07/22/11:30――朝霧芽衣・面倒な生き方

 運動後の風呂というのは、それなりに好きだと、改めて実感した。

 基本的にシャワーで過ごす時間が長かった私には、湯船に浸かることが面倒だとも感じていたのだけれど、それこそ大浴場のような大きな湯船に一人で浸かれば、なるほど、疲労が全身から抜けていくようだ。

 さすがに汗もかいたし、その上、血も流した私は、結果として千八百、加えて三十六本を凌いで、残りは鷺城の槍が私を捉えて停止、両手を上げて降参した次第だ。まったく情けない――とも思うけれど、おそらく、二千本の対処を完了させたくなかった、鷺城の配慮だろうと睨んでいる。

 脱衣所には新しい服があり、それを着る。私のスーツは見当たらなかったので無視して出ると、そこはエントランス。待っていたのは鷺城と、妙に緊張しているライザーだ。

「――この地味な服は鷺城のものか?」

「派手な服よりいいでしょ」

「胸元が若干余るのが気に入らないと言っているんだ」

「言ってなかったじゃん……」

「ライザー、どうした、元気がないぞ。いつものように大声で行軍歌でもどうだ?」

「い、や、だ。っていうかここ、楽園の屋敷ん中とか、私、初めてだし」

「初体験がまだの女じゃあるまいし、なにを言っているんだ。帰りまで我慢しろ運び屋。それとも外で一人、庭の片隅で膝を抱えて泣きたいのか?」

「こいつ……!」

「ガッツがあるなら私の戦闘に、自ら足を踏み込むくらいの気概を見せろ。――鷺城」

「上のテラスよ。こっち。スイも会話に混ざらなくていいから、傍観者でいなさい」

「うあーい」

 一度二階へ上がるのは鈴ノ宮と同じ。清音の執務室だった場所を訪ねれば、そこは大食堂になっているらしい。また、鈴ノ宮では行き止まりだった先が、二回にはある。ぐるりと回るよな楕円形の通路の先、やや昇るようにして作られたスロープに似た廊下の先、高さとしては三階に位置する場所が、庭を望めるテラスになっていた。

 そこにいる。

 ――白が、いた。

「やあ」

「ああ……」

 私だけが、足を前に。

 対峙して、ぞっとする。この白は、なんという白白しさだ。眩しすぎて目を細めるどころか、存在が異質すぎる。これが鷺城の師? 楽園の王、エルムレス・エリュシオン?

「ふむ。初めまして、朝霧芽衣だ」

「初めまして、エルムだ。一応、椿縷屡つばきるるという名もあるんだけれど、そちらはあまり使っていなくてね。エルムと呼んでくれ」

「そうさせてもらおうか」

 色があることが、かえってわからなくなるとは――とんでもないな。

「鷺花が世話になったね」

「それは勘違いだエルム殿。そこで鷺城ではなく、レインとガーネの名前を出したのならば、わざわざ否定はしなかったが」

「お互い様だと言いたいのかな?」

「いいや、貴君に世話になったのは、むしろ私の方かと思ってな」

「どうだろう? 瓢箪から駒なんて言葉があるように、一時しのぎでしかなかった僕の場に、君という不穏分子が紛れ込んだだけで、それを都合よく利用していただけかもしれない。君はそんな僕に、世話になったと頭を下げるのかな?」

 不穏分子、という表現がツボに入って笑いそうになったが、堪える。迂闊な対応をすれば――喰われるのは、私だ。

「ただ都合よく利用していた駒を、ここへ呼び出したのは貴君だと聞いているが?」

「気まぐれなんて言葉もあるさ」

「否定はしないのだな」

「それは君が先にしたものだよ。仮にそうだったとしても、僕ではなく鷺花でその役目は充分に達している。それが師として、弟子に向けた一つの評価だ」

「ならばどうして、私をここへ呼んだ?」

「まさか、君の戦闘をこの目で見たいがために呼んだわけじゃないよ。それもまた、鷺花に一言訊ねれば済むことだ。だからといって、理由を問うのがナンセンスだ、なんて考えられても困る。何故ならば、僕は僕の目的のために、今こうして、君と話しているのだから。そこはきっと、間違いじゃない」

