第4話 ハーレムな商人
「はい、こちらが商品となります」
「できたてで熱いから気をつけてねー」
「袋、お分けしましょうか?」
なんとなく、店員対応がめちゃくちゃ良いコンビニに来た感じ。しかしここは、まだ冒険コースだ。しかも、お金は払っていない。
次の転移先は『商人の町』。ここでも商業ギルドの建物の入口に出現した。グランドクエスト、勇者が各街の有力者を訪ね歩くとかいう流れなのかな?
「すみません、ユキヤさん。たいした食料も渡せずに」
「いや、ホント助かった。料理・調合もアイテム化スキルで可能なツムグくんがいて」
「そう言っていただけると嬉しいです」
「おかげで、うるさい連れがしばらくうるさくなくなる」
「誰のことかな?」
「今、マンガ肉をほおばっているお前のことだよ、マリナ」
「ごちになりまーす」
こいつ、こんなに食い意地張ってたっけか?あ、お試しコースで初期残高全部屋台ですぐ使い切ったとか言ってたか。
「マリちゃん、私はいいからこれも食べて」
「わーい、サトミありがとー」
精神年齢も下がったような…。
◇
「しかし、この街は結構ユーザが残っているな。商人は少なそうだけど」
「ええ。だからこそ、僕達が商業ギルドから移動するわけにはいかなくて。必要なくても、食料や用品アイテムを欲しがる人は結構いますね」
「じゃあ、俺達が情報を伝えてみんながログアウトしていったら、君達も帰る?」
「あー、それは…」
ん?まだ他に何かあるのかな?
「いやよ!私まだツムグと一緒にいたい!」
「やだやだやだ!現実世界だと離れ離れなんだもん!」
「あたし…あたしは…(泣)」
受付をしていた女の子ユーザ3人が、そう言って一斉にツムグくんに近づく。『接触不可』じゃなかったらどうなってたかって勢いだ。
「よく見ておけよ、マキノ。あれが真のハーレムの主だ。お前のようなパチもんとは違う」
「いや、僕は別にハーレムを作りたいわけでは…」
「なら、なお悪い」
マキノは一応芸能人だから、特定の誰かと付き合ってないってだけかな。やっぱ余計に悪い。
「それ以上お姉様をバカにするなら、あたしが相手になるわよ?」
それはともかく。
「君達、今回の件は運営から保障があるし、あらためてダイブすればいいんじゃないかな」
「ダメです!本来のコースは数日程度なんですから!」
「今回、3か月も一緒にいれて、嬉しくて嬉しくて…」
「ツムグ…ツムグ…」
うーん、ここまで徹底してるといっそ清々しい。というわけで(?)、いつもの辺境世界紹介。あと、2年目からの学園世界も。
「そんなサービスがあったんですか…。みんな、一度戻ろうよ。リアルでだって全く会えないわけじゃないんだし」
「私、バスと歩きで1時間…」
「あたしは電車乗り継ぎで1時間半かかるー!」
「…徒歩…電車…自転車…2時間半…」
あれ、全員リアルでも知り合いだったのか。
「引っ越した幼馴染と、中学の時に転校したクラスメートと、大学に進学した先輩で…」
えっと、現実世界でハーレム完成?しかも今高校生?これまでの経緯を知りたいところだ。
「あー、GMとっ捕まえたら、終了シーケンスが発動するかもしれないから。その時はあきらめてほしい」
「ゆっくりでいいですから!」
「むしろ2年間うぇるかむよ!」
「…」
そんなこと言われてもなあ。えっと、幼馴染らしき人、睨まないで。
「さてと、じゃあ、他のユーザにも時間設定のことを知らせに回るか」
「あの、ユキヤさん。私、ツムグさんに聞きたいことがあるので、残っていいですか?」
「…4人目?」
「…違います。料理スキルを教えてもらおうと思って。呪文スクロールがいくつかあるそうです」
「マリナ対策か。わかった。じゃあ、俺達は行ってくる」
まあ、ツムグくんなら大丈夫だろう。誰かさんと違って。
◇
「ありがとう。助かったわ、萩原くん」
「やっぱり気づいていたんだ、ミュリシアさん」
「ええ。マリちゃんは気づいてなかったから、知らんぷりしちゃった。ごめんね」
「クラスで下の名前呼ばれることないし、髪型もいじってるからね。あ、あの3人には、君とクラス委員やってるってことは…」
「大丈夫、クラスメートってことも言わずに行くわ。夜道を歩くのが怖くなりそうだから」
「…君って、そんな冗談を言う人だったっけ」
「学園世界で、一緒にクラス委員やってる人の影響かな」
「ユキヤさん?」
「…わかる?」
「そりゃあね。ユキヤさんが『4人目?』って訊いた時のミュリシアさんの顔が」
「あー、クラスで萩原くんがハーレム作ってるってこと言っちゃおうかなー」
「勘弁して下さいお願いします」
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