第24話 元カノの家にコールきりに行って何が悪い!



「あー、イライラするなー」

「急にどうしたんだよ。すっしー」

「高明がイライラするなんて珍しいね」


 今俺は絶賛イライラ中です。なんでかって? そんなもん今から説明するから待ってなさい。


「いやさ、今読んでる小説がさ意中の女に遊ばれて捨てられる男の悲しい話でさ」

「あ~、高明もそんなことあったね」

「そっか。瑠は知ってるもんな」

「我も少しは知ってるぞ」

「そーいやそうだった」


 そう。今俺が読んでいる小説が、俺が体験した悲しき悲恋とほぼ同じ感じの作風なのだ。それのせいで、イライラしているのだ。まあ、その話はまた今度しよう。


「どうにかしてこのイライラを発散できないものかな」

「うーん、御上院の家は知ってるんでしょ?」

「まあな」


 御上院(ごじょういん)慧(みどり)。俺が1番好きだった元カノの名前だ。中2から高1まで付き合っていてつい最近まで好きだった女の子。名前的に金持ちっぽいけど、そんなことなく一般家庭育ちの普通の女の子だ。


「家知ってるなら、今からボクたちみんなで家に行ってコールでもしに行く?」


 コール。よく暴走族がやっているエンジン音を空ぶかしして、人様に迷惑をかける行為だ。まあ、バイク乗ってたら俺もしちゃうけど。

「今日、高明もエイプなんだからさ。ボクたちで行けば3重奏できるよ?」

「ありだな」


 実は、俺もバイクに乗っている。原付だけど、マニュアルでマフラーも変えているおかげで、結構うるさい。


「じゃあ、今から行く?」

「いや、田中よ。今から行くと、まだ起きている可能性があるからスーパーが閉店して少し経ってからのほうがいいと思うぞ」


 こーゆー時のたーちゃんは的確で参考になるアドバイスをしてくる。もっと他のことで頭使ってくんねーかな。


「じゃあ、今10時半だから1時ぐらいになったら行くか」

「そうだね。そうしよう」

「りょーかいだ」


 俺らはその時まで、とりあえず暇を潰すことにした。




「さて、そろそろ行くとしますか」

「「りょーかい」」


 決行の時間となり、各自自分のバイクのエンジンをかけ、慧の家に向かうことにした。


 ブオオオン!! ブンブン!! ボボボボボボボ……


 やっぱ、400ccと750ccは音がいいな。俺も中免取ろうかな。


「じゃあ、すっしー。道案内頼むわ」

「あいよー。遅いかもしんねえけど我慢してな」

「大丈夫だよ。ボクたちは後ろでコールの練習しとくからさ」

「りょーかい。じゃあ、行くぞ!」

「「おう!」」


 ブンブン!! ブオオオン!! ブオオンブオオン!!


 俺らはバイクのアクセルを回し、慧の家へと向かった。男がいつまでも元カノのことひっぱてて女々しい? うるせえ。めっちゃ好きだったんだよ。




 慧の家付近に来た俺たちは、一旦エンジンを切り、近くにあった公園で作戦会議を始めた。


「さて、どんな感じでやる?」

「とりあえず、すぐ逃げれるようにバイクの向きは頭を道路にしようよ」

「そうだな。あとは我は横並びの方がいいだろう」


 ホント、コイツら悪いことするときは頭の回転早いな。瑠も結構ノリノリだしな。


「オッケー。じゃあ、俺が合図を出したらコール開始な」

「「りょーかい」」

「とりあえず、慧の家まではバイク押してくか」

「えっ、我の相当重いんだけど……」


 それは、たーちゃんがいけないよね。うん気にしない。気にしない。


「ちょ、無視しないでよ……」

「なんか、最近のだっぷんメンタル弱くなってない?」

「一理あるな」


 まあ、たーちゃんにも色々あるんだろうな。興味ないけど。




「よし。準備いいか?」

「ボクはオッケーだよ」

「我はもう少し待ってほしい」


 やっぱ、たーちゃんは重い分ちょっと時間かかるか。


「瑠、俺ちょっとたーちゃん手伝ってくるから待ってて」

「りょーかいだよ♪」


 なんだよそれ。かわいい。勃起しそう。あと、薄々気づいてたけど、瑠ちょっとテンション高いな。そんなところがかわいいんだけど。


「ほら、たーちゃん手伝ってやるよ」

「すま○こ。さすがにこれは重杉謙信だわ」

「まあ、ナナハンだからなー」


 俺なんか50ccだから軽いのなんのって。


「あとで、ちょっと乗らせてよ。たーちゃん」

「おっ、すっしー久々の無免か?」

「久々なんだから少しぐらいいいだろ」


 俺は、マニュアルの原付に乗っているから普通に400とか750とかにも乗れるのだ。まあ、無免許運転だけどね。バレなきゃ問題ないよ☆




「よし! たーちゃんの準備もできたし、そろそろおっぱじめるか!」

「おっぱじめるってなんかエロいな。すっしー」

「ちょっと分かる自分がいるのが嫌だ」

「2人ともキモいよ?」


 なんか久しぶりに瑠にディスられた気がする。


「あいつの家の電気もついてないし、俺が、よーいま○こ! って言ったら始めるぞ」

「了解」

「いや、そこツッコんでよ! だっぷん!!」

「いや、それは田中の担当だから」


 さすがたーちゃん。分かってるな。


「何担当って! ローテーションでしょ!」

「「え? そうだったの?」」

「もう嫌だ……ボク疲れた……これ終わったら、帰る」


 あらあら、瑠がキャパオーバーしちゃった。


「じゃあ、行くぞ。よーい! ま○こ!」


 キキキキッ! ブオオオン!!


ブンブンブブンン!! ブンブン!! ブーンブンブン!! ブンブン!!


 いやー、コールが3つ重なるといい音が響きますなー。最高に気持ちがええんじゃ。


 ブオオオン!! ブオオンブオオンン!! ブンブン!!


 最っ高!! もっと! もっとしたい!!


 ブンブブン!! ブブブン!! ブオオオオオン!!!


 最後の、部分が終わると俺たちはそのまま、先ほどの公園まで戻った。




「楽しかったな!」

「うん! ボク久々に興奮しちゃったよ!」

「たまにはこういうのも悪くないもんだなー。我のコールの腕も上がるし」


 慧の家にコールして戻ってから、俺たちは公園でそれぞれの感想を言っていた。いや、あれはマジで楽しかった。ストレス発散できたし。


「でもさ」

「ん? どーした? 瑠」


 瑠が浮かない顔をしていた。


「少し経ってから自分たちがやったこと振り返ってみるとなんか、萎えない?」

「「……」」


 ヤベエ、瑠の指摘が的確すぎて、なんも言えねえ。


「すっしー。俺らってちっぽけな人間だな……」

「やめろ。賢者タイムに入ってる時にそれ言うな。ガチで萎える。むしろ、ち○ぽは萎え萎えだ」

「……帰ろっか」

「そうだな……じゃ、田中。すっしー。パイ○―ン」

「「パイ○―ン」」


 そうして、俺たちは虚しい気持ちを持ちながら帰宅した。こんなことになったのも、あの小説と、慧のせいだ。そう。あれは数か月前のことだった。



次回、過去編2開始

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