第37話 チェイサーとお別れして何が悪い!
「とうとうこの日が来てしまったか……」
どうもみなさん。高明です。今俺はチェイサーと一緒に最後の走りをしています。
「今日でコイツともお別れだな……」
そう。俺が東京に行くことが決定したことにより、チェイサーは今日で廃車になる。本当は廃車になんかしたくない。だってまだ全然乗れるもん。だが、どっかのバカがこの車にウンコをしたことにより、誰もこの車を買おうとはせず、車屋にも売れないおかげで廃車にすることになってしまった。
「もうお前と一緒にカーセッ○スbreakingもできなくなるんだな」
辛い。死ぬほどつらたん。だけど、この別れは絶対にせねばならんのだ。そうしなければ、俺は前に進めない。
「ちくしょう……ちくしょう……」
これは、瑠やたーちゃんと別れるよりも辛いかもな。慧よりではないけど。
「さて、車屋に向かうか」
俺はチェイサーを廃車にするために車屋に向かった。あっ、ちなみに書類関係はもうやったのだ。俺は仕事が早い男なのだよ。
車屋に着いた俺は、チェイサーの廃車に関しての事をやっていた。
「それではこれで廃車の申請は完了しました」
「はい。ありがとうございます」
ついにチェイサーとのお別れのときが来てしまった。今思えば、まだ1年もこの車に乗っていないんだな。
「早いもんだな……」
こいつと会ってから俺の世界は変わったんだよな。まだ、原付しか持ってなかった俺に車という乗り物は未知の乗り物だった。今まで、親とか先輩が乗っている乗り物程度にしか考えてなかったのに、今の俺にはそれに乗る資格があるのだと思うと興奮した。
「これが俺の車……」
初めて会ったときは、とんだヤン車だと思った。
「おお! スゲー! 速い!」
でも、いざ乗ってみると想像以上に速く、楽しかった。こいつとしばらくはずっといるもんだと思っていた。
「これで……オッケー!」
初めてチェイサーをいじったときは感動した。前までとは比べ物にならないくらいかっこよくなり、俺はどんどんチェイサーをいじることにハマっていった。
「よっし! やっと手に入れた!」
エロゲを買うときも、チェイサーに乗って買いに行った。他にも、たーちゃんたちとバカをやるときも、女とデート行く時も、全部にコイツはずっと俺と一緒にいてくれた。その相棒とも今日でお別れだ。
「今でありがとな。短い間だったけど、楽しかったよ」
あっ、やべ。泣きそうだわ。こんなにも車との別れがキツイなんて思わなかったわ。
「あの、大丈夫ですか?」
「はい。すみません」
あーあ、店員さんに心配されちまったよ。
「珍しいですよ。そこまで車に感情移入できる人は。すごいと思います」
「そうっすかね?」
「はい。今まで大切に乗られてたんですね」
やめてけれ。今そんな優しい言葉をかけられると泣いちゃう。そして店員さんに惚れちゃう。ち○こ勃っちゃう。
「まあ、そうっすね。俺の相棒でしたから」
「そうなんですか。じゃあ、お別れが辛いことでしょう」
「そうっすね」
ホントは廃車になんかしたくない。むしろもうちょっと乗っていたかった。この車に。女には乗れないからね。
「でも、俺も進路的なことでコイツとは、バイバイしなきゃいけないもので」
「そうなんですね。じゃあ、そろそろ。あんまり時間をかけると、更にお別れが辛くなりますよ?」
「はい」
「じゃあ、お願いします」
そうすると、チェイサーを乗せたレッカー車が発車した。
「今までホントありがとう」
こうして、俺はチェイサーとお別れしたのであった。
「あの、ちょっといいですか?」
「なんすか?」
店員さんが俺に声をかけてきた。まだなんかあんのかな?
「こちらから帰るときはどうするんですか?」
「……」
やべえ。考えてなかった。どうしよう。
「考えてなかったんですね」
「すみません。チェイサーのことで頭がいっぱいで、何も考えてなかったっす」
ホント、ミスったわ。まあ、いいや。たーちゃんか瑠を呼ぶか。もしくは、親父だな。
「ウチで代車でもお貸ししましょうか?」
「いや、大丈夫だと思います。友達か親を呼ぶんで」
「そうですか。もし、そのどちらも来れないようでしたら、代車をお貸ししますので言ってくださいね」
「はい。ありがとうございます」
さて、とりあえず迎えに来てくれる当てがあるやつに連絡しますかな。
「そっかー。ホントにチェイサー廃車にしちゃったんだ」
「まあ、しゃーないだろ」
お迎えに来てくれたのは瑠でした。親父は仕事がまだ終わっておらず、たーちゃんは寝ているのか、電話に出なかった。
「もったいないね。でも、ウンコされたって高明の知り合いにはバレてるから売れないし、しょうがないか」
「そうなんよ。ウンコさえされてなければ……」
ホント、ウンコした奴は許さねえ。
「まあ、でもこれで本格的に準備が進んできたね。1番の処理しなきゃいけない案件も終わったことだし」
「そうだな。あとは、卒業式に出て、荷造りして終わりかな。家ももう決めたことだし」
俺は短い期間で、家を決め引っ越し屋にも連絡を取り、あとはホントにさっきあげた2つだけになってしまった。
「これで高明も来年は東京か~」
「なんだ。瑠たん。寂しいのか?」
「まあ、それなりにはね」
「瑠が……デレた……だと……?」
これは念願のフラグがやっと立ったのか!? 瑠ルート突入なのか!?
「それは無いから安心していいよ」
「デスヨネー」
まあ、俺も突入したらしたで困るけど。
「瑠。ライター貸して」
「はい」
俺は煙草に火をつけ、ゆっくりと煙を吐いた。体全体に、ニコチンが染み渡り、楽になる。
「高明、ボクにも1本頂戴。あとで返すから」
「あいよ」
そう言って瑠に煙草を1本渡すと瑠は、煙草を咥え火をつけ、煙を吐く。
「あとちょっとだね」
「ああ。あとちょっとだ」
そう。俺たちの共有してきた時間もこの煙草の火のように、儚く、あっという間に過ぎて行ってしまう。チェイサーの次に別れが来るのは、瑠たちだからな。残り短い時間大切に過ごしますか。……俺らしくないな。
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