「間違いではない?」

「では言い換えよう。僕は間違いなく、今ここで君と話している。この事実は君以外にも、運び屋の子と鷺花が証明しているものだ」

 ふむ。

「では、質問を受けよう」

「へえ、もう白旗かな?」

「戦いを挑んだ覚えも、降参した覚えも私にはないが、そう受け取られるのならば甘んじて受けよう」

 ここで、訊きたいことはない――ないし、もう終わったと、そう言われることは避けたはずだ。おそらく、先ほどの会話を途切れなく続けた場合、きっと最後には、そんな言葉を投げられる予感があった。

 話術はそれほど得意ではない。ないが、それでも、先を読むことはできる。少なくとも鷺城を相手に舌戦を繰り広げるよりは、よっぽど大変な相手だ。気は抜けないし、一方的に情報を引き抜かれる。更に言えば、引き抜いた情報の大半は、もう既に入手していたものという現実が、既に私の敗北を決定づけている。

 だから、舌戦の展開は避けた。判断としては、妥当なはずだ。

「なるほどね……うん、よし。僕からは頼みが一つ、そして問いが一つだ」

「聞こう」

「先に問おう。朝霧芽衣、君の目的はなんだ?」

「三つある。一つは四人のガキを、生かすことだ」

「聞いているよ。そして、個人的に評価を下せば、きっとそれは成功するだろうし、僕がそうであってように、誰かを育てることで自分も育つことになる」

「二つ目は、野雨を調べることだ」

「うん。それは僕の頼みにも関連するかもしれないから、あえてコメントは控えておこう」

「最後の一つは――アサギリファイルの始末、だ」

「始末なのかな」

「決着をつけたい、と言い換えてもいい」

「以上で、構わないのかな?」

「そうなるな」

「そうか、よくわかったよ。僕が望んだ返答をくれたようで何よりだ。つまり――話は以上だよ、朝霧芽衣。次があったらまた逢おう。鷺花」

「はいはい……」

 白色の服を翻し、ゆっくりしていくといい、と言い残したエルムは、そのまま廊下の先に消えた。

 私はまず、盛大に吐息を足元へ落とし、手近な椅子に深く腰を下ろすと、目頭に強く指を当てた。極度の疲労から目と、首が痛い。

「――鷺城」

「ん。スイも座りなさい。っと、アクア?」

「お疲れ様です皆様。今、紅茶を淹れますので、しばしお待ちください」

「ありがと。ほら、スイ」

「う、うあい……」

「――」

 顔を上げ、振り返ればアクアマリンを胸元につけた長身の侍女がいる。右にライザー、左に鷺城が座ったのを確認してから、私は口を開く。

「アクア、という名か」

「はい、ご挨拶が遅れました」

「それも、私の台詞だ。先ほどの戦闘中、場を整えていたのはアクアだな? 丁寧な配慮、感謝する」

「へえ……そこまで気付けたのね」

「屋敷と一体化していたから、気付いたのは戦闘でもあとの方だ」

「ありがとうございます。私としましても、ガーネの訓練に付き合っていただいたようで、感謝しています、朝霧様」

「ほかに相手もいるだろうに――とも、思ったがな」

 紅茶がそれぞれ並べられ、手にする。配置された椅子は庭が眺められるようになっており、個人用のテーブルが並んでいる、どこぞの大学の教室か、あるいは映画館の椅子に似た造りをしていた。つまり、私のよう庭で戦闘を見物する席としては、最適なわけだ。

「で?」

「ん。一つ目は好きにしていいってことよ。で、二つ目に関しては手を打ってある。芽衣がなにをしようと構わないけれど、結果として、至ることができないよう周囲が干渉するよう、既に仕組みが作られてる」

