しひぃしひぃしひぃ
殺屋賛歌
命とは何だ?生命とは何だ?魂とは、心とは、肉体とは…。照りつける太陽に思わず目を細める。アメリカに留学していた頃、ホストファミリーだったブルースは、よく言っていた。
「俺たちは命を貰いながら生きている。でも、貰ってばかりもいられない。いつかは俺たちもあげる側になるんだ。その時が、俺たちの最後であり、誰かの最初になるのかもしれない。」
夕日に赤く染まるブルースの顔は笑っていたが、心の奥底では夕立が降り注いでいるように思えた。それから一週間後だ、ブルースがあげる側になったのは。ジョンソンさんに抱かれて、彼は穏やかな終わりを迎えた。ブルースの眠る揺り籠の上には、一面の野花が咲き乱れた。彼の命の輝きが宿ったように、赤や黄色、青に紫…様々な感情を季節を巡らせて表わしてくれる。ブルースが尊敬していたリチャードおじさんは、彼の寝床に腰を据える度に目を閉じて、在りし日の彼に語った言葉を俺にも話してくれた。
「命とは鎖だよ。誰かと誰か、誰かと何か、何かと何かを繋ぐ重くて硬い鎖。」
「終わりを迎えたら、鎖から解放されるの?」
リチャードおじさんは草原に吹くそよ風のように俺の頭を撫でてくれた。ブルースもまた、おじさんに同じ質問をしたというものだから、驚いた。俺とあいつも、恐らく硬い鎖で繋がっていたのかもしれない。結局、質問の答えをおじさんはくれなかったが、聞いておきながらも自分自身、既に答えを知っていたのだ。
「鎖が解けることなんて、一生が終わってもねえ。この地に生ある限り…。」
仕事に向かう途中に、公園で戯れる子供達の姿を目にする。彼らもこれから、多くを貰い、果てに多くを与えるのだろう。彼らが生を全うし、無事に最後の転換期を迎えられるように、これからも俺は残酷非道なこの稼業を続けていくとしよう。
俺の名は、スモッガーTR。命を尊び、命を弄ぶ、罪な殺し屋だ。
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