第3話 異世界生活の始まりはやっぱりこうでなくっちゃ(偏見)

目が覚めて、一番最初違和感を感じたのは使い古された台詞の物第1話冒頭参照ではなく、

又、暴虐の極み乙女第2話末尾参照でもなく

ズボンのバックポケットだった。

さっきから何か硬い物の角が食い込んでいて痛い。

「っ、何だこれ?」

頑張って人間2人分の重みに耐えつつ、俺は右手でバックポケットから硬い物を取り出した。

何だ、スマホか。

つい手慣れた操作でロックを解除したら、

バッテリー残量が95%だった。

「あれ?昨日の放課後には38%だったのに…。」

もしかして、雷雲ストーカーにうたれた際に、充電が出来たのだろうか?普通ならぶっ壊れる所なのに………ラッキーだな。

「あっ、今後充電できるかもわかんないし…。」

電源は切っておこう。


さて、電源は切ったし、初瀬は起きないし、どうしようかね。



………………仕方ない。何か考えておくか。

うーん。あ、そもそもこの世界異世界に来たんだし、ありきたりな所から確認しようか。

「ステータスオープン」

さぁ、開けっ!俺のポテンシャル!!


…………………………………………………………………………………………………………


え?

じゃあ、もう一度。

「ステータスオープンっ!!」

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

結果は変わらなかった。


「ウィンドウ オープン!」

これも開かない。

「プロパティ オープン。」

開かない。

性能諸元、開けSpecification Open。」

開かない。

厨二っぽくしたんだけどな、右寄りに。

出でよ 俺の未来オープン マイ ポテンシャル!!」

開かない。

テンプレを攻めても、厨二を攻めても駄目か……。

そういうのがない世界なのかもしれないし……今の所は諦めようかな。

「あれ?」

いきなり目の前に1枚の紙が落ちて来た。ん?何か書いてある。なになに?



『抜け駆けは駄目だよ‼ (><)(>o<") 主神ユーピテル』


…神様が何か顔文字使ってる。シュールだ。しかも日本語で漢字迄使ってる。何で日本語がわかるんだろ?


と、そこに………………

「………………うるさいわね…。」

あ、起きた、乙女(笑)が。

「又、私に関して馬鹿にしたわね。」

………………。さぁ、何の事やら。

「あんたがいっつも白々しい惚け方をするということはほっておいて、ついに始まるのね。」

いきなりシリアスな雰囲気を醸し出しおった。でも、言わんとする事は正しい。

「あぁ、そうだな。」

だから、俺は真摯に答える。こいつは泣こうが喜ぼうが腐れ縁だ。嫌でも思考が似てくるから、俺もなんとなく考えている事がわかる。それゆえ、言葉を続ける、言いたそうな事を。

「俺達が夢にまで見た異世界生活をな。来たんなら夢通り頂点を極めようぜ。」

決まった。超決まった。ありがとう初瀬。

「阿保、それ以前の問題よ。」

こら、○東系の方々に言わない方が良い言葉をそうもやすやすと…。

で、何だ?問題とは?

「何もわからないって顔してんじゃありません‼まず私達が生き延びれるかどうか、でしょう⁉」

お前は俺の母親かっ⁉

というツッコミを飲み込みつつ、初瀬が言った事を吟味する。

「生き延びれるかどうか、か…………。まぁ、何とかなるんじゃね?」

「そういう楽観論が思い付くのが羨ましいわね。だいたい、千歳は戦艦を量産すれば安全、みたいな考えしかなかったでしょう?どうも、こっちの世界には船の文化が遅れてるみたいだから、この時点で計画が破綻してるわよ。それに、私達は勇者である事から少人数のパーティーで最前線に送られるのは確定だし、その中でも特に魔王を打倒するのが主任務である以上、生還できる確率はどんどん低くなるわよ⁉どうするつもりなのかしら?」

こんな風にきちんと考えてくれてたんだな。

ありがたい。

「でもさ、どれだけ俺達を利用するつもりかは知らないけど、そう簡単にはくたばらない様にする為の指導を付けてくれるんでしょ?そこまで悲観的にならなくても良いんじゃないかな。すぐに最前線へ行く訳じゃないから大丈夫だよ。それに大勢いたとしても………例えば国の軍を付けてくれたとしても、言う事を聞いてくれるかわかんないし、だいたいこっちが逆に足手纏いになっちゃうから少人数で良いじゃない。この二人では手一杯って言うなら後で信頼できる仲間を増やそうよ。ね?」


