レインの世界・8

「ふう……」


 どれだけレイン・シュドーの数が日々増え続けようとも、自分自身が数えるのを放棄しそうなほどの数にまで増殖しようとも、数という概念で支配されている『有限』な存在である以上、『無限』に広がっているはずの世界を平和の名のもとに統一するのは容易くとも、その象徴であるレイン・シュドーで完全に埋め尽くすのは困難である――世界の果てに広がっている、灰色の岩や砂が一面を覆う光景を見ると、レインは自分の心が引き締められるような思いに駆られた。調子に乗りすぎるな、と魔王=未来で待っているはずの自分以上の力を持つ未来の自分がそう告げているかのような気分であった。



「……ふふ……」



 そして同時に、レインは自分の中にある初心を引き出す事ができた。レインが自分自身以外で尊敬に値すると見做した数少ない人間に見せた平和な世界の理想像――レイン・シュドーでびっしりと覆い尽くされた世界は、未だに実現していない。自分自身で全てを征服するという目標が達成できていない以上、これからも絶え間なく世界を作り替えていく必要がある。自分の役目は、まだ終わっていない――それを認識する度に、彼女の凛々しくも楽しさに満ちた顔から笑い声が零れた。まだまだ自分の力で新たな世界を創造できる余地がたっぷり残されている、という喜びも一緒に味わっていたからである。


 しばらくの間、彼女は周りの景色を空中で見渡しながら、この広大な区域に何を作ろうか思いを張り巡らせた。地上同様、レイン・シュドーが1人もいない灰色の空を真っ先に肌色で覆い尽くす事は決めていたのだが、それ以外はどのように作り替えてしまおうか、彼女の心には多種多様な選択肢があらわれ続けていた。そして、笑顔のまま沈黙し続けた彼女は、大きな声を響かせながらこの案で決めたことを自らの口からはっきりと告げた。善は急げ、と言わんばかりに、レインは早速両手を高く掲げ、それぞれの掌の上に漆黒と光が入り混じった縞模様のオーラの塊を作り始めた。何もかもを無に還す力を持つオーラの渦とよく似た色合いであったが、レインは既にこの渦を様々な形に応用する術を見出していた。すべてを消し去る方向に渦を回すのではなく、それとは反対方向に回り続けるオーラの嵐を作り出す事で、彼女はより効率的にあらゆるものを無から創造する方法を編み出していたのである。

 それが特に効果を発揮するのは、今回のように――。



「はあああっ!!」



 ――果てしなく広がる空間を、あっという間に作り変える場合である。

 自らの周りの空間を数限りなく複製するのではなく、自らの思い通りの世界を何もない場所に創り上げる際には、まるで煙を充満させるかのように一気に創造のオーラを噴出させる方が都合が良い――何百、何千回も鍛錬を重ねてきた成果を、レインは意識せずとも行えるほどにまで身につけていたのかもしれない。

 自らの体の中に秘められた力を存分に開放し途轍もない量のオーラを存分に噴出し終えたレインが、自らの体から流れ始めた心地よい疲れを含む汗を吹き始めた時、少しづつ彼女の周りに充満していたオーラが薄れ始めた。たっぷりと上乗せした彼女の思いが、具現化し始めた合図であった。そして、完全にオーラが消えた時、どこまでも荒れ地が続いていたはずの空間に替わって一面に広がっていたのは――。


「わぁ……!」


「「「「レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」レインー♪」」」」…



 ――どこまでも続く肌色に包まれた家々や道と、その上を無尽蔵に覆いつくす純白のビキニ衣装の美女が見せる満面の笑みであった。更にその声から発する自分自身を呼ぶ声は地上のみに留まらず、上空を肌色と黒、白色でぎっしりと覆い尽くされた空からも数限りなく響き続けていた。レイン・シュドーが理想とする『町』が、彼女の周りに現れたのである。

