第2話 煌めく街の中へ

 サンシャインの麓に降り立った頃にはもう、暗くなっていた。

 秋から間もなく冬に近付く風が、ふっ、と背中を冷やす。


 その日、わたしと三田くんは、初めて手をつないで歩いた。

 煌めく街の光の中を。

 ビルの灯りのその真下を。

 青白く輝く月の光が注がれる。


「あ」


 人が交錯するサンシャイン60通り。

 一瞬、懐かしい姿を、わたしは見た気がした。


「ノネちゃん?」

「え?」


 手をほどき、わたしは速足でその姿を追い始める。

 半信半疑で三田くんも歩みを早める。


 三田くんもわたしも同じ目標物を捉える。

 顔は、はっきりとは見えない。

 きん、とした夜の空気とは矛盾した白いワンピース。ソフトな白い帽子。

 でも、素足で紐を通していない白のデッキシューズを履いて似合うこのセンスはノネちゃんでないとなかなかできないと思う。


 見失いそうになる。二人で追う。


 その女の子は、東急ハンズを少し過ぎたあたりで、すうっ、と人込みの中に紛れて行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る