第六章 異世界じゃない世界と魔法と推理
第47話 シンドウの敗北
「僕は敗北したのだ」
シンドウが館の
村長の家族と新しい家族は、賢者の館を出ていった。
元の生活に戻るには、時間がかかるかもしれなかった。それでも、歯を
僧侶のスガは、この館を探検すると言って、私たちと別れた。
今、シンドウと私は、館の廊下で、あてもなく、さまよっていたのだ。
私は冒頭の言葉を聞いて不思議に思った。「なぜだ。シンドウ?誘拐事件はお前の推理で、みごと解決したじゃないか」
「あれが推理だって?とんでもない間違いだ。間宮君」
いよいよ、おかしなことを言い出した。
シンドウは真犯人を言い当てた。私がそのことを指摘すると、シンドウは笑った。
「おいおい、あれは推理ではないぜ。当てずっぽうなのだ。もし、二冊の魔導書を盗んだドリィが、ヒスイとコトリの二人に分ければ、一冊ずつになる。それをコトリはヒスイから二冊買い取ったと言っている。だとしたら、ドリィからヒスイ、さらにコトリへ、
「まてよ。シンドウ」
だんだん、私は頭が痛くなってきた。「お前は、事件を解決しなくても良かったのか?」
「そうだよ、間宮君。裁判の始まった段階では、事件を解決できないと信じていた。僕には、別の目的があったのだ」
「それはなんだ?シンドウ」
「僕はね、賢者ミカミと
シンドウの目的は別のところにあった。
私はそれを聞いたとき、スガの「裏の裏の、そのまた裏」という言葉を思い出した。彼女たちは相手の裏をかいくぐろうとしたのだ。
ミカミに裁判を持ちかけられたが、そのときシンドウが考えていたのは、なぜ、この赤い館を守ろうとするかだった。
「いろいろな魔法を駆使して、おまけに、動く
「お宝でも隠されているのか?」と私は
「いや、それなら、魔法で縮小すればいいだけだ。僕は推理を
「ふーむ」
私は腕を組んだ。
この館に隠された秘密とは何なのだろう。
そう言えば、ミカミは私を「小さきもの」と呼んでいた。何か関係があるのだろうか。
そのことを私はシンドウに問うてみた。
シンドウは「間宮君、それだよ」と人差し指を一本つきたてた。「僕は、君と賢者の間に深いつながりがあると見ていた。この本を見たまえ。賢者の書斎から
シンドウがポケットから小さな本を取り出して、それを魔法で大きくした。本の題名には「古代文明の魔法に関する研究と考察」とある。著者名は「ミカミ A」だった。その本を彼女がぱらりとめくる。すると、あるスケッチのあるページが、私の目に飛び込んできた。
このスケッチの図には、まだら模様の黒い
「おい、シンドウ。このスケッチの図柄、見たことあるぞ!お、俺の体のと同じじゃないか!」と私は興奮のあまり、声が
「そうだよ、間宮君。君の体に描かれた魔法陣だ。この本の文章を読んであげよう。『古代文明が作り上げた巨大化魔法を制御できる魔法陣である。この魔法を使えば、物体を巨大化させることができる』。――ね?ミカミは古代魔法を研究していて、この本を書いたのだ。君とミカミには深いつながりがある。だからね、僕は君のために、あんな
「シンドウ。まさか、あの推理は、でたらめにやっていたのか?」
シンドウはもちろんだと答えた。「僕は、皆の前であざけり笑われてもよかった。
彼女はもう一度、僕は敗北したのだと言った。
違う。
彼女は負けていないのだ。事件を
「お前はすごいよ。俺は何もできなかったんだ。何もしてやれなかったんだ。お前を尊敬するよ」と私は
シンドウがはっと顔を上げた。
「今、何と言ったのだ?」
「え?いや、お前を尊敬するって――」
「その前だ。間宮君」
「何もしてやれなかったって――」
シンドウが
私には、なんのことだか意味が不明だった。
シンドウが言った。「さあ、行こう。間宮君」
私は涙をふきながら
「どこへ?」
「さっきの居間だよ。安楽椅子の前に、燃えさかる
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