 今回も、レインは自身の魔術の腕が訛ることなく研ぎ澄まされている事を、無数の自分たちの満足げな表情からたっぷりと感じる事ができた。


~~~~~~~~~~


「うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」…



 一度新たな区域ができれば、そこにレイン・シュドーが馴染むのはあっという間だった。この『町』を創り上げたレインと、彼女が大量に生み出した何億何兆、何京もの数のレイン・シュドーは、生まれ方は違えど記憶も心も全く同じ、あっという間に彼女たちは分け隔てなく混ざり合い、だいぶ暗くなってきた新たな『町』の雰囲気を全身で味わっていた。


「「「今回も良い出来みたいね、レイン♪」」」

「「「「ありがとう、レイン♪」」」」

「「「「「「あ、ここの『レイン・ツリー』の配置良いかもしれないねー」」」」」」 

「「「「「「「「「「本当?今度作る時もこれやってみようかなー♪」」」」」」」」」」


 その中で、彼女たちは改めて自分自身が創り上げた様々な配置や構造をたっぷり観察し、自らの琴線により触れる箇所を探り当てていた。常に強く美しくなると言う要素も、レイン・シュドーという存在の大きな利点の1つである事を彼女は強く認識していた。勿論、少し気に入らない箇所やもっと発展できそうな箇所もしっかり発見し、その場で修正を行いながら、彼女たちは町の隅々まで行き渡り続けた。

 そして、自分同士の連携によりあっという間に作業が終わった彼女たちは、すっかり暗くなった肌色の空、そしてそろそろ夕ご飯の時間じゃないか、と次々に空一面に響き渡る可愛らしさと凛々しさを併せ持った声に促されるかのように、各自思い思いの肌色の家に入り、たっぷり夕食を創造する準備を始めた。すると、そんな彼女たちの元に――。


「「「「「「「「「「「「「おーい、レインー♪」」」」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「あ、レイン♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 ――この町で増え始めたレインたちの大群とはまた別の場所で増え続けていたレイン・シュドーが来訪してきた。

 挨拶がてら早速記憶を共有し始めた彼女たちは、このレインたちがこの場所とはまた別に先程完成したばかりの新たな区域――大地を次々に盛り上がらせ、その上に無数の種を蒔き、あっという間に地上を覆いつくした『レイン・プラント』の成れの果てによって構成される巨大な肌色の山脈から生産され始めた純白のビキニ衣装の美女である事を知った。勿論、彼女たちの選択肢に別の自分を受け入れないというものは存在しなかった。やわらかで豊かな胸をたわわに実らせ、しなやかさや逞しさを存分に醸し出す腕を露にした自分たちと一緒に美味しい食卓を囲む、しかも別の場所からやって来た自分たちと一緒に楽しむ、まさに彼女たちにとっては贅沢そのものだった。

 そそいて、この嬉しすぎるプレゼントのお礼として、レインこの『町』からも幾人かのレイン・シュドーをその新たなレインの山脈へと贈ってあげる事にした。


「「「「「「「「「「「「「「「「「これくらいの数でいいかな、レイン?」」」」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「「「十分すぎるぐらいよ、レイン♪」」」」」」」」」」」」」」


  

 レインの心を癒すのはレイン・シュドー――当たり前の事だが、それを何度も楽しむ事が、レインにとっての最良の幸福でもあった。

 すべてが平和になったこの世界は、隅から隅まで彼女の幸福に溢れていた。



「「「「じゃ、そろそろ夕ご飯にしましょう♪」」」」

「「「「「「「「「「「「うんうん!」」」」」」」」」」」」


~~~~~~~~~~


 それからしばらく経ち、『町』のあらゆる場所から――。


「ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」ごちそうさまー!」…



 ――元気に満ちたレイン・シュドーの声が響き始めた頃だった。

 

 腹一杯美味しいご飯を食べ、ついでに両隣に詰めて座る自分の感覚で心もいっぱいにした彼女たちは、火照った体をビキニ衣装からたっぷりと露出しながら、自分自身に囲まれた夜のひと時を過ごしていた。明日は何をするかを語り、もっともっと自分を増やしたいという願望を共有しあい、そしてレイン・シュドーと言う存在が大好きである事を麗しい唇の感触で互いに確かめ合いながら、新たなレイン・シュドーを増やしながら寛いでいた、まさにその時だった。突然『町』にいるレインたち全員の脳裏に、この場所から遥か遠く離れた別の区域から、大量のレイン・シュドーの声が響き始めたのである。そこから伝わる感情は、明らかに嬉しさで興奮しきったものだった。



「「「「「「「「「「「「「「「どうしたの、レイン……?」」」」」」」」そんなに興奮しちゃって……?」」」」」」」」」



 彼女と全く同じ疑問が世界中のあらゆる場所から無尽蔵に届き続けている事をレインたちは実感した。そして同時に早くその理由を教えてほしい、と言う願望も世界中に溢れかえろうとしていた。そんな自分たちの声を受けたかのように、遠い場所にいる別のレインたちは一斉に自分たちがこれまで保持し続けていた記憶を世界中すべてのレイン・シュドーに向けて送り届けた。そして、その記憶の中身を堪能し始めたレイン・シュドーの顔は、少しづつ満面の笑み、それも今までのような快楽で得たものとは異なる、新たな高みを見出したことに対する興奮からの笑みだった。確かにこれならあそこまで嬉しそうに自分たちに語り掛けるの無理はない、と納得しながら、レインたちもその快感に乗る事にした。


「「「「「「「「「「「「「本当に……本当にうまくいくのね……!!」」」」」」」」」」」」

『『『『『『間違いないわ、レイン……!』』』』』』ええ、絶対に上手く行くに決まってる……!』』』』』』でも、まだ実行には移せてない……』』』』』』だから明日、やってみようって事になったのね……!』』』』』』



 そして、互いに記憶を統一しあったレインは、改めて自分たちが佇む世界の空へと視線、そして意識を向けた。

 今、この空は夜を示す美しき漆黒に包まれている。もっと時が過ぎればこの暗闇は拭い去られ、肌色で覆われた空は明るく輝き始めるだろう。今までずっと、自分たちがいくら努力しようともあらがうことができなかった『時間の流れ』と言う厄介な要素を、嫌というほど感じてしまう光景である。だが、それも明日で終わるかもしれない――いや、間違いなく、ですべての時間は終わる。



「やったわ、レイン!!」私たち、ついにやったのね、レイン!」嬉しいわ、レイン!」私もよ、レイン!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」あはははは!!」…


 

 時間の流れそのものをする決定的な方法を、レイン・シュドーたちはついに見つける事が出来たのだから……。

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