レインの会議
無限に広がる世界を自分たちの思うがままに改変させながら、純白のビキニ衣装のみを身にまとう健康的な美女の数を際限なく、数の概念をわからなくさせるかの如く日々増やし続けていたレイン・シュドーたちは、その過程で自分の数を効率よく増殖させる様々な絶景を生み出し続けていた。
どこまでも続く巨大な街、レイン・シュドーが果てしなく生え続ける山、レインの顔や体でびっしり覆われた無数の肉の塔、レイン・シュドーを構成する色が水平線の彼方へと広がる海――そこから数限りなく誕生するレインたちもまた、他の自分たちと連携しながら自分自身の心に湧き上がる快楽を満たすべく、更にそれらの光景を世界のあらゆる場所に作り出し続ける日々を過ごし続けていたのである。
だが同じ心を持ち続ける彼女たちは、現状を楽しみ続けるにしても絶対にこれだけは忘れてはならない、と互いに固く誓い合っているものがあった。快楽におぼれ切り現状に満足する事なく、常に向上心を持ち続けより強くより美しくなり続けるという理性である。
そのため、レイン・シュドーはかつての人間たちが使用していた様々な要素を取捨選択した上で、残されたものをとことん有効活用することに決めた。その1つが、彼女が尊敬の念を示した数少ない人間がかつて愚かな輩を懸命に纏め上げていた場所、様々な物事を報告したり相談し合ったりする『会議場』である。ただし――。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「それじゃ、夜の会議始めちゃおうか♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」はーい♪」…
――内部の空間は端が見えないほどにまで膨れ上がり、席という席はぎっしりと何億何兆何京、何十何百桁にも及ぶ純白のビキニ衣装の美女の肩と肩、胸と背中が触れ合うほどにまで覆い尽くされてしまっていたが。
世界を完全なる平和に照らした直後、レインたちの中にはほんの僅かながらこの会議場を残すことに意味はあるのか、という疑問が一斉に湧いていた。確かにこれまでも彼女たちは人間たちから頂いたこの場所を、かつての人間と同じように様々な内容――世界を平和にした後どのように動かすか、そこに至るまで人間や『魔王』とどう対峙するか――を互いに声を出しながら話し合い続けていた。
しかし、それらの議題がすべて解決してしまった以上、もしかしたら必要ないのではないか、と考えてしまったのである。しかし、彼女たちはすぐさまその僅かな疑問は間違いであることに気が付くことができた。世界を完全なる平和にして以降も、いやそれ故だろうか、予想以上にレインたちの中にたくさんの議題が湧き上がってきたのである。明日の朝食のメニューをどうするかという些細な事柄から鍛錬の内容についての少し重要な話し合いなど、心や記憶を共有するだけで伝わるであろう内容を敢えて言葉という形で出し合うのは、レイン・シュドーにとっての素晴らしい快楽である事を、彼女たちは美しさとかわいらしさを持つ自分の声が響き渡り続けるこの空間で改めて感じることができたのである。
そして、『風呂』という名の暖かな液体と自分の裸体が敷き詰められた空間の中で一部のレインたちが開くことを思いついたその時の会議の中身は――。
「「「「「「「「「「「「「「……で、時間を破壊する方法なんだけど……」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「……なんかこう、曖昧だけどまた浮かんできたのよね、レイン」」」」」」」」」」」」」
――現在のレインたちにとって最も重要な内容、過去から未来へ常に同じ方向に流れ続け、自分たちの力をもってしても抗えない『時間』という概念をレイン・シュドーの手で壊す方法、というものだった。
既にレインは、その答えの一歩手前にまではたどり着いていた。自らの体の一部とも言える無名の剣と、『レイン・シュドー』と言う存在を残してすべての時間を一時的に停止させる無限の彩色を秘めたオーラを重ね合わせる事で、自分自身の体に『時間』の流れというものが感じるほどにまで至っていたのである。そしてその流れを切り裂き、流れと完全に断絶した異空間を生み出す事も、少し前の鍛錬で達成できていた。だが、最後にして最大の目標は、この世界の時間そのものをレイン・シュドーという平和の象徴が支配するというもの。そのために必要なものは何か――レインたちは無数に存在する自分自身の心を駆使し、様々な考えを巡らせてきたのである。
そしてその日、暖かな快楽に包まれた『風呂』がある空間の1つで、レインたちはまた新たな考えを浮かび上がらせた。
「「「「「今までは時間の重さが問題だって考えてきたのよね、レイン……」」」」」
「「「「「「「「「「そうなのよね、あの重さをどう和らげるか、みたいに……」」」」」」」」」
しかし、単に漆黒のオーラの力を使って時間の途轍もない重さを軽減しようとしても、結局は『無数』のレイン・シュドー自身だけが重さを感じなくなっただけで、『時間』の本質を変えるまでには至らないという結果に終わってしまった。そこでレインは発想を変え、虹色のオーラに包まれた剣の操り方を変えてみる事を思いついたのである。
これまでは、重さに耐え切れないあまり剣そのものを振り下ろし、時間を拭い去るかの如く切り裂いてしまっていた。ならば、時間そのものの息の根を止めるかのように、真正面から突き刺すというのはどうか――言葉を交わしながら続く会議の中で、レインたちの心には様々な発想が現れ始めていた。それも、その場にいる別の自分も納得しそうな考えが。現にあの恐ろしい魔物軍師ゴンノーも、レインの剣によって体が貫かれた事が敗北の決定打となった。それならば自信を脅かす最後の壁である『時間』という存在も、同じようにすれば倒せるのではないか、とレインたちは一斉に思い始めたのである。