「なるほど? つまり、私という個人が、そこに至ってしまっては不具合がある――ないし、デメリットが生じるため、それを回避する手筈が既に打ってある。そういうことだな?」

「そうね」

「いつだ」

「いつから構築していたのか、という意味合いならば、芽衣が日本を去ってから、今までずっとその仕組みは作られてきていた」

「鷺城から見て、その仕組みがなかった場合、私は踏み越えているか?」

「そうならない現実がある以上、断言はしないけれど、可能性は高かった、という答えでは不満?」

「いや、それでいい。十数年の歳月を賭して作られた仕組みだ、壊す壊さないの選択肢そのものがナンセンスだろう。何故、その疑問は時間が解決するのだな。続けてくれ」

「ん。近く、芹沢は壊される」

「ほう」

 隣、ライザーが紅茶で咽ているが気にしない。

「深読みしたくなるような状況だが、詳しく突っ込んでいいのか、それは」

「ん? 魔術師協会や教皇庁の時ほど、大げさな作戦行動じゃないわよ。私も参加しないし」

「げほっ、げほっ!」

「お前ならやりそうだ、と思ったのは確かだが、こんなところで言質を貰いたいわけではなかったな。世界規模か?」

「本社、支社だけよ。生産工場は適当に企業に買収させて、資金還元させるかたち。もう芹沢には通達がいってるから、荷物をまとめてる最中でしょうね」

「なんだ、もう通達済みか。そんな気配はなかったが」

「あるほうが問題でしょ。全員生かして空中解散――言ってる意味は、わかるわよね?」

「ああ。そこから、アサギリファイルが必要になる。そういうことだろう――ん? なんだライザー、紅茶が逆流して涙目か?」

「べ、べつに、泣いてないよぅ……」

「貴様、泣き癖でもついてるんじゃ、ないだろうな」

「ん……私も、たまに移送の仕事を頼むけど、これだけ長時間一緒にいるのは初めてかしら。そのくらいよね」

「そぉだけど」

「そんなに泣かなくても、ここで得た情報を自分から洩らそうとしなければ、特に誰かが追及することもないわよ? 拷問もなし。――セツあたりは、どうだったのか聞くかもしれないけど」

「もぉヤだ……休暇中なのに、なんでこんな、トラブルばっか」

「失礼な。トラブルではないだろう、こんなもの」

「日常の切れ端よね。それにしても」

「――なんだ?」

「大剣の扱い方が雑」

「大きなお世話だ。貴様の真似をする私の内心を、どうやって教えてやろうか考え込みたくなる。嫌嫌やっている態度が見えなかったのか?」

「私はべつに、私と同様のことを芽衣には求めていないけれど」

「こっちから願い下げだクソッタレ」

「できないって言わないんだぁ」

 私が睨むと、ぎくりと躰を震わせた。

「な、なによぅ」

「できる、できないの問題ではない。やれと、それを望まれるのならば、私自身が変わるしかない。その結果が出てから、私はできないと口にするかもしれん。それは可能性の話だ。今の話ではない。やってもみないことを、できないと言う人間ほど未熟な馬鹿はいないというが?」

「うぬぅ……」

「どうした。謝るなら今のうちだが? 二、一、サーヴィスタイムは終了だ」

「はやっ!」

「それを言うなら、ガーネの方も扱いは苦手のようだが?」

「そりゃエミリオンの一番弟子だもの」

「――ふむ。であれば、最初から三番目を使ってやるべきだったな。アクア、ガーネにはすまんと、伝えておいてくれ」

「いえ、引出すだけの実力を持っていなかっただけかと」

「なかなか厳しいことを言うんだな。もっとも、戦闘は領分ではなさそうだったが」

「芽衣、一応聞いておくけど、ガーネに必要なのは、なに?」

「変化だ」

「説明」

「……まあいいが。創造系列の術式に傾倒するのは、この際問題にはならん。だが、作り手であるが故に、対応された際の反応が一定のものしか見られなかった。私はてっきり、一定パターンを見せておいての、途中からの変調かとも期待していたんだがな。もちろん、そのぶんをあれだけ多用な刃物の創造で補っているが」

