第17話 落ちてる下着被って何が悪い!



「こ、これは……」

「久々に見たな……」

「ボクは毎日見てるけどね」

「「殺す」」


 なんで、俺とたーちゃんが感動の余韻に浸ってる中、水を差すようなことを言うかね。この男の娘は。


「ちょ、ごめんって」

「いいや、田中。お前は我らがやっと見れた『コレ』を毎日見てると言った。これは立派な裏切りだぞ!」


 たーちゃんの言っている『コレ』とは……。





「ブラジャーとパンティだ!!!」





「声でけえよ。たーちゃん」




 俺たちは、毎度のごとくスーパーが閉店したので、コンビニでたまっていたところ、少し離れたところに女性物の下着が落ちているのを見つけた。


「なんてイヤらしい色合いなんだ……」

「なんてったって黒だもんな。俺もこの色には興奮するわ」


 俺とたーちゃんは、下着の色を見て完全にテンションが上がっていた。いや、男だったら普通は上がるでしょ。


「もしかしたら、これ使用済みなんじゃね?」

「さすがにそれはないだろー。たーちゃん、匂い嗅いでみてよ」

「よかろーう!」


 そう言うと、たーちゃんはパンティを被った。え? 被った?


「お前何やってんの!」


すかさず、瑠がツッコミを入れる。


「何ってパンティ被ってるんだけど?」

「そうじゃない!」

「そうだよ! 高明もっと言ってあげて!」

「なに俺をさしおいて、先俺より先にパンティ被ってんだよ!」

「そっちぃ!?」


 それ以外になにがあるんだ。瑠くんよ。


「じゃあ、すっしーには先にブラジャー貸してやるから、そう怒るなよ」

「それなら許す」

「それでいいんだ!? いいんだね!?」


 俺は、たーちゃんからブラジャーを受け取ると、それを顔に巻きつけた。ああ~、この匂い。ち○ぽ勃つ~!


「ヤバい。俺、オ○ニ―したくなってきた」

「我もだ。ち○ぽが爆発しそう」

「君たち、ホントに頭弱いね……」


 これは、男の性だ。しょうがないことなんだよ。


「たーちゃん、そろそろ交換しようぜ」

「よかろう。受け取るんだ。すっしー」


 俺は、たーちゃんからパンティを受け取り、それを頭に被った。


「こ、これは!」


 先ほどのブラジャーとは違く、柔らかい感触が顔全体を包み込む。その肌触りはやはり、男物の下着とは比べものにならないほどいい。


「これは、ヤバいな……」


 俺は、一言そう言いパンティの感触に溺れていた。


「すっしー、我もこれはヤバいわ。ムラムラしてきた」

「俺も同感だ。オ○ニーしてえ」

「2人ともおかしいよ……」


 瑠が何か言っているが聞こえない。てか、むしろ聞く気がない。だって、女物の下着だぞ? こんなん目の前にあったら、そりゃ周りのことなんか気にしたくないだろ。




 時間がたち、俺らは少しだけ冷静を取り戻したところで、ある1つの問題が浮上してきた。


「なあ、この下着どうする?」

「そーいやなんも考えてなかったな」

「まあ、妥当なのはここに捨ててくのが1番だろうな」


 まあ、持ち帰っても使い道ないからな。


「それは勿体ない!」

「はあ? 何言ってんだよ。じゃあ、どうすんだよ」


 たーちゃんは下着を抱きしめながら、首を横に振っていた。そんな事されてもねえ。


「我は持ち帰るぞ!」

「持ち帰ってどうするんだよ」


 たーちゃんから返ってきた返答は俺と瑠に衝撃を与えるものだった。てか、瑠は今まで何やってたんだ?


「ケータイいじってたんだよ?」

「なんで考えてること分かったの?」

「だから、高明は顔に出やすいんだよ」


 瑠はそんなに俺の事を理解してくれているのか。感動して濡れそう!


