密書B 泥棒は映像だけでは飽き足らぬ
石鹸と日替わり風呂の匂いがほのかに香る、人知れぬ秘密銭湯「釜茹で」。その地下に存在する巨大釜の中では、世の人々を陰から守り救う、自称義賊組「頑張励」の面々が、今日もまた、情報を集い、任務へと赴くのであった。
その日、湯船に浸かる人影は二つ。凸三と佑助だ。凸三は、手ぬぐいで五円玉を何度も磨きながら、大きく溜息を吐いていた。
「はぁっ…。旦那とハムちゃんは休みか。二人同時って、なんかタイミング良すぎねえか?」
佑助は、翁の面を被りながら、天狗面の手入れをして頷く。
「当たり前だ…。二人はデー…ホリデーは…自由に取れる…。」
佑助の言い直しに気付いた凸三は、五円玉をマゲに挟み、問い詰めるように佑助に近付いた。
「おい、佑助…。おめえ、俺に何か隠してねえか?」
「…。否…。」
佑助はそっぽを向いて天狗面の鼻を擦る。凸三は逃がすまいと後ろから佑助の首に腕を回して締め上げる。
「嘘はいけねぇなぁ、佑助ぇ!俺は五円玉が好きだが、そいつの節穴のような目って訳じゃあねえんだぜ!?さっさと吐いて、楽になりやがれ!!」
「うぐ…!忍びの道は…秘の道…!許せ…!!」
佑助は、頭巾から煙玉を取り出し、凸三の顔の近くで握り潰した。
「ぶほぁぁぁぁぁーーーーー!!?」
「今日だけは…大人しくしていろ…。」
煙をもろに吸い込んだ凸三は、大きな鼻提灯を浮かべて、佑助の背中で眠りこけてしまった。睡眠煙を翁の面で防いだ佑助は、凸三を背負い、巨大釜の外へと飛び出して、脱衣所の椅子に凸三を寝かせた。
「これも任務だ…許せ…。」
佑助は頭巾から取り出した木札を見て、凸三に頭を下げた。
とある町の映画館。モッサリ頭をそのままに、メイクを落とした私服姿の護衛門は、緊張した面持ちで観客席に座っていた。その隣には、これまた頬かむりを取って可愛く着飾ったお出かけ衣装のハムスター小娘が頬を赤らめて座っていた。父親である番頭がくれた映画のペアチケットを手に、護衛門がハムスター小娘を誘ったのだった。ハムスター小娘は照れながらも快く誘いを受けてくれ、こうして二人のデートが実現したわけである。護衛門は、隣に座るハムスター小娘を横目で見ると、同様にハムスター小娘も護衛門の様子を伺っており、図らずも二人、視線を合わせることになった。ハムスター小娘は頬を一層染めながら、照れ隠しに笑顔を作る。彼女の可愛らしい笑顔に思わず喉を鳴らし、護衛門も頭を掻いて笑顔を見せた。
「あはは、きょ、今日は本当にありがとな!その…ハムちゃんとこうして出掛けられて、オイラ、幸せだぜぃ!」
「わっ、私もよ!モンさんからチケット貰って、その、すごく楽しみだったわ。」
「ハッ、ハムちゃん…。」
「だっ、だからね、その…オフの時だけは、ほっ、本名で…呼んで欲しい、かな…?」
「!!」
護衛門は湯にのぼせたように顔全体が真っ赤になり、気が高揚して、ハムスター小娘の手を握り、彼女の顔を見つめた。護衛門の咄嗟の行動に、ハムスター小娘は驚き、彼の目を見つめ返す。
「もっ、モンさん!?」
「ハム…ふ、ふふ、二重…ちゃん!」
「!!はっ、はい!!」
「おっ、オイラ!その…ふっ、二重ちゃんのことが…」
「うっ、うん…!」
突然告白に踏み切った護衛門に、ハムスター小娘は内心驚きを隠せずにいたが、同時に彼の言葉を待ち望むように、真剣に彼の顔を見つめた。
「おっ、オイラ、ごっ、護衛門様ぁ…ふっ、二重ちゃんのことが、すっ、すす好…」
「ちょっと!!何よそれ!!ふざけないでよ!!」
「す…ぅ?」
「え?」
大事なタイミングというものは悉く逃すのが物語の常。護衛門とハムスター小娘のいい感じのムードを台無しにした空気の読める怒声は、二人の後方から聴こえてきた。手を離し、二人は顔を見合わせて立ち上がり、声のほうに振り向くと、二人の少女が席に座る男の前に立っていた。少女の一人は困ったような様子で友人を宥めており、もう一方の少女は、怒った様子で男に大声を浴びせていた。そのトラブルの原因たる男は、少女の声に耳を貸そうとせず、口元を緩めて上映が始まるのを待っている。
「なんでぃ、客同士のトラブルかぁ?」
「モンさん、あれ見て!」
「ん?」