確かにあんまり考えていなかったけど、考えはある。でも、これで初瀬が納得してくれるかはわからん。

「それも一理あるけど……………もう良いわ、現状維持で行きましょうよ。この議論は堂々巡りをするだけよ。」

「わかった。」

どうやら理解は示してくれた様だ。

「おはようございます、御屋形様方。朝の食事のご用意が整いました。」

入って来たのはミレーナさんマゾヒスト。にしても、ご主人様ではなく、旦那様でもなく、御屋形様とはな。古風過ぎて逆にクルものが無いわ。ご主人様なら良いのに。でも朝ごはんか……。食べたい。

「行こうか、初瀬」

「えぇ、そうね。」

そうして行った大食堂には、

ポトフの様に具沢山なスープが配膳されていた。

「ミレーナさん、今朝の献立は何ですか?」

「はい、本日の朝食はパリャニーリと申します。」

「へぇ~。ありがとうございます。」

噛みそうな名前だね。

それよりとりあえず食べよう。冷めたら美味しくないし。

「いただきます。」

でも美味しいからあっという間に食べ終えてしまった。

「ミレーナさん、朝食にも習慣があるんですか?」

「はい。年中行事のある日は朝食がパリャニーリなのは昔からの決まりきった事ですね。なお、現在我が国では、月に一度全国民がパリャニーリが食べられると謳い、全ての城下で配給しております。」

なんと、かのナチス宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスみたいな事をしてるじゃないか。

「因みに裏の目的として、ぱ、パリャニーリ?…ですよね?、を食べる事で浮いた食費を国に寄付してもらおうとか考えてませんよね?」

「え?何故それを⁉」

「ドンピシャかよ!!」

まんまじゃねぇか。

「あ、因みに発案者は誰ですか?」

「確か……あ、ユーピテル様が陛下の夢枕にお立ちになられて目的から方法迄全部伝授して下さったそうです。」

犯人はやつユーピテル様とやらか…。

今そんな神様のあははは、と誤魔化す笑い声が聞こえて来た気がする。

ナチスをパクるとか………某オタク元首相じゃあるまいし……。

もう良いや。やぶ蛇だわこれ。

「では、ミレーナさん、今日の世界情勢とかは誰がして下さるんですか?」

「あ、私です。ではすぐなさいますか?」

「えぇ、お願いします。」

意外にも、暫く黙っていた初瀬が率先して答えた。どうも今は知識欲モードみたいだな。


とかいう俺もご多分に漏れず、そんな調子だ。

「では、早速ですが、説明に入らせていただきます。と、言いたいのですが、その前にお願いがあります。」

神妙な顔つきに変わるミレーナさん。

眼鏡があれば完璧なOLだ。インパクト的に。

「この説明の暁には、褒美として……腹パンを一発戴きとうございます‼初瀬様!!」

「はぁ⁉」

何で発言がいちいち武士みたいなんだ⁉

「昨日の鞭打ちが私の人生20年において至高の一時でした故!!思い出しただけでも…………ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ。」

駄目だわこいつ。開眼したばかりの弩Mが急にひどくなってる。

てか原因作ったのは初瀬だし、任せるぜ!!

「はぁ、まぁそうよね。……………………………………もうまぁ、終わったら考えておくわね。けど、説明の途中で追加のおねだりとかしたら、国王陛下に職務怠慢って言いつけるわよ?良いわね?」

「はいっ!御屋形様!!」

すんなりと交渉成立。

早く説明に入ってほしい。

「では、我が国の地理から入ります。」

こう言って取り出された世界地図には、大まかには、2つの大陸に別れていた。1つは二等辺三角形の様な形。

もう片方は手裏剣の様な形だった。

「我が国、ユリウス王国はここに当たります。」

指の指す場所は二等辺三角形の大陸の左下だった。

「他にも、我が国以外に生き残っている国が13ヶ国程ありますが、我が国とはご覧の通り分断されておりますので、年に一度往復出来れば御の字…な状態です。」

ミレーナさんの言う通り、内陸部海岸部関係なく分断されているけど、あえて1つ言うなれば、どちらかと言うと左下に集まっている。

すると、ミレーナさんが指先を二等辺三角形の頂点へと移動させる。

「ここが、敵…通称魔王軍の本拠地のロバルンディア城です。」

「質問ですが、本拠地と断定した理由は何ですか?」

「30年前、ここを攻め、陥落させたからです。彼らはどうやってか、大きな水溜まりの向こうからやって来て、以後ここから兵を補充している模様です。これは放った密偵からの報告で裏付けが取れています。」