「戦闘が本分じゃないからって?」

「その判断は私がするものではない。ただ、戦場で敵として出逢ったのが私ならば、どうなのかという話だろう? はは、戦場になど出るなと、教え込めば容易いか。いや、ガーネはよくやったとも。私も学ばせてもらった――が、制限つきとはいえ、レインのあの体たらくはどうなんだ。監視つき、足枷つきだからか?」

「どうかしら」

「なんだその気のない返事は」

「だって私は最初から、やめときなさいって言っておいたもの。ベルにも言ったのよ? そりゃレインがボーダーである以上、形式ってものがあるのは承知の上だったけど、私の術式を封殺するような芽衣を相手に、レインがまともな戦闘ができるなんて、誰だって思わないわよ」

「あれは術式の比重が高い上に、物理攻撃そのものも単調だ。術式を封殺して、あとは延延と回避に専念すればいい。ライザーでも軽く相手にできる」

「無茶言わないでよぅ」

「――ま、レインを壊そうとしなかっただけは、評価してるけど」

「ふむ」

「あ、そぉいや、ガーネさんと戦ってた時も、そーだったね」

「相手より勝っていることを示すのに、必ずしも打倒する必要はないのでな。訓練では、お互いに無傷であり、得るものがあったのならば、それに越したことはない」

 もっとも、相手が私を傷つけられるだけの実力を要していた場合は、違う展開になってしまうが。

「千本槍」

「ん? どうした」

「どうして分解しなかったわけ?」

「できることを前提で語られると、いささか反応に困るな」

「先に言質を取れっての?」

「やれやれ……そうだな、しなかった理由は、そういう訓練ではないからと、納得するつもりはないか? いずれにせよ、現物を前にしなくては分解から組み立ては不可能な物品だ。できることを証明して、いつでも組み立てられると、ライザーのような馬鹿に勘違いされても困る」

「ふうん」

「それに、千八百付近で止めたのは、鷺城の配慮だろう? できるのに、私を追い込まなかった事実は、受け止めたとも」

「分解をすれば充分に可能な攻撃だったはずよ。それを確かめる一手だもの」

「聞いたかライザー、これが水と油という間柄だ」

「知らないし。どっちも怖いもん……」

 指を突きつけ、顔だけを鷺城に向けるが、首を横に振られた。これ以上、ライザーはどうにもならんらしい。

「サーベル」

「ああ、顔見せがアフリカだったため、アフリカの牙とも呼ばれているな。それが?」

「日本の仕事、連中がやるって。槍の第二世代」

「ふむ。まあ私は関与せんとも、好きにすればいい」

「あ――思い出した。ちょっと芽衣、いいから聞きなさい」

「言われずとも、先ほどからずっと聞いている。なんだ?」

「兎仔は私やセツなんかも、たまに飲んでるんだけど」

 ちなみに、この場合は文字通り酒を飲む場合もあるが、一般的には付き合いがあって遊んでいる、という意味合いである。ただし、気をつけなくてはならないのが、遊んでいると称した場合、戦闘とイコールになるので、あまり使わないのだ。

「あの子を本気にさせられない?」

「ふむ。お前がさせたいのかどうかは、この際だ、後回しにしよう。できるか否かと問われれば、できると答える。ただしそれは、兎仔を戦闘で追い詰めた結果として、ではない。おそらく私が、やれと言えば、兎仔はやるだろう。しかしだ、私がそう口にするのは、ひどく限定された条件下になるだろう。だから私は、やらないと、そう答えるしかない」

