第32話 チェイサーにウンコされて何が悪い!



 その日事件は起きた。俺の……俺のチェイサーに……


「ウンコされとるやないかい!」


 どうも……高明です。ウンコが鳥の糞とかだと思うじゃん? 違うんです。犬か、もしくは人のウンコがチェイサーのトランクに入ってたんです。


「誰がこんな酷いことを……」

「ん? すっしー、どうしたんだ?」

「たーちゃん……」


 俺はたーちゃんに事の顛末を話した。


「ってことは、すっしーチェイサー鍵かけてなかったんか」

「そうなんだよ……犯人見つけてぶっ殺してやる」


 俺の大事な車を……許せねえ……!


「絶対見つけ出して、○○にして、○○○やって、○○をもっかいやってから○○してやる」

「ちょ、すっしー。伏せ字ばっかで何言ってるかわかんねえ」


 おい。伏せ字とかいうな。メタい。


「だって、普通車にウンコするか? 普通」

「まあ、普通はしないだろうな」

「だろ? こう言う時にポリに頼るか」

「話聞いてくれるかや?」


 確かにたーちゃんの言うことも一理ある。俺たちは結構やらかしてるからな。もしかしたら駄目かもしれんな。


「言うだけ言ってみるわ」

「まあ、その方がいいかもな」

「とりあえず、ポリんとこ行ってみるわ」

「我も行こう。どうせ暇だし」


 こいつはなんか他にやること探せよ。




「で、なんで車にウンコされんだ?」


 俺たちはポリのところに行くと、とりあえず話は聞いてくれた。だが、やはりそこはツッコまれた。まあ、普通車にウンコなんかしないよな。


「されたのかどうかはわからないですけど、たぶん車の鍵をかけ忘れたせいだと思います」

「自業自得じゃねえか」

「でも、さすがに人の車にウンコは無くねえっすか?」

「まあ、確かにな。とりあえず被害届は受理しとく」

「あざっす」


 なんとかポリを説得することはできた。あとは、こちらの方でも犯人を捜すだけだな。


「よかったな。すっしー」

「ああ。ただ見つかる可能性は低いだろうな」

「まあ、そうだろうな。あれが人糞だったら見つかるかもだけど、たぶん犬の糞とかだろうからな」


 たーちゃんの言うとおりだ。もし、あれが人糞だったらした奴の人間性を疑う。


「我でさえまだ、野糞はしたことがないからな」

「しゃんべんはそこら辺でやってるのにな」

「それぐらいは許容範囲だろ」

「とても公然わいせつで捕まったやつのセリフとは思えんな」

「やめて。思い出させないで」


 あの時は笑ったなー。めっちゃ面白かったもん。


「で、とりあえずどうやって犯人捜すんだ?」

「まあ、まずはSNSにウンコされましたって載せて探してみるわ」


 今の時代ネットの影響力はパナいからな。


「次は?」

「考えなし」

「ダメじゃん」


 だって、証拠がウンコしかないのにどうやって探すんだよ。


「大人しく警察の連絡を待つことにするさ」

「まあ、それが妥当か」




 ウンコをされてから1か月が経過した。それまでになんも無かったのかって? ねえよ。あったらこんな飛ばさないわ。


「すっしー、チェイサーどうすんの?」


 なぜたーちゃんがこんな事を言い始めたのかというと、ウンコのせいでチェイサーの車内がウンコ臭くなってしまったのだ。前まではあんなにいい匂いだったのに。考えただけでもち○ぽが勃起する。……それはないな。


「廃車にするかそのまま乗ってるかだろ? まだ悩んでる」

「あれを乗り続けるのか?」

「……」


 正直、あんなウンコ臭い車は乗っていたくない。だけど、チェイサーには思い入れがある。まだ、買って1年も経ってないが、辛い時も、悲しい時も、嬉しい時も、ずっと一緒にいたんだ。それを簡単に手放すのはキツイものがある。


「俺の進路が決まったら、決めるよ」

「そっか。まあ、捨てるにしても、乗るにしてもよく考えろよ?」

「たーちゃん……珍しく真面目なこと言うな」

「おい」


 いや、だっていつもち○こ、ま○こ言ってるやつがそんなこと言ったら驚くやん。


「見つかんないんかや?」

「まあ、まず無理だろうな」

「は~、萎えち○ぽや~」


 そんな感じでたーちゃんとぐだっていると、俺のケータイが鳴り出し、ベッドがバイブレーションで揺れた。バイブレーション////


「はいはい」

「こち○○警察署ですが、本山様のケータイでお間違いないですか?」

「はい! そうです! 車の犯人見つかったんですか!?」


 電話してきたのは、俺が被害届を出した警察署からだった。


「その件についてなのですが……すみません。糞の方が犬のものでして、探しようがなく」

「あっ、そうですか。わかりました。ありがとうございました」

「すみません。お力になれなく」


 結果。犯人見つからず。SNSの方も反応なし。これはお手上げだな。


「どうだった? すっしー」

「ダメだった。クソ!」


 俺は手に持っていたケータイを思いっきり下に叩きつけた。するとどうでしょ! ケータイの画面バキバキになります。……


「あああああああああああああああああ!!!!」

「あーあ、やっちゃったよ」


 車にウンコされるわ、ケータイの画面割るわ、悲惨すぎる……


「高明! 新しいケータイ買ったんだ! 見てみて!」

「田中……」

「瑠……」

「えっ? なに? まずいタイミングだった?」


 かわいいけどさ。それはマズイよ……



※良い子はしっかり車の鍵をしめようね

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