第12話 エロゲで泣いて何が悪い!
「クッソ! なんでこんな時に寝坊しちまうんだよ!」
俺、本山高明は人生で1番焦っています! 今日は、前々から欲しかったエロゲの発売日なのです! 俺は、早朝から並んで買おうと思っていたのだが、まさかの寝坊。やってしまった。
「ヤバいヤバい、早く、一刻も早く嫁たちを迎えに行かなければ!」
愛車のチェイサーを唸らせ、某オタショップに向かう。信号? そんなのは俺の視界には映っていない! ……嘘です。すいません。しっかり止まります。さすがに朝はね。
「信号ウザい信号ウザい信号ウザい信号ウザい信号ウザい」
イライラがピークです。なんで、こんな物に嫁たちを迎えに行くのを邪魔されなければならないんだ!
「早く早く早く早く早く!」
信号が青になった瞬間にスタートダッシュを決め込んで、某オタショップへと向かう。なんで信号無視しないのかって? それでもヤンキーかって? うるせぇ、ヤンキーじゃねえ。ぶっ殺すぞ。
「ま、間に合った……」
チェイサーをかっ飛ばしていったおかげで、なんとか列に並ぶことができた。ホント、これが手に入らなかったら俺、死んでたかも。
「これから、販売を開始しまーす!」
店員が、試合開始の合図を出した。さぁ、やっとお迎えができるぞ!
「手に入った……おかえり、嫁たち」
朝早く起きて、チェイサーでかっ飛ばして、やっと買えた。さあ! 早く帰ってプレイせねば! 今日は誰とも遊ばないぞ! 外になんて出てやるものか!
「さてと、行くか!」
「その前に、ちょっといい?」
そう言われ、後ろを振り返るとなんとそこにいたのはポリスメン! え? なんで?
「俺、しました?」
「君、スピード違反でオービスに引っかかったんだよ」
「嘘でしょ!?」
こ、こんな時に! 俺は何をしているんだ!! ちなみにオービスと言うのは、たまに道路に設置してあるスピード違反の車を記録する機械だ。そんな滅多にいないのに、なんで今日に限ってオービスがいる道行っちゃったんだろう。
「あのー、それって後日じゃダメですかね?」
「ダメ」
「なんてこったパンナコッタ」
はい。大人しく警察署に持ってかれました。俺の貴重な時間が……。
「じゃあ、今度から気を付けるように」
「はい……」
クソ、ポリのやつ、話長すぎ謙信だろ。2時間も話やがって。今日の俺の時間は貴重だって言うのに……
「さて、さっさと帰ってエロゲやんねえと」
チェイサーにエンジンをかけ、自分の家へ帰る。てか、帰らなきゃいけないんだ!
チェイサーを駐車場に止め、降りて鍵をかける。そして、俺はダッシュで自分の部屋に駆け込み、PCを起動した。
「ちくしょう、おっそいな」
PCが立ち上がるのが遅く、貧乏ゆすりが止まらない。PC変えようかな。
「立った!」
ち○こじゃないよ? PCだよ?
パスワードを打ち込み、画面が切り替わる。ちなみにパスワードは、tnk4545だ。そして、エロゲをインストールし、待ちに待ったエロゲのプレイを始めていく。
『ヒロシ、きて?』
『アキ……優しくするからな』
「うひょー! ついにキマシタワ―!」
俺は、あれから数時間ずっとエロゲをプレイしており、やっと1人のルートでS○Xするシーンへ行った。
『いたっ!』
『ごめん! 大丈夫か?』
『大丈夫だよ、この痛みは私がヒロシと一つになったことの証だから。嬉しいよ』
『アキ……』
うん、なんだろう。めっちゃイチャイチャしてるな。
『ヒロシ、もう大丈夫だから動いて?』
『わかった。行くぞ? アキ』
『うん。来て。私にあなたを刻み付けて!』
「……リア充してんな」
エロゲの中の主人公とヒロインは目いっぱいイチャついていた。俺もそんな時代あったな。思い出したくないけど。
『ああんっ! ヒロシ!!』
『アキ! アキ!』
「……はあ」
ため息が不意に漏れる。この何も音がない空間にマウスを押す音だけが鳴り響く。
「む、虚しい」
なんだ、これは。エロゲやっててこんな虚しいことは今までなかったぞ。別にエロゲがつまらないわけじゃない。なのになんでこんなに。
『ヒロシ、大好き』
『俺も大好きだよ。アキ』
「あー、ヤキモチか」
やっとわかった。俺は2次元にヤキモチを妬いていたんだ。こんなに好きな人と幸せそうにしていて。かといって3次元の女と付き合う気にはなれない。
「はあー、2次元行きてえなぁ」
3次元の女なんてゴミだ。クズだ。チ○カスだ。アイツらはすぐに人を裏切ったり、騙したりする。
「やっぱ、2次元は最高だな! 俺のち○こもビンビンだぜ!」
……
「はあ、恋したい。2次元と結婚したい」
「なあにバカなこと言ってんの? すっしー?」
「はあ!?」
俺が独り言を言っていると聞き覚えのあるアホの声が聞こえてきた。
「なんで、たーちゃんここにいんだよ!」
「いや、ひま○こだから遊びに来た」
「連絡しろよ……」
「まあまあ。そんなことより、なんですっしー泣いてんの?」
コイツはついに目までおかしくなったか。俺が泣いてるわけ……
「俺、なんで泣いてんの?」
「いや、知らんけど。むしろ、我が聞いておるのだが」
自分の頬を触ってみると、確かに、目から汗が流れていた。涙じゃないよ? 汗だから。
「なに? お前エロゲやって泣いてんの?(笑)」
「うっせー! てか、今日はエロゲやるんだから帰れ!」
「えー! そんなつまんないこと言わないで遊ぼーぜー」
「お黙り! はよ帰れ!」
「ちぇー、いいよ。じゃあ、田中と遊ぶから」
「おうおう。遊んで来い」
「じゃあ、明日また来るから。パイ○-ン」
そう言い、たーちゃんは大人しく、俺の部屋を出て行った。
「さて、続きをやりますかな」
もう一度、PCの前に座り、マウスを手に持つ。俺が泣いてたのはきっとまだ、3次元に未練があるからだ! 彼女とイチャイチャしたいと思ってるからだ。そんな思いは切り捨てよう。そして、エロゲに集中しよう!
「さあ、俺をもっと楽しませてくれ! 俺のち○こをビンビンに勃起させてくれよ!」
「そんで、もっとキュンキュンさせてくれー!」
俺には彼女なんかいらない! だって、俺には嫁がいるからな! 画面のなかに! 俺はそれだけで最高だぜ!! ……俺ってホントに残念だな。
※良い子のみんなはこんなダメな人にならないようにしましょう
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