真剣勝負!

 再びポイを握り、私は水槽の前に腰を下ろした。

 新たに手渡されたポイを握り、すくった金魚を入れるためのボールに水を張る。

 そして、先程逃がした小赤に、狙いを定めた。


 ポイを構え、私のテリトリーすくえる範囲に彼奴が入ってくるのを静かに待つ。


 祭りの喧騒の中、今私に聞えるのは細い自らの呼吸音。

 そして、金魚が泳ぐ水の揺らめきだけだ。


 そして、機会は巡って来た!


 私のテリトリーに彼奴が入る!

 しかも、水面すれすれを泳ぎ、背びれが水上に顔を出す程浅い場所を泳いでいた!


 この好機を逃さない私ではない!

 私は素早く斜めに水を切るようにポイを入水させた。

 直後、さっ! と、手首を返す。

 水を押し切る感触がポイ越しに伝わり、次の瞬間、金魚の重みを確かに腕が感じ取った!


―― 獲った! ――


 そう確信し、私は天高くポイをすくい上げ、ボールへと『中身』を移したのである。

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