ハムスター小娘に服の袖を引かれ、彼女が指差す方を見る護衛門。視線の先には、男の隣の席二つ分に彼の荷物であろう物が載せられている様子が見られた。
「きっと、あの子達の席を勝手に荷物置き場にして占拠しているんだわ。」
「ふてぇ野郎だなぁ…。」
二人は再び少女達と男のやり取りを観察するが、相変わらず少女が怒り、男が不動に徹する。状況が一切動こうとしない中、護衛門はある違和感に気付いた。
「なぁ、ハム…二重ちゃん。あれだけ客が騒いでるってぇのに、スタッフが一人も来ねえなんて、おかしくねえか?」
「そういえば…。関わり合いたくないっていう他のお客さんの心情は分かるけど、スタッフさんまでだんまりっていうのは、釈然としないわね。」
「その答え、恐らくあのカバンにあるんじゃねえか?」
「カバン?…あっ!」
男の隣の席に置かれた黒いカバンに注目する二人。中央に何かのロゴが入っており、二人はそれに見覚えがあった。
「あれって、この映画館の…。」
「あんなグッズ、売店には売ってなかったぜぃ。つまりあの男、映画館のお偉いさんか何か…その可能性が十分に高ぇ!」
「でもお偉いさんが何でわざわざあんな真似を?」
「さあな。けど、誰も救いの手を差し伸べねぇ以上は!」
「私たちの出番、ね!」
二人は顔を合わせて頷き合い、それぞれ行動を開始した。ハムスター小娘は、一度シアタールームを出てトイレに駆け込むと、変化の術で従業員の姿になり、少女達のもとへと向かった。一方、護衛門もまた部屋を出て、シアター装置の制御室近くの壁に寄りかかり、誰かを待つ振りをしながら、右のもみ上げを引っ張る。すると、モッサリヘアの後頭部からニョキニョキとコードが伸び、ドアと床の僅かな隙間から中に侵入。部屋の中央に設けられた制御装置に接続すると、モッサリ頭から数種類のボタンが付いた機器を取り出し、少女達のいるシアタールームの出入り口を見た。ハムスター小娘は、サムズアップする護衛門の姿を確認し、一度頷いて、シアタールームに入っていった。依然として男に怒りをぶつける少女の元へと駆け寄り、怒った少女の顔を覗き込む。少女は最初驚いた様子でハムスター小娘を見たが、すぐに気を取り直し、男を指差して強く訴えて出た。
「従業員さん!あいつ、私たちの席を勝手に物置にしてるんです!注意しても話を聞かないし、座れないので何とかしてください!!」
「承知しております。そのためにお伺い致しました。御迷惑をおかけして申し訳ございません。私の方からお話をさせていただきますので、それまでお手数ですが、外でお待ちいただけますでしょうか?お荷物の移動も御座いますので…。」
ハムスター小娘が深々と頭を下げると、二人の少女は互いの顔を見て頷き、部屋から出ていった。少女たちが廊下に出てきたのを合図に、護衛門は赤色のボタンを静かに押す。すると、シアタールームの照明が全て消え、ドアの開いている出入り口付近以外は、真っ暗になってしまった。照明が落ちたところで、ざわめく室内の声を気にせず、ハムスター小娘は、依然としてスクリーンを見つめる男に近付き、自分の唇を数回擦ってから、男の顔を覗き込んで、ふぅっと息を吹きかけた。ハムスター小娘の息を吸引した男は、あっという間に鼻提灯を作り、眠りこけてしまった。その間に、ハムスター小娘が、荷物を持って外に出て来る。廊下で駄弁る少女達に笑顔で会釈し、再び室内に戻ると、今度は男と肩を組みながら、わざとらしく声を掛けて、外に出てきた。そこで少女達に対面し、ハムスター小娘は笑顔を見せる。
「大変お待たせいたしました。どうやらこちらのお客様、話の途中でお休みになられていたようで…。心苦しいのですが、お荷物を移動させていただきました。これで座れるようになりましたので、どうぞ、上映をお楽しみ下さい。真に申し訳御座いませんでした。」
「あっ、いえ!こちらこそ、助けてもらっちゃって…ありがとうございます!」
少女二人は笑顔で頭を下げると、自分の席へと向かっていった。それを確認して護衛門は再びボタンを押すと、照明は復活。左のもみ上げを引いて接続したコードを回収し、ボタンの付いた機器を頭に戻した。人目を確認して変化を解いたハムスター小娘のもとに駆け寄り、男を運ぶ役を代わる。ハムスター小娘は男の荷物を手に持ち、近くのスタッフに嘘も交えて事情を説明し、男の身柄を預けた。
