〈大いなる騎士〉

◆魔晶石炉を動力源として駆動する、全長数メートル~数百メートルの人型/獣型ロボットの総称である。各大陸によって、その呼び名は様々。


◆かつては〈騎士の巨人〉(ギガース・エクエース/Gígas eques)もしくは〈貴重なる大巨人〉(ギガース・エクシステンティア・ディーグナ/Gígas exsistentia digna)と呼称されていた。古代遺跡から発掘される、非常に希少な遺物であった。


◆ちなみに再生歴は、神代歴時代に作られた〈大いなる騎士〉の製造/量産技術が、地球世界から来た異邦人や転生者からなるロボット工学の専門家と技術者達によって再構築/復元された事に由来している。それら開発/量産技術が空域全域に無償公開された年をもって、再生歴元年と制定され、その結果、神代歴と再生歴前の年代基準が作られる事になった(神代歴と再生歴前と再生歴が制定されのは、再生歴七四年/西グランディスローマ帝国暦三二八年の事になる)。


◆コモンズ(C)・レア(R)・スーパー/スペシャルレア(SR)・スーパースペシャルレア(SSR)の等級区分が存在する。これらの名称は各国によって呼び名は様々。しかし等級区分は国際規格なので共通である。


◆主に骨格使用型、袋体使用型、混合設計型、特殊型の四種類に分けられる。主な特徴は下記の通りである。


◎骨格使用型:ハイペリオン合金製の主骨機構(ボーン・フレーム)に魔晶石炉や魔力伝導体、人工筋肉や機械部品(また特殊有機化合物)を内蔵/付属させる形で機体構成がなされているタイプ。多くのSRとSSRクラスの〈大いなる騎士〉はこの型である。袋体使用型に比べると製造コストは高く、または専門技術者による整備/オーバーホールが必要不可欠である。駆動骨格(ムーバブルフレーム)型と外殻支体(モノコック)型と折衷設計(セミモノコック)の三種類に大別される。


・駆動骨格型の特徴:主骨機構が外殻支体型より大きく、装甲材と連動して駆動する構造になっている為、内蔵火器/機構を外殻支体型よりも搭載出来ないが、部品構造がより緊密に一体化している為、外殻支体型よりも堅牢性と柔軟性が高い。しかし、部品構造が一体化しているが故に、破損時の修理の際には専用部品の使用、並びに機体全体を修理せねばならず、修理費用が外殻支体型よりも高い。また外殻支体型よりも機体重量が重くなる傾向がある。


・外殻支体型の特徴:主骨機構をあくまでも機体基礎にしか使わず、基本的に装甲材によって機体を支える構成を行っている。その為、駆動骨格型よりも内部の空虚空間の確保が大きく可能で、様々な内蔵火器/特殊機器類を数多く搭載出来るのが特徴である。駆動骨格型に比べると堅牢性と柔軟性が落ちるものの、破損時の修理の際は他機種の部品を流用したり、破損箇所だけを撤去して修理する事が比較的容易に出来るので、修理コストが駆動骨格型より低く抑える事が出来る(ただし、袋体型の様に、ズブの素人でも容易に修理出来るという感じではなく、専門技術を持った整備士が不可欠である)。また空虚空間が多い為に、駆動骨格型よりも機体重量が軽い傾向にある。


 また外殻支体型の中には、糸状にした結界魔術で機体周囲の空間を覆い、マリオネット人形の様に機体を構成するタイプや、半物質化エネルギーを装甲内部に充填して機体を構成するタイプも存在している。


・折衷設計型の特徴:駆動骨格型と外殻支体型の良い所取りを目指して考えられた中間型。堅牢性と柔軟性が外殻支体型よりも高く、内蔵火器/機器を駆動骨格型よりも多く搭載可能である。多くのSR/SSRクラスの機体は折衷設計型を採択している。長所はバランスがいい機体構築が可能な点。欠点は駆動型よりも柔軟性と堅牢性に劣り、外殻支体型よりも内蔵火器/機器を搭載出来ない点である。


◎袋体使用型:機体構成に主骨機構を使用せず、人型に作られた袋体に高魔力伝導材を充填して作る形で機体構成がなされている。骨格使用型に比べると製造コストが格段に安く、また破損時の整備も袋体の破れた箇所に絆創膏を貼り、伝導剤を再充填すれば済む為、ズブの素人でも修理が可能で、専門技術者によるオーバーホールを必要としない。また構造上可変が容易なので、変形機構を持った機体もこのタイプが多い。製造の際は袋体を作るだけでいいので高速量産も容易である。ただ骨格使用型に比べると。大幅に堅牢性に欠ける。主にCクラスを中心とした民生用に使われる機種はこのタイプが多い。主にゲル充填型、気体充填型、砂状伝導体充填型の三種類に大別される。中でも気体充填型が調達/運営コストが最も安いので、市場に多く出回っている。


