女勇者、生産

「お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」お疲れ、レイン!」……


 今日も鍛錬を終えたレインたちが、次々に地下に広がる巨大な空間に集まって来た。

 右側の穴から延々と列を成してやって来たのは、『剣術』の鍛錬を終えた3000人のレイン。通路を埋め尽くしながら、汗で覆われた全身の肌をぬぐいながら、全員とも笑顔でやって来ていた。自分の得意分野を、今日もさらに延ばすことが出来たからだ。

 左側の通路からは、新たに彼女が学び続けている『魔術』の鍛錬を終えた3000人のレインがぞろぞろとやってきていた。ビキニに包まれた胸を大きく揺らしながら、こちらも今日の成果を互いに祝う一方、まだまだ未熟だった部分を互いに述べ合い反省していた。


 合計6000人、純白のビキニ衣装の美女の大群がこの場所に集まった理由は、今日の疲れをたっぷりと癒すためである。



「うふふ、レイン、また肌のつやが良くなったね♪」「そっちもよ、レイン♪」「やっぱり毎日頑張ってるからねー」

「うんうん♪」「毎日続けるって、大事だよねー」「ほんとほんと♪」



 次々に身につけていたビキニ衣装を脱ぎ、彼女たちは生まれたばかりの素肌を晒し続けていた。その結果、あっという間にこの巨大空間――脱衣所は、6000もの健康的な肉体に覆われてしまった。そして、一斉に彼女たちは、脱衣所の向こうにある巨大な浴場を目指した。



「あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あははは♪」うふふふふ♪」あははは♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あははは♪」うふふふふ♪」あははは♪」あはは♪」うふふ♪」あははは♪」うふふふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あははは♪」うふふふふ♪」うふふふふ♪」あははは♪」うふふふふ♪」あははは♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あははは♪」うふふふふ♪」あははは♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」……



 凄まじいほどの湯気に包まれた空間の中は、気持ち良さそうに声を上げる6000人もの女性に埋め尽くされていた。自分同士で体を流し合ったり、他の自分と肌を触れ合ったり――今日もいつものように、風呂場はレイン・シュドーの肉の海と化していた。


 大量の自分とたっぷり戯れ、心地よい微笑みに癒された彼女たちは、風呂から上がると一斉に新しい純白のビキニ衣装を身に着け始めた。ずっと前はいつも新品の服、と言ってもいわゆるビキニアーマーのようなものだが、それを魔王に用意してもらってばかりであった。だが、今や風呂から上がるとすぐに、自らの魔術を利用して新しい衣装を一瞬で創造する事が可能になっていたのである。

