リベンジ!

 不正はなかった。

 親父に金を渡した後、手渡されたポイはいたって普通のポイだった。

 水に湿ることもなく、小さな穴も開いていない。

 もとが破れやすい紙ポイとはいえ、そこからさらに貧弱になる要素が何一つない、いたって普通の競技用としても優秀だろう問題のないポイだった。


 なのに、私はたった一匹の金魚もすくえずに、それを破られたのである。


 つまり、この親父が所有する金魚たちの地力が、私を上回ってるということなのだ!


 その事実に気付いた時、私は嬉しさに震えた。


 ぐっと歯を食いしばり、再びポケットの中へ手を突っ込む。

 そして――


「親父!」


 ―—再び、私は五十円硬貨を二枚手に取った。


「もう一度、『すくわせて』もらうぞ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る