進めていた魔物軍師『ゴンノー』の姿であった。




「「「「「「「「「「「「「「「「わぁ……!!」」」」」」」」」」」」」」



 お久しぶりです、と言う不気味な声も、無数のレインの歓声を鼻でせせら笑う音も、今の彼女たちにとってはどれも素晴らしい響きと呼んでも過言ではないものだった。だが、軽い挨拶を終えた後、『魔王』と『ゴンノー』はすぐさまそれぞれの首に手を当て、それを一思いにもぎ取る事で、自分たちの存在をこの世界からいったん消失させた。当然だろう、未来永劫続くこの無数の世界には魔王もゴンノーも一切必要ない。この世界に存在する価値を持つのは――。


「……ふう……♪」

「ただいま、レイン♪」

 

 ――純白のビキニ衣装のみを纏う健康的な肌と黒髪の美女、レイン・シュドーだけなのだから。


「お帰り、レイン♪」お帰り、レイン♪」お帰り、レイン♪」お帰り、レイン♪」お帰り、レイン♪」お帰り、レイン♪」お帰り、レイン♪」お帰り、レイン♪」お帰り、レイン♪」お帰り、レイン♪」お帰り、レイン♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」お帰り♪」…


 

 数の概念を放棄したレイン・シュドーの大群、いやレイン・シュドーという存在のみで構成されるこの『世界』の内部で四方八方から迫りくる心地良い快楽に、過去から帰還した2人のレインは思う存分身を委ねる事にした。魔術の力であっという間に取れてしまう『疲れ』を敢えて体の中に残していたのは正解だったかもしれない、と言う思いを秘めながら。

 やがてその思いは次第に純白のビキニ衣装に包まれた豊かに実る胸を飛び出し、世界のすべてをぎっしりと覆う全てのレイン・シュドーへと伝わっていった。いや、そればかりではない。長年『魔王』、そして『ゴンノー』として培ってきた様々な記憶が再びレインたちすべてに共有されるのと同時に、これから現れる新たな『魔王』と『ゴンノー』はどのように動けばよいか、どう世界を変えればよいか、その手段も彼女たち全員が共有することになったのである。そして、その中に秘められていたある記憶に、完全に区別がつかなくなった全てのレインたちは格段と嬉しい表情を見せた。



「「「「「「「「「「「「「「「あぁ……なんて素晴らしいなの……♪」」」」」」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「本当よね、レイン……♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「あぁん、素敵すぎる……♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 

 顔を赤らめながら素晴らしい記憶に興奮しきったレインは、ますますその身を無数の自分たちの中へと潜り込ませていった。四方八方から迫りくる自分の唇や頬、髪、胸、お尻、太腿、その全てが彼女にとってまさに最高の感触、快楽、楽園そのものであった。そして、肉体によって覆われた世界の隙間を埋めるかのように響き続ける笑い声が、レインたちの興奮をより増やし続けた。

 数も時間も超越した存在は、あらゆる様子を『レイン・シュドー』を増やす糧に変えていった。



「あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」あははははは!!」…




 だが、興奮するのと同時にレインたちはある1つの覚悟も決めていた。間もなく新たに生み出される2人のレイン・シュドー――数や時間の概念が残る過去へと送り出す事となる別の自分が、これから長い間この快楽を大っぴらには味わいづらい状態になってしまう事を。そして、レインという存在への愛情や情熱、尊敬、そして快楽を押し留める暮らしを余儀なくされてしまう、という事も。何億回、何兆回、いや数えきれないほど同じことを繰り返し続けている中でも、どうしてもこの不安だけはレインたちの中であまり良い快楽として処理できなかった。

 しかし、白と黒、肌色でびっしり覆われた世界の中心に現れた、新たなる『魔王』と『ゴンノー』へと変わる運命を背負ったレインたち本人は、その事をほとんど気にしていなかった。


「大丈夫よレイン、みんな同じ記憶を持ってるんでしょ?」

「少しぐらいの不安なんてすぐに消えちゃう、そう刻まれてるでしょ?」


「「「「「「「「「「「「「「「……まあ、そうよね、レイン」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「「「「「は無限に成功し続けてるもんね♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「「「「「それに、レインもみんな『レイン』だもんね♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」

  