 風呂場でたっぷりと洗い流した汗は、レインが確実に目標に向けて近づいていると言う証拠であった。愚かな人間たちを救い、勇者である自分が世界に真の平和をもたらす、と言う。


~~~~~~~~~~


 今までのレインは、このまますぐに夕食を食べ、魔王の力によって今日の記憶を統一するという流れであった。しかし数日前から、これらの予定の前にもう1つ重要な、そしてとても楽しみな作業が加わっていた。 


「ふふふ♪」ワクワクしちゃう♪」ほんとほんと♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」……


 楽しさで足を弾ませ、白いビキニ衣装に包まれた胸を揺らしながら6000人のレインが向かう先には、先程までいた脱衣所や風呂場の何十、いや何百倍もありそうな巨大な空間と、その天井を覆い隠すように聳え立つ巨大な樹木『レイン・ツリー』が待っていた。

 今日もその巨大な枝の一部が垂れ下がり、そこにはレインの背丈にも及ぶ巨大な実が1000個も実っていた。


「お、今日も大きくなってる♪」「1日でこんなになるんだ♪」「さすが魔王の力ね……」


 彼女たちが眺める巨大な果実の中には、今日も新しいレイン・シュドーが静かに眠りについていた。1000個の実の中で眠り、目覚めのときを待っているレインたちは、全員とも外のレイン・シュドーと全く同じ格好――ポニーテールの長髪に健康的な肌、白い靴下に茶色の靴、そして純白のビキニ衣装であった。


 この巨大な樹木、通称『レイン・ツリー』は、元々は世界を我がものにするための段階の1つとして魔王が用意していたものであったと言う。魔物が討ち取った勇者の記憶や能力を利用して、手下となる複製の勇者たちを大量生産するという計画だったようだ。目的は少々違ってしまったが、実質的にその計画は実行に移される事になった――と言うのが魔王の伝えた言葉であった。だが、それが真実かどうかはまだ無表情の仮面の下に隠され、レインたちには分からずじまいだった。

 とは言え、1つだけ確かな事は、この『レイン・ツリー』の実から生まれたレイン・シュドーは、全員とも元のレインの間に一切の区別ない、れっきとした本物であると言う事である。


 そんな訳で今日も早速、数十人のレインが一斉に木の幹に触れ、昨晩の夕食から今日の入浴までの記憶やそこで学んだ能力を『レイン・ツリー』にたっぷりと流し込んだ。本来は1人で行っても良いのだが、考える事は全て一緒という事もあってか、毎回たくさんのレインが一斉に行うようになっていた。



 そして、それをワクワクしながら眺める残りの数千人のレインにも、ここを訪れた理由があった。


 記憶が流し込まれるや否や、レインが眠っていた『実』に変化が起き始めた。内部を満たしていた液体が消え、中のレインが立ち上がり、皮が破れ始め、そして――。



「うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」……


 ――次々に実の中から目覚めた新しい1000人のレインは、一斉に6000人のレインの元に向けて駆け出していった。新しい自分が誕生した事の喜びを、レイン・シュドー全員で味わいたかったからである。

 風呂場に続いて、再びレインの肉の海がこの場所でも形成されていった。



 一方、その横で、とても重い実を払いのける事ができた『レイン・ツリー』の枝が、少しづつもとの天井近くの位置へと戻り始めていた。だが、その一方で天井に届きそうなほど生い茂っていた枝には、新たな『実』が形成され始めた。見る間にそれは大きくなり、その重みで新しい枝が地上に向けて垂れ下がり始めたのである。

 そう、この巨大な『実』こそが、翌日に目覚める事になるレイン・シュドーが創り出される場所である。明日になれば再びこの場所を7000人のレインが訪れ、記憶を注入し、丁度1000個ある巨大な『実』から1000人のレインを誕生させることになるのだ。その次の日も、また次の日も。



 レイン・シュドーは、毎日のようにその数を増やし続けていた。


「うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」……


~~~~~~~~~~


 純白のビキニ衣装の女性の大群が消え、静けさを取り戻した『レイン・ツリー』の傍に、黒尽くめの服に包まれた仮面の存在――魔王が姿を現した。



「……ほう、これならば……」


 地面に横たわる『実』の跡を眺めながら、魔王は静かに呟いた。


 あと数日で、レイン・シュドーの総数は10000人を超える。魔王が様々な無生物を操り、仮初の命を与えて生み出した大量の魔物も、かつてそれくらいの数に達した事がある。だが、今のレインは、数以上の凄まじい能力を有する、最強の存在だ。しかも全員とも、長い鍛錬の中であらゆる状況に応じて、魔術や剣術を使い分けるだけの力を有する――まさに魔王にとっては、最高かつ最強の戦力であった。



 だが、それでも魔王には、するべき準備があった。最強の存在だからこそ、まだまだ手間隙をかける必要があったのかもしれない。


「……さて……」


 そう言いながら、『魔王』は『レイン・ツリー』の巨木に、大きな傷を付けた。まるで硬い剣を一思いに刺したのような大きな傷からは、幹を流れて枝に行き着くはずの白い液体がどんどん流出し始めた。すると、魔王はその液体を、右手に取り出した小さく透明な容器の中に注ぎいれた。すると、内部に入った液体はまるで水が凍りつくように固まり始め、やがて大きな亀裂と共に大量の破片に分かれていった。


 最終的に容器の中に残ったのは、何十何百もの白く小さな丸い塊であった。



「……ふん」


 どこか嬉しそうな声を出すと、魔王は『レイン・ツリー』の傷を塞ぎ、元の状態に戻した。そして静かに呟いた。これが、最終段階である、と。これさえ成功すれば、レイン・シュドーは完全に全ての力を身につけることになり、そして自らの計画も実行に移される、とも。

 この場を去る前に、魔王はもう一度、巨大な地下空間に聳え立つ巨木を見上げた。瑞々しく生い茂り、偽りの太陽の光をたっぷりと浴びる緑の葉は、不気味なほどに美しかった。それはまるで、何百何千、やがて何万何億何兆と増える事になるであろう、純白のビキニ衣装に身を包んだ女勇者『レイン・シュドー』の持つ、異様なほどの美しさそのものだった……。

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