最終ファイナルラストエンドフィナーレ結末最後まで色々飛ばしてZ 落枯山

 肩叩き県のとある夜の繁華街。人や獣、虫の子一匹としていない孤独な闇の一角で、私はある人物と待ち合わせをしていた。


「待たせたな。」


緑色の体に黄色い鳥のような嘴。背中にカメのような甲羅を背負い、頭にはギザギザのついた皿。いつものあの河童。ようやく待ち人が参上した。


遅かったね、魔王様。

「悪魔大臣のお前が余計なことをしてくれたおかげで、随分と手間取ってしまったよ、全く。」


ようやく我ら魔族の悲願が達成される時が来た。この日のために私は、人助け研究所やはた迷惑追及所、フェチの会に頑張励を立ち上げた。全ては、魔王様がこの世界で調査と実験をスムーズに行なえるように、人間たちの関心を逸らすために作ったもの。まこと現代の人間というものは情報に敏感で、抜け目ない。魔界からの刺客が暗躍していると知れれば、瞬時にインターネットを通じて世界中に我々の存在が明るみにされてしまうだろう。そうなれば、世の為政者や研究者達は魔界を目指して侵攻を始めかねない。科学と魔術の衝突は我々の望むところではないのだ。それ故に、善悪を仕立て上げて争わせ、我々の行動に一切の目が向かぬようにしていた訳だ。ナレーターとしての私の手腕のおかげもあって、人間達にひと欠片の疑念さえも与えなかっただろう。調査が終わった今、この仮初めの肉体ともおさらばである。偶然見つけたアナウンサー志望の人間の体をゆっくりと離れていく。眼鏡が外れたことで、人間世界で私として活動していた男が地に崩れ落ちた。眼鏡の両端から手足たる触手を生やし、レンズの部分に己の目を無数に開く。ようやく元の姿に戻れて、私も一安心である。私が元に戻ったのを見て、魔王様も、仮初めの河童の姿から元に戻るようだ。背中のチャックを下げてやり、虫の脱皮のように河童の着ぐるみを脱ぎ捨てる。緑の体に黄色い嘴、カメの甲羅を背負って、頭にギザギザのついた皿。これこそ、魔王ケイパ様の真のお姿である。愚かな河童の姿のときに比べると、万倍神々しい。


「中年男の頭皮は、魔界住人達の頭皮に近い成分で構成されている。つまり、連中はモルモットとして大いに役立ってくれたということだ。」

おっさんの頭を撫で回す変態的行為を人間たちから軽蔑され、さぞお辛かったことでしょう。

「言うな。全ては魔界の民の為。長たる為政者が、魔界民のために手を汚すのは当然の責務だ。」

嗚呼、素晴らしい。我々の指導者が貴方様でよかったと、全ての民は思っていることでしょう。

「だといいがな。さて、これでようやく魔界にも光が差す。」

そうですね。ようやくこの時がやってきましたね。

「魔界の民で、人間の様に頭に毛が生えるのは、サキュバスとインキュバスだけ…。」

彼らの美貌に憧れる民達は多いものの、如何せん男女問わず髪が無い。

「女性たちの願望は勿論、この件についてはファッション界を牛耳るサキュバスたちからの要請もあった。」

だからこそ、我々が人間界に赴いたわけですね。

「そしてようやく、安全で有効な毛生え薬と頭皮マッサージ法を見つけた。これが広まれば、魔界にオシャレ革命を起こすことができる!」

オシャレに興味があるのは人間たちだけじゃないですからね。

「悪魔大臣、すぐに戻ってサキュバスたちと商品展開の打ち合わせだ。」

了解です。


目から発射した光線で地面に魔方陣を描くと、魔界への扉が現れた。背中の甲羅を翻し、魔王様は、勇ましく故郷への道を歩みだす。私もまた、遅れを取らぬようにその背を追った。

 その後、魔界ではヘアサロンブームが巻き起こり、魔界全土で老若男女問わず、オシャレ旋風が吹き抜けた。




「…。」

…。

「…いい加減にしろよ。」

映画館で私は河童と並んで座っていた。スクリーンには「完」という文字がでかでかと書かれている。

「こんなんでオチると思ってんの?」

…どうだろうね。わかんない☆

「…チッ。」

河童は舌打ちをすると、席を立って、こちらに掌を差し出してきた。申し訳ないが、今回も入場料とポップコーン&ジュース代は、全て割り勘である。

「打ち上げ、行こうぜ。」

!!

「みんな、待たせちゃ悪いだろ?」

…ああともっ!!

 私は、差し出された手を力強く握った。




 最初からここまでお付き合い頂いた諸君に、感謝と敬意を込めて「ありがとう」と伝えさせていただくとしよう。どうか、全てを見てきた君たちには、覚えておいて貰いたい。


諸君の積極的な行動で、誰かが救われること

敵対する人物もまた、諸君のように、何かしらの強い信念を持って生きているということ

己の利だけを優先しては、周囲の賛同は得られないということ

諸君が平穏な日常を過ごせるのは、気付かぬところで誰かが誰かのために奮闘しているから。何人ものその行為が幾重にも重なって平和な世が実現しているということ

河童はきゅうりで懐柔できるとは限らないということ

美しく、気高く、知的で逞しいナレーターがここに存在したこと


輝く明日を切り開くのは、他でもない、君たち自信なのだ。

いつかまた会えるその日まで、代わりの無い君たち自身の生命の輝きを大切に。





☆ほわほわ!魔界通信☆

 はいどうも、今回から始まった期待の新番組「ほわほわ!魔界通信」。メインパーソナリティーの、魔界外道神コノゲスガーでぇす!いぇい!!

 ようやく…ようやくですよ!オーディション受けて…一回、名前だけ登場人物欄に乗せてもらったんですけど、「出番は作れん!」って受付のおねーさんに言われちゃって…。でもこうして180401回目のオーディションに合格して、なんとか本編後のおまけ部分のレギュラーを獲得して…ううっ、諦めなくて良かったよぅ!

 今回はそういう訳で、リスナーさんから私に対しての質問をどしどし受け付けちゃうので…ってえ?スタッフさん何ですか?…はぃ?最終回!?えっ、今回ですか!?

いや、だって番組始まったばかりだし…えぇ!?今回で打ち切り!?嘘でしょ!?だってようやく手にしたレギュラーですよ!?ぷーたんとかデイモンとか、あんな頭おかしい企画なんかよりもずっと有意義な…って、ちょっ!?後一行で終わり!?待って待って!!まだ私のこととか、ラジオアイドルとしての今後の展望とか、本編への

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