その後、シアタールームに戻ろうとした二人だったが、上映が既に始まっており、途中から見るのもあれだからと、映画館を出て、近くのデパートに向かって歩き出した。
「せっかくの、その…デートだってぇのに、水を差されちまって参ったなぁ。」
「そんなこと言わないの!あの女の子たちの笑顔が守れただけでもいいじゃない。それに…」
ハムスター小娘は、並んで歩く護衛門の手をそっと握り、今日一番の笑顔を見せた。「まだ始まったばかりでしょ?デート!」
太陽よりも眩しい彼女の笑顔に、護衛門もつられて笑顔になり、彼女の手を優しくそれでいて頼もしく握り返し、お得意の歌舞くポーズで声を張った。
「あっ!勿論でぇ~~~!!!デートのエスコートならぁ~、この、護衛門様にぃ~、あっ!任せておけぇぇぇいぃぃぃ~~~~~~!!!」
「ふふ、しっかりよろしくね!モンさん!」
「おうよぉ!」
恥ずかしさなぞ何処へ行ったか護衛門とハムスター小娘。二人の恋路を祝うように、雨も降っていないのに、空には大きな虹の橋。燃えるような愛が空を紅く焦がすまで、初心な男と女の楽しい時間は、いつまでもいつまでも続いたってぇ話でございます。
これにて、めでたしと致しやしょう。
☆デイモン・ヨゥディのトゥリービャ☆
やあ、子供の時に家族や親戚にちゅっちゅしたのはノーカンだと頑なに主張するファーストキス重要視なみんな!
トゥーリッホァ!!
物心付いた時のファーストキスの相手が、草むらでピョンピョン跳ねていたメスのバッタだった異種間交配危機のスペシャリスト、デイモンだよ!
余ったご飯があると、ついついやりがちなのは、握って醤油をぶっかけて焼く…そう、YAKIおにぎりだね!
デイモンもママが出掛けて一人お昼になることが365日頻繁に起こっていて、毎回出されるあの狐色のしょっぱい奴に頭を悩ませていたよ!初めはいいんだけど、8ヶ月過ぎた辺りから、塩にぎりに不倫したくなるんだよね!デイモンってば罪な男!
というわけで、今回は、デイモンが連続YAKIおにぎりのマンネリを回避しようと試みた奮闘記を、ドビュッシーの月の光に乗せてお送りしちゃうよ!
●バターぬりぬり
両面にバターを塗ってフライパンで少し焼くよ!バターのバターたるバターっぽさが、醤油の酸味とマッチして、まぁ悪くねぇんじゃねぇかな!でも、持つと手が油っぽくなるから、お箸とかフォークとかで食べようね!
●粉チーズパッパ
バターを粉チーズに変えただけだよ!チーズの独特の風味が楽しめるし、チーズってぶっちゃけ万能だから絶対合うと思ったんだ!
で・も…
惨☆敗
チーズの味めっちゃ薄いねん!多分普通のとろけるチーズでも同じ結果だったと思うけど、やっぱり、トマケチャとかデミグラとかで味付けしたほうが、ね!てゆーか、もうパンとハムとレタス挟んで食べてたほうが良いレベル!味気ない!
●味噌汁にドビュッシー
ドビュッシーさんごめんなさい!違うんです!味噌汁にINして、おじやにしてもいいんじゃないかなって!だってよくやるでしょ?ご飯に味噌汁ぶっかけて頂く神料理!味噌汁+ご飯は最強なんだよ!YAKIおにぎり=醤油に汚染されたご飯だから、神方程式的にはベストマッチ!
その結果…確かに悪くない!ていうかこれもうYAKIおにぎりである必要がなかった!寧ろ塩分とか塩分とか、後塩分も気になるし、ノーマルライス一択でしょ!
●ドレッシングで華麗にドレスアップ
ない!絶対にない!
あ り え な い !!(泣)
●ケチャマヨ
ケチャップだけでいいね…。ちょっとしょっぱいケチャップライス…。うん…。
●チョコレイトッ!
おろろろろr(不適切な表現が含まれたため自主規制いたしました)
●助けて!山本さん!
山本「無理。」
誰!?
どうだったかな?これで君も、新学期にコミュ障脱出して、友達百人を目指そうね!
次回も、日常でちょっぴり役に立つかもしれない豆情報をお届け!
それではみなさん…
トゥーリッホァ!
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