◎混合設計(ハイブリッド)型:骨格使用型と袋体使用型の特性が混合された機種。種類は様々なあるが、主に細い主骨機構を内包した袋体に伝導材を充填しているタイプが多い。堅牢性と量産性と製造コスト的には骨格使用型と袋体使用型の中間程度である。袋体使用型が持つ高い変形性能を保持しつつ、骨格使用型の堅牢性が確保出来るので、可変能力を持つ軍事用(主にRクラス)、並びに高級民生用に使われている事が多い。


◎特殊型:上記三種類のカテゴリーに当てはまらない特殊構造を持つ機体がこのタイプである。試作実験機・特注で作られたワンオフ機に多いタイプである。チューブ構造体や魔力結晶体、魔力充填された流体金属で機体を構成しているケースや、搭乗者の生命力を増幅させ、それを固体エネルギーに転換し、その上に装甲を張り付ける設計の機体etc...様々な特異な設計がなされた機体がカテゴライズされている。


◆獣型の機体は人型に変形する機構を持っているケースが非常に多い。


◆操縦方式は思念操縦方式。本人の意識/思考がそのまま機体にフィードバックされる。操縦桿はあっても、それは搭乗者識別装置/内蔵火器・各種装置類のトリガーであり、基本的に機体制御に用いられる事はない。また点滅光を放つハッチ開閉スイッチを設ける事が国際規格で定められている。

 基本的にそれ以外では操縦席設計には制限がない為、種々様々なデザイン/構造の操縦席が存在している。


◆C~Rクラスの〈大いなる騎士〉には普通の人間/獣人族が乗る事が多い。また戦時の他にも民生用に用いられる事が多く、トラクターやトラックの様に使われる事が多い。Cクラスは大きくても全長三~九メートル前後の物が多く、Rクラスから一〇~一五メートル以上の機体が多くなる。搭載されている機体制御システムである〈人工魂魄〉は最低限の機体制御を行なうのみで、また柔軟な会話能力がない物が多い。また民生用は軍用と区別する為に〈労務人機〉(ラボル・マーキナ)と呼称される事が圧倒的に多い。


◆平均的なCクラスの馬力は一〇万馬力前後。平均的なRクラスの馬力は一億馬力前後である。


◆SRクラス以上の機体になると超音速で動く事が可能となり、基本的に〈血統騎士〉が搭乗する事が圧倒的に多く、そして軍事利用が主体である。SRクラスの機体になると柔軟な会話が行なえる高度な〈人工魂魄〉の情報処理・機体管理サポートが受けられ、SSRクラスになると、更に〈契約の騎士〉のサポートを受けられる様になる。


◆平均的なSRクラスの馬力は一〇〇〇億馬力前後。特注品では兆、京、垓レベルの馬力に達する物もある。


◆SRクラス以上の〈大いなる騎士〉は〈収納庫体〉(ホーモ=ホレウム/Homo horreum)という人型の異相次元格納庫に納められ、操縦者である〈血統騎士〉と随伴して行動する事が可能である。


◆〈収納庫体〉の人格は、格納されている〈大いなる騎士〉の人工魂魄と同じくである。操縦者である〈血統騎士〉が定めた合言葉で、異相次元内に格納されている〈大いなる騎士〉を出現させる事が可能となる。


◆〈収納庫体〉の馬力は概ね一〇万馬力程度の物が多い。武器を内蔵している物も多く、〈血統騎士〉と互角の高い戦闘力を持っている。


◆ワンオフの〈収納庫体〉は、所持している家の家宰や家庭教師を代々務めている。また身体の一部分に仕えている家の紋章が記されている。


◆量産型の〈収納庫体〉は身体の一部分に所属軍と製造番号が記されている。


◆特定の神官家や魔術師の家系の者のみが乗れる様に作られた特殊なSRクラスの機体も存在する。それらの機体は通称的に〈大いなる神官〉や〈大いなる魔術師〉と呼称される。


◆SSRクラスにもなると亜光速~超光速レベルでの行動やテレポーテーション/ワープが可能になる上、〈契約の騎士〉の魔法も展開可能になるので非常に強大な戦闘力を誇る。SSR機単体で約一〇万隻の艦隊と互角の戦力と化す。


◆平均なSSRクラスの馬力は一〇〇垓馬力前後。物によっては𥝱、穣、溝馬力に達する物もある。


◆SSRクラスの機体同士による一騎打ちの勝敗によって、戦闘の趨勢が左右される事が非常に多い。戦略的な不利を単騎のSSRクラスの戦術的勝利によってひっくり返したケースも珍しい話ではない。その為、各国軍隊においてSSRクラスの製造と、その運用システムの管理は最重要事項として取り扱われている。