成る程。ということは…

「最終的に、ロバルンディア城の魔王を倒せば勝ち、と。」

「その通りです。」

「じゃあ、他国とこの国を分断している魔王の領土を連携して奪い返せば良いんじゃないんですか?」

「そうしたいのは山々なのですが、目下の所最大の抵抗勢力たる我が国ですらその作戦をする国力がありません。守るので精一杯です。ましてや、他の国では尚更です。」

「…」

何も言い返せない。

じゃあ、ちょっと違う所を聞いてみるか。

「話が少し変わるんですけど、この大陸に攻められた根本的な原因ってわかります?」

「いえ…。すみませんが、陛下ですらわかってません。」

「そうですか…。」

残念、手掛かり無しかぁ…。

「はい。では、我が国はこの大陸の中で生き残っている国の中で一番古い歴史を誇るのですが、その歩みを説明致します。」

ミレーナさんが歴史を語り始めた。

「我が国を建国したのは、今の第27代国王ヴィットリオ陛下のご先祖、初代国王アエネアス様です。我が国に伝わるのは建国の話からなので、その説明から入ります。今から…」

ミレーナさんによって要約された話でも10分はかかった。

様はこんな感じだ。

800年前、以前住んでいた土地を攻められた事から運良く逃げ延びた人達は、アエネアスをリーダーとして、主神ユーピテルの御宣托の下、これまたユーピテルから貸与された天箱てんそう団で新天地を求め、様々な場所を探し回った。そして790年前にここへ落ち着く事が出来た。で、その時から周囲の国々とより仲良くする為に折り合いを付けていたら、アエネアスに縁談の話が舞い込んだけど、縁談の相手と既に婚約していた王様がそれに反対。ここら辺の王様達をも巻き込んだ戦いに発展した上、婚約を持ちかけた王様迄立場上敵に回るけど、アエネアスが一騎討ちの末勝利。そして780年前、アエネアスは新しい都市ラウィニウムを築き、ここを王都とした。

以来、780年の歴史がこの国にはあるそうだ。

中国4000年とか日本の2600年(神話)、韓国の半万年(自称)とかには見劣りしてしまうけど、それでもすごいね。

あ、後聞きたい事が………。

「すみません。天箱てんそうって何ですか?」

さっきいきなり謎ワードが出てきたし。

「えっと、陛下が大きな桶と呼んでいた物と同じで、正しい名前がこれです。また本物を見る機会もあるでしょうし、詳しくは後日で宜しいでしょうか?」

「わかりました。」

いつでもある訳ではないっぽい。

「天箱って何処からかやって来る物何ですか?」

「はい。こちらの、我が国ではこの大陸以外唯一知られている大陸からやって来ているようです。」

さっきの手裏剣大陸がミレーナさんの指先にあった。って、今聞き逃し難い事聞いたぞ。

「大陸は2つだけではなくて、他にもあるんですか…?」

「はい。他にもいくつか存在すると言われていますが、わかってはいません。さらに、このもう1つの大陸も、形も位置も正しくありません。」

「……はぁ⁉」

どーゆーこと⁉

「これは少しばかり内密にお願いしたいのですが、天箱に乗ってやって来る商人に大昔場所と形を聞いただけで、確証はとれてないそうです。」

なんと‼ 驚きの新事実が明かされた。

「調べる術は無いのですか?」

「それは、さっき歴史の中にあったのを省かせていただいたのですが、天箱を真似て作った物はいくつもあったのですが、全部出発した後1つも帰って来なくて、それ以来天箱は作ってないんです。」

