第6話 Deadly Lovely

――あの夜を境に僕たちの距離は縮んでいった。


この身体になってから大きく変わったのは、身体そのものではなかった。

どこかの小説のように家族との関係が変わったわけでもない。

彼との関係が大きく、想像以上に、夢見ていたよりも変わった。

たぶん、というか、本当はこうやって腕を組んで歩きたかったのだろう。

そんなことを考えていると彼は、

「どうかしたか?」

「ううん」

「そういうが割と深刻そうに見える」

「深刻じゃあないよ。真面目に考えていたんだ」

「真面目ねえ」

並木の桜はすでに散ってしまったけど、代わりに新緑が目に優しい。

「ばたばたしている間に時期を逃したな」

「そうだね。仕事忙しかったし」

「まだ、段ボール残ってるからな」

「開けてないならいらないってことだろう?」

「一理あるが冬物かもしれないぞ」

言われてみればそうだ、と僕は頷いた。

手抜きしないで開けるしかないか。

「ところで何を考えていたんだ?」

「どうやって段ボール片付けようかなって」

と言ったら額に衝撃。

やや遅れてから痛みが来た。

「デコピンだなんて、ひどいなぁ」

「大丈夫、あとは残らないから」

「そういう理屈じゃなくて……ただ、こうやって一緒に歩きたかったんだなって、思ってたんだ」

彼は僕の言葉を聞いて、しばらく動きを止めた。

意外な言葉に衝撃を受けたのか、それともその意味をかみしめているのか。

「そうかそうか、デコピンされかったのか」

ようやく出てきた反応がそれか。

僕はお返しにデコピンを食らわした。

「これはお返しだ」

「食らえばわかる。……恥ずかしいことをよくもまあ」

「恥ずかしくなんかない。正直に思ったことを言ったんだから」

頬を膨らませて僕は抗議する。

彼は肩をすくめて、

「俺は恥ずかしかったぞ。うれしかったけど」

「後半の言葉をもう一度」

「二度は言わない。言えない」

彼は口をへの字にして、そして、走り出した。

「あ、逃げるな」

「悔しかったら追いついてみろーっ!」

走る背中を僕は追いかける。

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