◆SSRクラスの機体として認定されるには以下の条件が必須である。


①最低でもSRクラスに搭載されている魔晶石炉の三〇〇倍を超える出力を発揮する特注の魔晶石炉、もしくはそれに相当する動力源が搭載されている事(その規模の動力源を搭載しないと金位の〈契約の騎士〉からもたらされる高次元エネルギーを制御する装置を稼働させられない為である)。


②〈契約の騎士〉が、機体に搭載されている〈人工魂魄〉にマッチング認定されないといけない。

 

③〈契約の騎士〉が〈人工魂魄〉に承認されても、〈血統騎士〉と〈契約の騎士〉の霊力波長の共振調和段階が国際基準値に達しないといけない。


④機体全てが一級ハイペリオン合金、もしくはそれと同等の機能がある素材で作られた物である事(そうでなければ、光速加速に機体が耐えられないからである)。

 

◆上記の条件を満たさない機体はSSRクラスとは国際的に認定されない上に、SSRクラスの機体性能を発揮出来ない。


◆SR/SSR機体は機体サイズが全長一五~三〇m程度の物が多い。これは取り回し上と機体整備の安定性を確保する為である。


◆数百mを越すサイズの機体は、移動砲台として、または拠点防衛戦に特化して運用される事が多い。また大きさが大きさなので、動きは鈍重な物が多い。


◆ちなみに戦力的・製造コスト・戦力的にはCクラス>Rクラス>駆逐艦>巡洋艦>戦艦>大型戦艦=SRクラス>旗艦型戦艦>SSRクラス=要塞型戦艦である。

 

◆その為、艦隊を持たず、SSRクラスの〈大いなる騎士〉だけを四~五機保有する国もある。


◆また、『神代機(HR(ハイレア)クラスとも呼ばれる)』(プエル・デウス/Pueri Deus)という、神代人の末裔か『鋼の子』、もしくは機体に選ばれた者にしか搭乗出来ない特殊な〈大いなる騎士〉も存在している。


◆それらの機体は自己修復機能を持ち、通常の〈大いなる騎士〉では起こせない種々様々な超常現象/奇跡を起こせる事が出来る。


◆これらの機体は魔晶石炉ではなく、『スライヤーナの涙』と呼ばれる謎の物質をエネルギー源とした『虹女神(ヨグ=ソトース)炉』と呼ばれる動力炉から生じるエネルギーで動いている機体が多い。この動力炉は操縦者の精神状態の高揚によって出力を劇的に上昇させる特性を持っており、大陸・群島を創造/破壊する程のエネルギーを放出させたケースもある。


◆現状入手出来るHRクラスの機体は、遺跡から発掘されたHRクラスを修理・改修したり、または虹女神炉を搭載した物。または発掘された神代歴遺跡の碑文を解読して、製造方法を獲得した現代の神代人の手によって作られた物。精霊王・魔王、もしくは魔族の長老が神代人や神母神ダーナから預かった神器や設計図を元に作られた物。『神の種』(デウス・セーメン/Deus semen)なる物を土に植えた結果、生えてきたり、その果実の中から現れた物。また神母神ダーナを生んだ大母神スライヤーナが、空域に時たま現れては作った物がある。入手条件が極めて困難なので、保有している国は極めて少ない。


◆馬力的にもSSRクラスと隔絶しており、戴、極、恒河沙、阿僧祇、那由他、それ以上の馬力を持つ機体が多い。また超光速移動の他、通常の物理概念では起こり得ない様々な超常現象/奇跡に値する神秘的な力を使える機体も数多い。死者の完全蘇生や、神を殺せる力を発揮する事も珍しい事ではない。


◆人口数百人~数万人程の小国で独立を保っている国の中には、HRクラスの機体一~二機保有しているケースがある。


◆HRクラスの機体は滅多に製造、発掘出来る代物ではない上に、たった一機で、超大国の武力に対抗、またはそれらを殲滅しうる程の戦力を発揮出来るので、各国政府はHRクラスの機体の確保・製造(修理・改修)・保守管理に非常に神経を尖らせている。中にはHRクラスの機体の研究を国防上の最重要課題と見做し、軍事費どころか年間歳費の大部分を突っ込んでいる国もある。


◆HRクラスのサイズは千差万別。全長数メートル程のパワードスーツ的な代物から、全長がキロメートル単位の機体も存在している。ちなみにHRクラスからは膨大なエネルギーを賄う事が出来るので、平時においてはエネルギーインフラ運営の中核として用いられている事が多い。


◆HRクラスの〈収納庫体〉は人類種との交配が可能である。その為に乗り手である〈血統騎士〉と夫婦関係になり子供をもうけているケースがとても多い。そしてその子供はHRクラスの〈大いなる騎士〉である事がとても多い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る