10/17/21:10――コンシス・哉瀬の柱

 ひどく濃い赤色の霧に酷似した何かが、哉瀬かなせ五六いずむを包み込んだ。いや霧ではない、けれど発光はしていない――それに、包まれていながらも五六を五六だと認識できるほどに視界を覆い隠してはいなかった。

「これは……!」

 ソファに清音と並んで腰を下ろし、対面にいるコンシスと話をしている最中での出来事に、それを予見できなかった五六はまず、弾けるようにしてソファを離れ背後に飛んだ。

 何が起きているのかがわからないのならば、他人から遠ざかるべきだ。

「へえ、魔力波動シグナルだ。強いな。しかも、五六から出ていると僕は見るね」

「――そう。いいわ五六、動かなくても構わない。それに、動けないでしょう?」

 振り返った清音は膝を床につけた五六を見る。

「お嬢様――」

 その清音の瞳は、碧色に染まっていた。


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