9 ステータスオープン

 管理者――のコードを確認。

 ただし、管理者――との一致率、0.0002%未満。

 実行可能命令のみ開示。


 脳裏にそんなメッセージが響いてきた。そして、


 ステータスオープン(一部開示不可)

 ステータスアラート設定

 マップオープン(一部表示不可エリアあり)

 タイマー設定

   ・

   ・

   ・


 幾つかのシステムコマンドが脳裏に表示された。

 ――って、まんまゲームな気がしてきた。

 そう言えば、リグラグの運営をゲームのステムを参考にしてるとかなんとか言っていたな。それに、変なことはするなとも。

 あれって絶対にこのことだよな?

 それこそ、ロロさんとの一致率がもっと高ければ、世界を弄ることも出来ただろうしさ。

 まぁ、この適合率で出来そうなのはステータスとかの閲覧ぐらいだ。ゲームで言えば、ゲームマスターではなくプレイヤー程度の情報を見るのがやっとのようだ。


「アクセスシステムコマンド、ステータスオープン」

 改めて命令を口にする。


 命令を確認。

 ステータスを開示します。なお、現適合率では一部情報は隠蔽されます。


 そんな補足と共に承諾された命令は実行に移された。


 名前 サツキ

 Lv 基礎1 旅人1

 職業 無職(職業Lv-)

 種族 人種(+0.0002%未満)/渡来人

 性別 女

 年齢 16


 種族にある+0.0002%ってのがロロさんの影響なんだろう。

 更に見ていけば、


 各種パラメーターは開示不可


 所謂、Str(力)とかAgi(素早さ)などの数値化された身体能力は見られないようだ。少しだけ期待していただけに残念だ。

 その代わり……


 身長 161

 体重 50

 股下 78

 BWH 84(69)/56/86


 髪色 淡萌黄色

 瞳色 深碧色

 肌色 白色

   ・

   ・

   ・

 健康状態 快調

 肉体状態 疲労(重度)

 精神状態 疲労(軽度)


 基本的なサイズ以外にも、身体自体の情報は事細かに記載されていた。たぶん、ロロさんが拘りを持ってキャラメイクしていた影響なんだと思う。

 更に見ていけば、スキルの項目があった。


 スキルツリー 殺気放出


 とあり、更に細かくその内容が記されていた。


 Lv1 殺気放出(強) 伝説級の殺気を放出する。


 その下にあった空白を指で突いてみると、『ネクストスキル』として次に習得できるスキルがポップアップ表示された。


 殺気放出Lv2 殺気放出(弱)

 習得条件 殺気放出(強)の熟練度を最大にする。


 弱がどれくらいなのかは解らないけど、弱くなるなら有り難い。それこそ、殺気ゼロがあるかも知れないしな。

 そこに淡い期待を見出すしかなさそうだ。

 でも、どれくらい掛かるのか皆目見当もつかないんだよな……


「あらあらあら、お姉様?」

「あっ、ちょっと考え込んでいた」

 呼ばれ顔を上げれば姫さんが覗き込んでいた。

「殺気放出(強)のスキルレベルを上げていけば、次は殺気放出(弱)を覚えられるみたいなんだ」

「あらあら、まぁまぁ、ではその次はゼロなんですわね」

 姫さんも俺と同じ予想をしていた。


「ただ、殺気放出のレベルを上げる手段が解らないんだよな。常時発動だから勝手に上がるとは思うんだけど」

「確かに、常時発動ですと修練を積んでも意味無いですわね。レベル上げに必要な規定の時間を過ごすしかないかと」

 やっぱ、そうなるか。

「規定の時間か……一週間とかで済んでくれると有り難いんだけど」

 正直、自分じゃ殺気を垂れ流しているつもりはないのでよく解らないし、日常生活に困るレベルだよな……達人級の殺気って。

 街道で遠くにあった馬車が避けていくレベルだ。町中で真っ当な生活が出来るとは思えない。


 一応、アラート設定でスキルに変動があれば解るようには出来るけど、後どれくらいでレベルが上がるとか解らないんだよな……

 こうなると、

「スキルレベルが上がるまで、人里離れた山にでも籠もるしかないのかな?」

「それが良いかも。サツキ殿が発する達人級の殺気ならば、大概の魔獣は近付いても来られないと思うしね。山に入らなければ大丈夫」

 カイルさんがそう言えば、

「あらあらあら、カイル君。そんなの承服しかねますわ」

 ズンズンと彼に迫ってくる姫さんがいた。

 その可愛い顔には愛らしい笑みが浮かんでいるんだけど、何故か恐い。


「だってお姉様は、これからずっとクローラと一緒にここで暮らしてもらうのですもの」

「え?」

 彼女の放ったそれは、寝耳に水な提案だった。

「ですが、姫様。このままサツキさんが居着いたら、鉄の髭亭には誰も来なくなりますよ?」

「あら? こんな店、別に流行らなくても誰も困りませんわ」

「いや、儂が困るんだが……」

 キッパリ言い切る姫さんに、疲れたようなツッコミを入れるドア老師だった。


「それより姫。お前さんのアレが使えるんじゃないか?」

「アレ……ですの?」

 ドア老師の言ってることが解っていないのか小首を傾げる姫さん。

「だからアレだ。以前お前さんが珍しくここで働くと、殊勝なことを言い出した時に作ったヤツ」

「あー、アレですの」

 やっとドア老師の言いたいことが解ったのか納得する姫さんなんだけど、どこか微妙な表情を浮かべていた。

 もっともそれも一瞬で、何故か俺を見てはにっこりと笑ってみせた。そんな悪戯っぽい笑みに晒され、微妙に嫌な予感がした。


 そしてその予感はすぐにでも現実の物に。

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