「やれと言われないと駄目?」

「いや――そんな条件付けはない。もし私がそれを言う場面に遭遇したのならば、兎仔は先に理解してやっているはずだ」

「そう、ありがと。評価はしてるんだけどね、あの子も。とっとと踏み越えれば楽になるのにって、よくセツが言ってる」

「そのしわ寄せでラルに仕事が回されるわけか……」

「ラルは顔が広いからね、そこをうまく使ってやってんのよ。――アクア、おかわりちょーだい」

「はい、ただいま」

「ふむ。だいたい、主だった会話は終わったから、それほどの気遣いはいらんぞアクア。妙に嬉しそうにしているが、どうかしたのか?」

「そうですね、たまにしか戻られない鷺花様がいらっしゃると、やはり嬉しくあります。それに、本日は朝霧様のようなご友人と一緒ではありませんか」

「アクア、それは母親の気持ちだから、ちょっと気にしておいたほうがいいよ」

「あら、そうでしたか」

「忌憚のない意見を言い合える友人なのは確かだが――なるほど、言い合えるとなると、そう数はいないか。お前の場合、同業者では友人になれそうもない」

「うっさい。だいたいあんた、性格が悪いって自覚あるわけ?」

「サギが言うなぁ」

「……」

「ひいっ」

「余計なひと言だったな。ちなみに私の性格が悪いのは元からだ。軍部でよりひどくなったような気もするが」

 アクアが代わりの紅茶を持ってきたので、受け取る。大して味がわからないのが残念だ。美味い、とは思うのだけれど、なにがどうと表現できないのは、過酷な状況下で生きてきたからだろう。

「ふむ。むしろ――私としては、アクアの方が苦手な部類になるのだろうな。ああいや、性格や人となりではない。術式における戦闘での意味合いだ。私はどうも、そちら側に特化している節もある」

「節、じゃなくて、特化してんのよ、戦闘狂愛者ベルセルク

「おいおい、私をそんなカテゴリに入れないでくれ。――間違っていないと、一瞬でも思ってしまったではないか」

「これをお聞きしても良いのかどうかわからないのですが、鷺花様」

「ん? だいじょうぶ。いいよ」

「はい。朝霧様は私の魔術特性に心当たりがおありですか?」

「――ふむ。実は戦闘中から、いくつかの候補を上げていたのだがな。私も問おうか否か、やや迷っていたところだ。おそらく、と前置して言うが、〝形型クリート〟ではないか?」

「その、何故そう思われたのか、ご意見を聞かせていただいても、よろしいでしょうか」

「範囲に関係する特性、結界に傾倒する属性、それらを真っ先に思い浮かべたが、どうもしっくりこない。そこで私は感覚に委ねたのだが、意識されたのは区切りだ。領域を区切る――と、そこまで考えて、境界線がないことに気付いた。いや、ないのではない、元元あるものを使っているのだ、とな。そこで、存在の固定などという現象を引き起こす、より確固たるものとして定義する術式特性である〝形型〟が思い浮かんだ。屋敷の管理、庭の範囲、戦闘の領域、あるいはそれらを独立させるほどの術式ではないか――これが、私の推論だ」

「ありがとうございます。よく研究なされているのですね、その通りでございます」

「いや、以前に鷺城が使って私を追い込んだ結果だ。研究はあまりな」

「芽衣が休憩するために、全力で隠れるから、存在を固定させて逃げ場を封じたんだっけか」

「そうとも。あれのお蔭で二十時間、食料を口にするのすら手がかかった。つまり経験が左右したと、そういうべきなのだろう」

「あの頃は、そこそこ無茶してたものね」

「うむ。とはいえ――今なら思うが、やはりお目付け役がいないと、どうもその気にはなれんな。どうだ鷺城」

「同感」

 誰かに見てもらわないと不安なのではない。かといって、お目付け役を困らせたいわけでは――うむ、ないと断言はできないが、そういうことでもなく。

 自分の成長を、誰よりも先に見せたい相手がいなくなると、派手な無茶をしなくなるものだ。

 やれやれ、未だに学生の身でありながら、お互いに面倒な生き方をしているものである。


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