これならいける、そのような確信を持ち始めた彼女たちであったが、その一角から湧き上がった新たな疑問は一瞬で何百桁ものビキニ衣装の美女全員に波及した。確かに斬るのではなく『突き刺す』方法自体は良いかもしれないが、どれほどの間あの途轍もなく重い『時間』を受け止めればよいのか、レイン自身は現在の状態で耐えることができるのか、それについての答えが見いだせていなかったのである。もしこのまま実行していれば失敗間違いなしだったかもしれない、とレインたちは熱に舞い上がりかけていた自分たちの心を反省しつつ、その問題を解決すべく互いに悩み合った。
「「「「「「「「……『時間』を相手にするには……」」」」」」」」
「「「「「「「「単に数を増やしてジタバタするだけじゃ……」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「どうにもならないよね……」」」」」」」」」」」」
これまで、レインは普段の鍛錬をそのまま活かすかのように、闘技場一面に大増殖した自分自身の数の力を駆使し、一斉に『時間』の重みに挑もうとしていた。その時は剣とオーラを駆使して編み出した『技』を使って時間を破壊すると言うことを優先していたせいではっきりと意識はしていなかったが、レインはその方法では対処できないと言う事を少しづつ自覚し始めていた。増えたところで、その無数にいる自分全員が全く同じ重みを受けてしまい、それに耐えきれず目の前にのしかかる時間を切り裂く形で鍛錬を終わらせてしまうのがオチだった。
そうなれば、自分たちの為すべき事、迫りくる時間に対抗できる手段は1つに絞られてくるのではないか――言葉を交わしあううち、レインたち全員の心に少しづつ案が纏まり始めた。数の力でどうにもならないのなら、その方法を放棄し、敢えて『1人』に戻る方が良い、と。今から何万日も昔、あの強大な力を持つ魔王を倒すべく挑んだ時のように。
しかし、単に1人に戻るだけでもやはり『時間』の重さに対抗できないかもしれない。延々と付き纏うこの厄介な問題をどうやって解決するか、またもレインたちが悩みの中に埋もれてしまった時――。
「「「「「「「「「「「はぁ……あぁん!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
――彼女たちは、またも増えた。どこまでも続く悩みから気分を転換するかのように、彼女は自分の快楽を得るかのように両隣に自分たちと同一のビキニ衣装の美女を増殖させたのである。何倍にも膨れ上がったレイン・シュドーの大群で、元から詰めて座るほどにぎゅう詰めだった闘技場は同じ姿形の美女で覆いつくされ、各地の席からもその半裸の体が溢れかえるほどになってしまった。
「「「「「「「もう、レインったら……♪」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「貴方だってレインじゃないの……あぁん♪」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「でもこの狭さもたまらないわね……♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「本当よね、レイン……あぁぁん、気持ちいい……♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
会議の途中とはいえ、折角四方八方に広がる自分と全く同じ美しい肉体を味わう機会を作ってしまったのだから、この会場の面積を広げるまでもう少しこの快楽を味わいたい、四方八方から感じる自分自身の『重み』を感じていたい――一斉に同じ思いを浮かべた、まさにその時だった。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「……!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
レインたちの心に、今度こそ確実に、時間の重みに対抗できるであろう素晴らしい考えが現れたのである。どれだけ時間側の力があるのか、正確なところまではわからなかったが、1つだけ確かなのはあっという間に押しつぶされてしまうほどの圧倒的なものではなく、レイン・シュドー1人だけでも少しは耐えることができる程度の重さしか持ち合わせていない、と言う事。ならば、レイン自身がより自身の重さ――もっと正確に言えば、自分自身の体の密度を増やすことが出来たとしたら、どうなるだろうか。
無数に増えた状態でも可能かもしれないが、念には念を入れたい、と考えた彼女たちは、言葉に発さずすぐに自分たちの思いを心を通しての会話で共有しあったのち、無限に広がり続ける世界のあらゆる場所にいる別の自分へと急いでこの情報を送信した。この計画を実行させるには、世界にいるすべてのレイン・シュドーの協力が必要不可欠だったからである。
勿論、全員が全く同じ考え、同じ思考判断、そして同じ未来を夢見ている純白のビキニ衣装の美女たちの中に、その意見に反対する者は誰一人としていなかった。しかし、断固その意見を受け入れないという愚かな言葉ではなかったものの、念のためにその『アイデア』を実際に試した方が良いのではないかと言う意見が会議場とは別の場所から飛んできた。
「「「「「「「「「「「……それもそうよね、心の中で考えるだけじゃ……」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「……どうにもならないもんね♪」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「ありがとう、レイン♪」」」」」」」」」」
どういたしまして、と言う嬉しそうな声が心に響いたのを確認した後、世界中の自分との繋がりをそのままに保ちながら、会議場全体を折り重なるように埋め尽くすレインたちは早速先程のアイデアをこの場で実行する事にした。単に1人という存在に戻るのではなく、何兆何京単位と言う自分たちの『存在』をそのまま維持した上で――。
「「「「「「「「「「「「「「「「……!!」
――『レイン・シュドー』と言う1つの肉体に戻る、と言う方法を……。
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