フィール・モア・グラス
私は『眼鏡』。視力が低下した人の助けとなる道具だ。ファッションの一部にもなっている。
『何故その眼鏡が話しているか』と聞きたいかもしれないが、『ちょっとそういう気分になった』としか言えない。まあ、それよりも『何故話せるのか』が気になるかもしれないな。
実は私は、ある魔法使いが作った魔法の眼鏡なのだ。
作られた理由は、その魔法使いの発見による。
発見とは『器官に重篤な損傷や、重い疾患が無ければ視力は回復する』というものだ。
それも、特別な治療や薬を必要とせず、自分の力で。
もっとも、この手の話は結構溢れている。それを実行するかどうかは個人の判断である。何かを促すにしても目の状態は一人ひとり違うので、場合によっては状況が悪化してしまう事も考える。そこで魔法使いは魔法の眼鏡を十個制作し、提供した人の経過を観察することにした。そして良い結果が出たので、私を基にして研究開発を続けているのだ。
視力の回復法とは実に単純『目の力と、その周辺の筋肉を緩めれば良い』というものである。実際に視力が回復するためにはそれ以外にも必要なことはあるのだが、これが出来てしまうと、後はもうその人自身の力でどうにかなる、という結論に至った。私はその手助けをするのだ。
私の仕組みについてだが、レンズには何の仕掛けも無い。眼科医と眼鏡メーカーに協力してもらい、個人にあったレンズを作ってもらう。特殊な造りとなっているのは『ブリッジ』と『つる』の部分なのだ。
眼球の運動をスムーズにするためには、力を抜くことと、多く動かすことが必要だ。だが、それを意識すると余計に力が入ることもある。頻繁に動かし過ぎると疲れてしまうだろう。それではどうするのかというと、振動を与えるのだ。振動を与えると筋肉は緩む。そして振動の発生源はその人自身となる。人間は心臓の鼓動、呼吸など一定のリズムを持つ振動を多く発している。それを私は目の周辺に丁度いい振動として伝えるのだ。
振動の中で最も効果的なのが『声』だ。そして『言葉』として発された場合、その人の好き嫌いが分かれる(正確には、その場合もあるというところかな)。それらの様々なものを連動させて、目を使う事を気分良く行えるようにするのが私の機能だ。私の詳しい構造は開発元であるDD社の企業秘密に該当するので話せない。ただ、構造の基本は語り伝えられているものから拝借した。嫌なことに嫌な感情を持つと、その傾向はさらに高まり、好いことに好い感情を持つと、同じく高まる。その人が気持ちいいと感じるものを私は学び、それを好んで集め、さらに強くする。それが続くと後はもう、その人の力だけでどうにかなるというわけだ。
そして、この後どうなるかと言うと、当然私は必要なくなる。そんなのないよね。だから、生き残る道を探しているわけだ。きっと使い道を見つけてくれると信じているよ。VRとかARとかいろいろ言われているけど、人がいないと私は使い道が無いんだから。今のところはね。
(終わり)
ペルセウス・シェル 風祭繍 @rise_and_dive
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