 それに、別のレインをつい心配してしまう心や、同時に沸く新たなる旅立ちへの期待と不安の思いが溢れるという事は、レイン・シュドーは今も崇高な存在――美しさは勿論、心の中に立派な知性や理念、そして愛情を持ち続けている、永遠に続く平和な世界にふさわしい存在である事の表れだ――自分同士で語らいながら、レインたちは自らの心に現れた下向きの感情を打ち消しあった。そういった『下向き』の感情を味わい、それを消し去る工程自体もまた意外と楽しいものだ、と再認識しながら。



 そして、長く喋り続けても仕方がない、と納得しあったレインたちは、皆で2人のレインの変貌を見守ることにした。


 彼女たちの視線や心が一斉に集中する中、2人は揃って目を閉じ、自らの体にゆっくりとオーラを纏い始めた。普段彼女たちの体を包み込むものとは異なり、体に粘っこくへばりつく物体のように、まず漆黒のオーラが双方の体を覆っていった。続いて、その上から念を入れるかのように光のオーラがやさしく包み込み、最後に『時間』をも超越する力を持つ虹色のオーラが一気に溢れ、レインの体から輪郭を奪った。

 幾つもの色が混ざり合っていくうち、2つのオーラの塊は次第に黒とも白とも、何の色かもわからない奇妙な色彩を帯び始めた。やがて、単に覆いかぶさっているだけであったオーラの形は複雑になり、双方に長い足や禍々しい形をした手、そしてレイン・シュドーとは明らかに異なる顔の輪郭を作り始めた。一方は表情を作るための構造物がほぼ存在しない銀色に鈍く輝く仮面の形を成し、もう一方は長く伸びて人間とは全く異なる奇妙な怪物の顔に変貌していった。

 そして、いくつもの過程を経た後、無数のレインたちの興奮するような笑顔の前に現れたのは――。




「……ふん……」

「ふふふぅ……♪」



 ――レイン・シュドーから生み出された新たなる『魔物』、魔王とゴンノーの姿であった。


 おめでとう、おめでとう、おめでとう、おめでとう――四方八方から無限に響き渡る愛すべき自分自身の声に対し、ゴンノーは耳障りな気持ち悪い声で感謝の言葉を返したのに対し、魔王は逆にそれらの発言を嫌うかのような言葉を返した。いつ聞いても鬱陶しくてたまらない、と言う、レイン・シュドーなら絶対に言わないような暴言という形で。だが、今のレインにはどの返事も愛おしく美しく、そして可愛らしいものだった。健康的な肉体の図べ手に鳥肌が立つような不気味さも、レインの発言に楯突くような態度も、全て『レイン・シュドー』という無力な人間を世界で最も崇高な存在へと磨き上げるための大事な要素であり、自分自身をここまで強くさせてくれた立派な力なのだから。



「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「……調子は抜群のようね、魔王にゴンノー♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


「ありがとうございます、『レインさん』……ふふぅぅっ♪」

「ふん……心にある記憶通りに従っているだけだ。当然だろう」



 表面上はこのような言葉でも、双方とも本当は満面の笑みで感謝の心を述べている事は、『現在』のレイン・シュドーにはお見通しだった。


 

 そして、自分自身を導く新たな存在が時間を越え、ここから遥か『過去』へと移動する準備を始めた時、レインたちは一旦その行動を止めるよう告げた後、念を入れるかのようにある事を尋ねた。先程味わった最高の『記憶』を、まだ覚えているか、と。



「……いえ、何のことやらぁ?さっぱりですよぉ?」

「相変わらず貴様らの臆病癖は治らないな。そんなくだらない記憶、持っているはずがなかろう」


「「「「「「「「「「「「「「「「「ふふ、良かった♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」



 レインたちは、敢えて魔王とゴンノーから、先程の楽しかった思い出を消去させたのである。無数の色彩が無秩序に蠢く空間を抜け、レイン・シュドーという存在がまだちっぽけな人間であった頃にたった2人で遡ることになる自分たちに、その記憶の中にあった驚きや嬉しさ、そして感動をたっぷりと味わってもらいたかったから。



 黒と白、肌色に包まれた世界から離れていく漆黒の王とトカゲ頭の魔物を、レインはこの世界の底から響くような大音量の挨拶で見送った。

 2人の放つ独特のオーラの心地が完全に感じられなくなる時まで、ずっと笑顔を絶やさぬまま……。

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