第38話 高校卒業して何が悪い!



「卒業生入場」


 ウチの学校の校長が号令をかけ、卒業生が入場する。まあ、俺もその卒業生なんだけどね。


「卒業生代表挨拶! ○○」

「はい!」


 現在、卒業式なのいだが、如何せん俺は学校に行ってなかったせいで、あんまりこの学校に思い入れが無い。だから卒業式が退屈でしょうがない。知り合いもいないし。


「以上。卒業生代表○○!」


 おっ、代表の挨拶が終わったな。まあ、知らん奴だけど。それにしてもクッソつまんねえな。バックれようかな。


「本山君。あくびするときは手で押さえて」

「あっ、はい。すんません」


 さっきからずっとあくびをしていたせいか、先生がこっちにまできて注意された。だって暇なんだもん。どうせ、親も来てないし、帰ろうかな。でも親父がな~。


「卒業式ぐらい出とけ」


 とか言ったからきたけど、正直つまらな杉謙信。周りには俺みたいなヤンキーと、どインキャしかいないし。俺、どっちも嫌いだし。


「卒業証書授与」


 あー、出ました。無駄に長い行事。これと来賓挨拶が1番嫌いなんだよな。訳わかんねえジジババのなっがい話をずっと聞いてるのが苦痛だし、他人の卒業証書受け取ってるとことか、俺なにしてればいいんだよって話。


「本山高明」


 あっ、俺の番か。


「はい」

「卒業おめでとう」

「ども」


 はいー。イベント終了! 俺のやることは終わった。あとは適当に過ごして卒業式を乗り過ごすか。




「これで第○回卒業証書授与式を閉じます」


 あー、やっと終わったー。もう1つのイベントもこれで終わりか。


「本山君」

「あっ、ども」


 話しかけてきたのは、俺がよくレポートを手伝ってもらっていた先生だった。


「卒業おめでとう」

「どうもっす」

「次は、東京で頑張ってね」

「まあ、無理が無いように頑張るっス」

「ははっ。君らしい」


 なに? 俺らしいって。もしかして、この学校でも俺の性格バレてんの?


「小説書くんだっけ?」

「一応そうっすね」

「楽しみにしてるよ。君が作家としてデビューする時を」

「さすがにそれは無理なんじゃないですかね?」

「何を言ってるんだ。夢は高く持っとかないと」


 いやいや、さすがに高すぎやしません? ゆーて、本当の志望動機なんて、『まだ働きたくない』が本当の理由ですからね? そんなガチじゃないからね?


「まあ、作家になれたらいいっすけどね」

「うん。楽しみにしてるよ」


 いやー、さすがにこんなヤンキー崩れが作家にはなれんでしょ。


「じゃあ、改めて卒業おめでとう」

「ありがとうございます」


 さすがに最後ぐらいはしっかり挨拶しないとね。




「さて、帰りますかな」


 俺は卒業式の会場を出ると一目散にバス停へ向かった。もうチェイサーが無いので、俺には足が無い。それにより、必然的に卒業式会場にバスで向かうことになったのだ。


「げっ。30分後かよ……」


 バスの時間を見てみると、次に来るバスは30分後だった。


「待ちたくねえな。しゃーない。歩いて帰るか。久々に」


 たまには運動もしないとね。タカちゃん最近運動不足だったからさ。こんなことじゃもし、誰かとセッ○スするときが来たときに、だらしない体だと恥ずかしいからね!


「さて行きますかな」


 俺はスーツに革靴という、歩くことに向いていないような服装で、ここから徒歩1時間ほどかかる自宅へ向かうのであった。




「ただいま~」


 はい。やっと着きました。ゲロ疲れたんだけど。もう2度と歩くなんて選択肢は選ばん。バスを待ってやる。


「おかえり~」

「あれ? 裕也学校は?」


 家に帰ってみると、先に裕也が家にいた。


「卒業式はお兄ちゃんの学校だけじゃないんだけど」

「あっ、そういうことね」


 要はするに、裕也のとこも今日卒業式だったってことだ。んで、裕也が通っている中学、俺もつい数年前まで通ってたんだけどね。まあ、そんなことはどうでもいいや。で、その中学は俺んちから結構近いのだ。それにより、裕也が早く帰ってきてたというわけか。


「お兄ちゃんこそ早くない? 卒業生なのに」

「俺があの学校に友達がいると思うか?」

「あー、なーる」


 いや、納得されても困るんだけどね。お兄ちゃん悲しい。


「先生とかとも話さなかったの?」

「少し話したけど、すぐに切り上げてきた」

「お兄ちゃんってコミュ症?」

「……否定はできない」


 初めての人とかどうやって話せばいいのかわからんし。あれ? 俺東京行ったら1人じゃん。初めての人しかいないじゃん。積んだわ……


「東京行ってもやっていけるの?」

「今になって不安になってきた」

「ダメじゃん」


 やばい。マジなんとかしないとな。


「すっしー! いるー?」


 そんなことを考えていると、たーちゃんが俺の名を呼ぶ声が聞こえてきた。


「あいよー。じゃあ、俺遊んでくるわ」

「ん。いってらー」


 あと少しでここで遊ぶのも終わりか。まあ、一生じゃないけどさ。今度地元との別れも済ますかな。


「はよしろよー。すっしー。遅漏すぎじゃねー?」

「お前に言われたくない。この詐欺童貞」

「詐欺童貞って何!?」

「見た目童貞っぽくないのに、実際童貞じゃん。だから詐欺童貞」

「さすがに酷くありません?」


 まあ、たーちゃんにはこれぐらいが丁度いいだろう。さて、短い時間を大切に過ごしますかな。

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