最終話 星を継ぐもの

 朝、目がめると、見た夢を思い出せそうで、思い出せなくなることが、ときどき、ある。

 私が通学路で目覚めたときも、そんな感じだった。少しの間だけ、気絶きぜつしていたかのようだ。

 心配そうにこちらを見ていた周りの人間が、足早あしばやに立ち去っていく。

 私はスマホの時計を見た。

 なんとか、学校には遅刻ちこくせずに済むだろう。


 その後、日常生活に戻ると、私は魔法の世界を忘れるようになっていった。

 あれは夢だったのだろうか。

 私たちが住んでいる宇宙よりも、はるかに大きい巨人たちが、それを上回る大きさの魔物たちと戦っている。

 少女のポケットの中に、私たちのちっぽけな宇宙が入っている。

 賢者から継承した宇宙。

 少女は魔法を出す。

 ビッグバンですら「小さな爆発」なのだから、私たちの想像を絶するエネルギーなのだろう。

 だとすれば、ワープも可能だ。

 いや、それでも、証拠がないのだから、あの冒険は夢に違いなかった。

 そう信じこむようになったある日、部屋にあったノートの切れはしへ、不思議な文字が浮かび上がるのを見た。

 これはあとになって分かったことだが、その文字はマール文字だった。

 翻訳メガネをかければ、「間宮君、事件だ。すぐ来たまえ」と読めたはずだ。


                            (了)

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魔法と推理 村上玄太郎 @dhrname

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