恐らく船と思われる天箱作る技術、つまり造船技術はあったが廃れてしまって久しい…と。じゃあ、疑問が新たに1つ湧いてくる。

何故商人は生きて航海と通商が出来ているのか。

それを聞いてみると、わからないという返事が帰ってきた。

何でだろうな。今後聞いてみよう。

と、ここで正午になった。時間の経過に気付かなかったぞ。

「では、お昼にしましょう、御屋形様方。」

うん、やっぱりこの呼ばれ方御屋形様方慣れんわ。うん。



お昼に出てきたのは、コース料理だった。

やべぇ、経験無いから食べ方間違っていたら怖いわー。作法をミレーナさんに聞こう。

「すみません。食事の作法を教えてください。」

「えぇ、お安い御用です。初瀬様は大丈夫ですか?」

「いえ、お願いします。」

こうして、ユリウス王国式の食事作法を習った俺達であった。

初瀬曰く、地球と変わらないらしい。

それにもっと驚いた。



さて、午後は───────────

「さて午後は、魔術について説明させていただきます。」

と、ミレーナさん。

やっと、異世界転移・転生の醍醐味の一つたる魔術についての話だな!

テンションめっちゃ上がるわ。

「魔術は、基本誰でも扱う事ができます。」

へぇ~。そいつはありがたい。

「ただ、一つ問題がありまして。」

ん?何だそれ?

「使う前に、主神ユーピテル様を始めとする、神々から祝福を受けなければなりません。」

マジか…。

「で、これを受けない限り、どんな人も扱う事が出来ません。」

どうりで使えなかった訳だ。

主神ユーピテル様の言わんとすることもわかったし。

「で、私達が今こうして会話が成立しているのは、御屋形様方が転移なさった直後に聖水を振り掛けたからで、本来はこのようなイヤリングを着けなければ出来ません。」

「じゃあ、何で最初からイヤリングを着けなかったのですか?」

「このイヤリングも魔道具の一種であり、零に等しいとは言え、魔力を消費するからです。魔力は、祝福を受けていなければ、使う事が出来ませんから。」

成る程、良くわかった。でもイヤリングかぁ…。ちょっとばかりハードルが高いね。聖水があるなら、それを使うに越したことないと思うけどな。

「今何時ですかね?」

いきなり話が飛ぶミレーナさん。意図がわからない。

「申し遅れましたけど、聖水によって会話を成立させる事には時間制限があって、24時間が限度なんです。また、聖水それ自体が洒落にならない程高いので、あんまり使ってられないんです。今14時ですよね。昨日14時半に御屋形様方を召喚し、その時点で聖水をかけているので、そろそろ効果が切れます。急ぎましょう。」


直後だった。今までスムーズだった会話にノイズが走り始める。

「サザッ、ではこちらのザッ会へついて来て下さいサザッ。」

多分教会と言っているのだろう。ノイズのせいでザッ会としか聞こえなかった。

俺達は急いで、大食堂の30m先の教会へと赴く。

そこには既に神父様(と呼んで良いのかな?)が詰めており、すぐに祝福の儀が出来る様、準備が整っていた。

「ようこザッ、お越ザッくださいザザザッ。サザッ速儀をザッじめます。」

段々ノイズが多くなる。急がねば。

「そサザッ、お座ザザザッさい。」

椅子に腰掛け、儀の終わりを待つ。

「この二名、ザザザザザザサッザザザザザッにおかれザッては─────────

────────

───────

──────

─────

────

───

──

ザ──────────────────」

どれだけの時間待ったろうか。

聖水による翻訳は最早ノイズでしかない。

そんな中、イヤリングが渡される。

着けろ、という事らしい。

着けると、いきなりノイズが消えた。

「どうですか?通じてますか?」

「はい、とても明瞭に聞こえます。」

ミレーナさんと、神父様の2人から同時に祝福の御言葉を頂いた。

「おめでとうございます。」

「ありがとうございます。」

偶然の産物ではあるが、初瀬とハモった。


「御屋形様方は、息ピッタリですね。余程ご縁が深いと見えます。」

「まぁ、腐っても幼なじみですからねぇ…。こんな千歳幼なじみを誰が欲しがるんでしょうかねぇ?私だから良いものの、デリカシー無さすぎて大変ですよ?」

しれっと初瀬が毒を吐いた。

何故こうも扱いが酷いのだろうか?