「高明、さっき言ったこと全然わかってないでしょ……」


 やべえ、これから瑠に嘘つけねえ……。


「って、そんなことはどうでもいいんだよ! たーちゃん下着の使用用途を述べよ!」

「はっ! ズリネタに使うであります!」

「だっぷん! ありますの後に教官ってつけてよ!」


 たーちゃんは、頭弱いこと言ってるし、瑠は久々に軍オタ出してるし、もう収集つかねえよ。


「たーちゃん……それは流石に厳しいよ」

「そんな憐みの目で見ないで!」


 いや、それは見たくなるでしょ! だって落ちてた下着でオ○ニーするんだぞ!? 俺でもそれは無理だわ。


「でも、それじゃあこの下着たちはどうするんだ? すっしーよ」

「だから捨てるんじゃん」

「それは下着たちがかわいそうだろ!」


 何をぬかしてるんだ、この金髪クソ童貞は。


「なんかすっしー。失礼なこと考えてね?」

「気のせいだろ」


 たーちゃんにまでわかんのかよ……。




「さて、じゃあ下着をどうするか。今一度話し合おう」

「我は持ち帰ってズリネタにしたい」

「ボクは何とも思ってないよ」


 ダメだー。こいつらまともに考えてねえ。瑠は確かに最初から興味がなかったっぽいからいいが、たーちゃんの頭の中がオ○ニーのことしかねえ。


「どうするんだよ。それでオ○ニーしたときに病気にでも罹ったら!」

「下着でセン○リこいて病気になるなら本望!」


 あちゃー。もうコイツダメだ。収集つかねえバカになってやがる。


「そこまでの想いがあるなら持ち帰ることを許可する……」

「ホントか! すっしー! ありがとう!」


 俺は、もう諦めてたーちゃんに下着を持ち帰ることを許可した。決してめんどくさくなった訳じゃないよ? ホントだよ?


「高明、お疲れ様」

「瑠~! 俺を癒してくれ~!」

「うん。無理」


 ……相変わらず世知辛いですね。




 下着の今後を決めたところで、俺たちはそろそろ解散する流れになっていた。


「さて、そろそろパイ○ンのお時間かや」

「確かにね。もういい時間だし、そろそろ帰るかな」

「だな。我も早く帰ってオ○ニーしたい」


 ぶれねえなー。


「すいません。ちょっといいです~?」


 俺たちが、そろそろ帰ろうかとしている時、突然チェイサーの運転席側の窓をノックして、話しかけてきたおばさんがそこにいた。なんか、嫌な予感してきた。


「なんすか?」


 俺は窓を開け、おばさんの話を聞くことにした。ヤンキーっぽくないって? すぐにケンカ売るのは頭が弱いヤンキーだ。俺は違う。


「ここら辺の紫色下着落ちてなかった?」

「「ん? 紫の下着??」」


 俺とたーちゃんは声を合わせて反応してしまった。ま、まさか……。


「いや、俺たちは見てないっすね。その下着がどうしたんすか?」

「いや~、そこのコインランドリー行ったんだけどね~。途中で持ち帰るときに落としちゃったみたいなの~」


 おいおい、マジかよ。もうこれ確定じゃん。てか、このBBA。よく下着の事俺らに聞けるな。


「その下着お気に入りだったんすか?」

「そうなのよ~。イマドキの若い女の子が付けてそうだから、それを付ければ私も若返るかと思ってね~」


 んなわけねえだろ。何考えてんだ。このババア。


「そうなんすかー。すんません。俺らは知らないっすねー」

「そうなの~。ありがとね~」


 そう言い、ババアは帰って行った。


「なあ、たーちゃんさっきの下着ってさ。あの……」

「すべてを口にするな。すっしー。口にしてしまったら我らは、終わる」


 いや、終わるってなんだよ。……いや終わるか。


「それで、下着は?」

「さっきのババアが紫の下着って言った瞬間に、後部座席の窓から捨てた」

「きっとそれが正解なんだろう」


 俺たちが見た夢は今日このコンビニの駐車場で儚く散って行った。俺ら、ババアの……やべ、リバースしそう……。



※良い子のみんなはマネしないように

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