まとめきれない衝動の墓場を打ち立てるということは。/ディストーティッド・サンクチュアリ。



同じ言葉の繰り返しでしか自分を表現できない僕らは

閉じた世界の中で代わり映えのしない世界に進捗の夢を見せる

なんて主語をちょっぴり大きくして安心したがるんだ

分かってるだろう

僕らじゃなくて、僕、だ


使える主語はいくつか

主要ストックの動詞は指折りで数えられるほど

ない名詞と形容詞を量産しては

通じない文章の間に読者の想像を期待する

ごみみたいな折り紙みたいなフラクタル

この世界


ああ何が正しいのだろうね

言葉って不自由だ

ぶつければぶつけるほど可能性を狭めるくせに

たまに羽ばたく翅の美しさはどこから湧いて来るのでしょう

僕の言葉はいつか輝けただろうか

そのうち輝くだろうか

わからないから紡ぐのか

違う、どっちかというとやめるほうが正解だろう




誰かが誰かに期待するのを

褒めそやすのを

騒ぎ立てるのを

外野から指をくわえて眺め尽くしては

慢心するわけでも

自棄になるわけでもなく

正当に努力を重ねようと頑張ってきたんだ

頑張っているんだ

でもそれは、自分を納得させるための嘘じゃないのか

思考は停止していないか

考えることをやめて、設定した自分に満足しているだけじゃないのか


羨ましいという感情も

悔しいという感情も

憎しみも

妬みも

全部うまく昇華すれば武器になるよなんて

一体誰がそんな無責任なことを広めたのだろうね

負の感情は捨てられない だから言い訳しているだけだ

そんなものでガソリンになるのなら

幸福のほうがずっといい燃料になるのは当たり前だと思わないか


君が高く舞い上がろうとするその最中さなか、僕は何をやっているのだろうね

声を出せば届くだろうって? 僕はとっくに喉を潰したよ

机の上に散らばった消しかすを頻繁に取り払っては

一番取り払いたい胸の靄に辟易して

昼間からまた布団に潜るんだ

そんな屑みたいな焼却済みな消し炭みたいなこの広場


内側を覗くんだ

外の光は、音は、硬さは、全部薄っぺらだ

あるいはそれを落とし込んだ言葉は、表現は、声は、主張は

まだ厚みを持てない そんなレベルにいない

若さか、老いか、青さか、達観か

そんなことを呟いている時点で

僕は理由をアウトソーシングしたがってるのかもね

だからといって本当の動機が自分の中にあるかといえば

そうともいえないんだ どうしたらいいのだろうね


ね、といったら手を叩いて、すっかり僕に同調しておくれよ

よ、といったらにこりと笑って僕を心底安らがせておくれよ

あ、といったらん、と返して僕をひとりにしないでおくれよ

力弱く広げた手のひらに空気しか乗らないのは

どうにも代わり映えしなくて心許ないだろう


認めて欲しいと叫んだ星は 願いを叶えて虹を渡る

泥まみれの存在証明に目を向けなかった凡人は 何にもなれずにうずくまる

歯車が噛み合った稀有な事例だけが 数億の蝋燭から選ばれて

こうして消え去った億千の命を横目に 仲良く煌々と光っている


全部うまく昇華すれば武器になるよなんて

一体誰がそんな無責任なことを広めたのだろうね

負の感情は消化すらできない 栄養にもならないのにどう高めるんだ

そんなものでエネルギーになるのなら

幸福のほうがずっといい燃料になるのは当たり前だと思わないか


君が高く舞い上がろうとするその最中、僕は何をやっているのだろうね

声を出せば届くだろうって? 僕はとっくに喉を潰したよ

机の上に散らばった消しかすを頻繁に取り払っては

一番取り払いたい胸の靄に辟易して

昼間からまた布団に潜るんだ

そんな屑みたいな焼却済みな消し炭みたいなこの広場

積み木の塔に体を隠し

百エーカーの土地でさめざめと

ひとりぼっちに泣く僕は

一体いつ 自分の足で立てるのだろうね?


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