「幼なじみだからよ。」

再び思考が読まれてる俺。

そんなに顔に出てるかねぇ…。

「ほら、そんな所が息ピッタリと申しているんですよ。」

微笑む神父様。

この好好爺な神父様早くもお爺ちゃん感出てる。

こんな感じの人嫌いじゃないけど、むしろこんな雰囲気大好きだけど。

初瀬はどう思うだろうなぁ…。

「まぁ、この話題もここまでに留めておいて、本来の魔術に関しての説明を行いますよ?」

と、神父様。

よし、心して聞こう。

「この世界ラティヌスの魔術には6つの属性に別れております。その属性とは、火・水・土・風・光・闇です。これらは、火は水、土は風、光は闇を対としており、相殺が出来ます。最も例外として、ステータスを見る魔術は属性がなく、『ステータス オープン』と唱えると見る事が出来ます。」

ふむふむ。テンプレ通りだ。

「本当であれは、得手不得手な属性がありますが、ユーピテル様の御宣托によりますと、勇者たるあなた方は練習に偏りがない限り出来ないそうなので、明日以降はまんべんなく各属性を訓練させていただきます。」

今回は素直に感謝しよう。

ありがとう、ユーピテル様。

「最後になりますが、魔力の保有量は筋肉量と似ています。使えば使う程増加しますが、使わないと、私の様な老境になるとほぼなくなってしまいます。なので、くれぐれも日々の鍛練をお忘れ無き様、お願いします。」

へぇ~。じゃあ、毎日きちんと訓練しようっと。

「私からは以上です。

何か質問があればいつでもお聞きください。」


気が付くともう日暮れだ。

夕食はなんだろう。


大食堂に入ると、国王陛下が座っていた。

「おぉ、千歳に初瀬か。昨日言った件じゃ。」

MASOCHIST HUMANミレーナさんについてか。遠慮なく聞く事とする。

「まず、こちらが予想していたにもかかわらず、ミレーナを送った事は済まんのぅ。適任があいつしか居らんかったのじゃ。

それに、お主らもわかってる通り、ミレーナは最初の山を越えれば一番安心出来る相手になるじゃろう?じゃから、事後承諾の形となったとは言え、ミレーナを選んだのじゃ。」

「それに関しては納得致しました。では、質問させていただきますが、ミレーナさんがあの様な感じなのは元からですか?」

「おぉ、そうじゃ。ミレーナは元々貴族なんじゃが、あやつが7歳の時に、あやつの親が政争に負けてのぅ、一家離散したんじゃ。で、あやつは王宮へ逃げ込んで来てのぅ、かわいそうじゃったから、侍女としてワシが引き取ったのじゃ。じゃがな、知識とかは人並み以上にあるし、頭の回転も早いのじゃが、精神年齢がほぼ成長してなくてのぅ。単純な感情しか持って居らんのじゃ。そのせいか、仕えると決めた相手は一生裏切らぬ。例えば、ワシじゃと、感謝の念が理由と言っておったのぅ。じゃから、単純な感情を沢山与えれば、簡単に靡いてしまう、という訳じゃ。お主らは、ワシの助言通り、調教で快感を教え込んだじゃろう?」

そういう事だったのか…。納得だ。

「はい、いささか快感に依存する度合いが一晩で急に悪化し、あせりましたが、陛下のお話を聞くと、大丈夫な感じがしてきました。ありがとうございます。」

「おぉ、そうかそうか。なら良い。では、食事もやって来た様じゃし、賑やかに食べようぞ。」

食事中、陛下から聞かれたのは、今日何をしたかを始めとして、終いには異世界、つまり地球の話になっていた。

家族以外でこうして大人数で食べるのは中学生の修学旅行時以来だな。楽しい。

食事が軽かった事もあり、あっという間に平らげてしまった。

「では、時たまこうして食べようぞ。」

と、言いつつ国王陛下は退出していった。

「御屋形様方、これは私の体験談なのですが、祝福の儀を行った日は魔力操作の慣れが伴わないので、すぐに眠くなります。

早めに就寝なされる事をおすすめします。」

ミレーナさんが言っている通り、急に眠くなってきた。

「おっしゃる通り、早く寝ます。ファ~。」

「大あくびしながら、言うんじゃ無いわよ。」

初瀬が嗜めてくるけど、正直半分を聞き流しちゃってる…。


もう良いや。寝よう。

少し急いで自室へ戻ると、俺達は今朝と同じ状態で爆睡し始めた。


魔術が仕える体になった千歳は、寝顔に珍しく満面の笑みを顔に浮かべていた─────




─さて、明日以降は、剣技も出来ている………と言わんばかりに。


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