第4話 恋空予報
家に帰ると深夜0時を過ぎていた。
すぐにPCの電源を入れた。
「アヤ太郎」
ニコニコ動画で検索すると最上段に登場した。
【アヤ太郎】恋空予報踊ってみた【踊ってみた】
再生:4,017 コメ:94 マイ:71
動画を再生して、飯田は思った。
「なんていう可愛さなんだ」、と。
まだ活動して間もないからさほど再生数も伸びていないが、コメントを見ても猛烈なファンが付き始めている事がわかる。
すぐに小林アヤのツイッターをフォローし、リプライを飛ばそうとスマホに飛びついたが、ここで飯田は気づいた。
小林アヤのフォロワーが1763人に対し、俺は8だぞ、と。
できて間もないアカウントという事もあるが、フォロー9人、フォロワー8人。これではスパムアカウントと疑われて通報されるレベルだ。
飯田は一瞬悩んだが、それも一瞬だった。
イーアル@多忙につき放送未定 @iiiaruaruiida11111
返信先: @ayatarou999さん
\( 'ω')/
フォローしました!飯田です!
この前はありがとう!
動画見たよ
これだけの文面を考えるのに24分を費やした。
飯田は汗をかいていた。
彼はランニングにパンツ一枚という出で立ちでPCと格闘し、そして送信した。
頭の中に「恋空予報」の歌詞が何度も何度も流れた。
『恋空予報
叶えてお願い 雨が降ってるけど
一緒に帰ろう』
「叶うわけないよな」
飯田は声に出してそう言った。
高校時代でも学年で一番モテモテだった小林。
一方の自分はどうだ。何もない。
飯田は心の奥で感じとっていた。無理なのだ。
世の中には無理な事が沢山あるんだ。
僕じゃ届かない。
たった19年の人生でもそれはわかっていた。
可能性は、ない。本当に、ない。
ただそれに抗いたかった。
多分冴えないであろう運命にちょっとでも波を立てたかったのかもしれない。
その本心は飯田本人にもわからなかった。が、しかし何かをしなくてはいけない事だけはボンヤリと感じ取っていた。
深夜1時を回った頃にツイッターに通知が来た。
飯田は驚くほど冷静にそれに気づいた。
小林アヤからのDMだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます