密書6 自身の自信

 煙突から湯気をポッポと吐き続ける千両箱型の隠れ銭湯「釜茹で」。入り口の暖簾を潜り、番頭に特定の料金を払うことで、スタッフルームから地下へと向かうことができる。銭湯地下には、巨大な釜の五右衛門風呂が聳え立ち、混浴風呂として利用されている。その秘密の園で、世のため人のため、影ながら活躍する自称義賊組「頑張励」の面々が、今日もまた情報を持って集い、救済のための任務の割り当てをしていた。

 会議が始まると、早速凸三が手を挙げて集めてきた情報の中から気になったものを選び、皆に伝える。

「たまたま道を歩いていたんだが、大きな独り言が聞こえてきてな。ちょいと失礼して聞き耳を立ててみたんだが、その家の住人、対人ですっげえ悩んでるみてえなんだ。」

「人に会うのが怖ぇってことかぁ?」

「んにゃ、そうじゃなく、人に会って接客やら遊びやら…あれこれやって別れた後に問題が起きるみてえだ。」

「問題って?」

「『接客に失敗した』とか『あそこでああしたのはよくなかった』とか、一人になって過剰に自分を責めちまうらしい。」

「反省は…大事…。」

「俺も最初はそう思って帰ろうとしたんだが、どうにも気になっちまって、それから少し様子を見てみたんだ。そしたら、言うほどの失敗点もねえってのに、友人たちが帰ってから一人であれじゃねえこれじゃねえと…。」

「自分に自信が無いってことなのかしら?」

「多分な。それも、悔やんで悔やんで悶えながら、自覚無しに外にまで聴こえるほどの声量で独り言を呟く…。」

「近所に…心配掛ける…。」

「それに加えて、その性質が次第にエスカレートしていって、自傷、自殺に至る可能性も0じゃねぇ。早ぇとこ手を打ってやったほうがいいな。」

護衛門が木札を取り、上に掲げると、凸三と佑助は、ハムスター小娘を見た。二人の視線に頷きで相槌を打つと、ハムスター小娘は、護衛門から木札を受け取った。

「ハムちゃん、よろしく頼むぜぃ!」

「ええ!なんとしても立ち直らせて見せるわ!」

意気揚々と梯子を上り、ハムスター小娘は任務へと向かった。


 とある町の一軒家。細身の男が、玄関で初老の女性と親しそうに話をする。女性は彼の叔母で、男に笑顔を見せながら車に乗り込み、手を振って帰っていった。叔母の車が見えなくなるまで手を振り返して見送っていた男は、その後、溜息を一つ吐いて家の中へと戻っていった。自室に戻った男は、ベッドに倒れこみ、枕を顔に押し付けて、呻き声を上げる。その声量は、家中に響くほどだった。

「うううううううううう!!!!!やらかしたあああああああああ!!!!」

顔と枕を密着させたまま、ベッドの上を左右にゴロゴロと寝転がる男。恥ずかしさと悔しさを口から漏らしながら、叔母を接客した際の自分の態度を振り返っていた。

「叔母さん、せっかく来てくれたのに、口下手すぎて全然笑わせられなかった!お茶菓子も特に良い物でもなかったし!!母さんの言葉を信じてあるもので済ませなきゃよかった!!叔母さんに申し訳ないことしたな…。」

男は枕を顔から離し、今度は胸に抱きながら、天井を見上げてまた溜息を吐く。叔母を見送る時に見せていた元気な笑顔は、既に消え失せていた。

「叔母さん、笑顔で『ありがとう』って言ってくれたし、『一人で接客できて立派になったね』って褒めてくれたけど…社交辞令だよな…。実際全然ダメダメだし。はぁぁぁぁぁ!!!!!!嫌だぁ!!恥ずかしい!!悔しい!!死にたい!!あああああああああああああ!!!!!!時を戻して神様ぁぁぁぁぁ!!!!!!」

再びベッドの上を転がり、大声で奇声を上げる男。そんな彼の様子を窓辺で観察していたハムスター小娘は、懐からガラケーに似た通信機器を取り出し、ボタンを押した。すると、男の家の電話が鳴り、その音に男は体を跳ねさせて反応した。呼び出し音が二度鳴ったところで、男は枕を放して慌てて電話に駆け寄り、受話器を取った。

「もっ、もしもし!山本です!」

男の声が通信機器から聞こえてきたのを確認し、ハムスター小娘は、喉を押さえて小さく咳払いをして、男に話し始めた。

「あっ、太郎ちゃん?さっきぶり!叔母さんです~。」

「えっ、あっ、叔母さん!?さっ、さっきはどうもです!」

男は慌てて声のトーンを明るく戻して、叔母の振りをしたハムスター小娘との会話に臨む。

「突然ごめんね!実は忘れ物したと思ってそちらに戻ってきたんだけど、勘違いだったみたいで!年取るとうっかりが多くて嫌ね!」

「あはは、でも何も忘れて無くて良かったですね!というか、うちに連絡してくれれば、探してお届けしますよ!」

「まぁ、嬉しいわ!それじゃあ今度はお言葉に甘えてそうさせてもらうわね!それはそうと…」

「はぃ?」

「家の近くに来た時、太郎ちゃんの独り言、聞こえてきちゃったんだけど…。」

「えっ…あっ…え?えぇ!?」

男から一瞬にして笑顔が消える。顔を青ざめて、胸を手で押さえ、締め付けられるような痛みに耐えた。

「あっ、あの、それって…。」

「叔母さん、太郎ちゃんの接客、すごく嬉しかったのよ?社交辞令でなく、心から。」

「はい…。」

知られていないと思っていた独り言を聞かれていたことにショックを受けつつも、男は叔母の言葉を必死に聞こうと意識を保った。

「太郎ちゃん、もしかしていつもそういう風に悔やんじゃう?」

「…実は。」

男は、知られた以上親族である叔母にならばと、自分の悔やみ症を打ち明けた。ハムスター小娘は、彼の心を解すように優しい口調で語り続ける。

「そう…。自分に自信が持てないのね。」

「はい…。」

「でもね、太郎ちゃんは自分で思っているようなダメな人間ではないわ。太郎ちゃんにお茶を入れてもらって、一緒にお喋りして…叔母さん、充実した時間を過ごせたもの。」

「でも、俺…。」

「叔母さんを笑わせられなかった?笑わせる必要なんてないのよ。」

「え?」

「太郎ちゃんは、お笑い芸人さん?お仕事で叔母さんを笑わせないといけないのかな?」

「いえ、違います…。」

「でしょ?プロでもないんだから、毎回毎回笑わせて楽しませようとしなくていいのよ!大事なのは、笑い声や笑顔より、居心地の良さ。太郎ちゃんは、叔母さんといる時間、苦痛だった?」

「いえ、そんなことはないです!叔母さんも家族みたいな存在ですから!」

「ふふ、ありがとう。もしそれが本当なら、あなたが感じていたように、叔母さんも心地良さや安心感を感じているのよ?面白いお話や美味しいお菓子を用意するのも大事だけど、それって結局は、その居心地良さを作り出すための道具の一つでしかないんだから、あまり気にしなくてもいいの。」

「…はい。」

「私も、他の親戚の人も、お友達も…みんなが一番に望んでいるのは、太郎ちゃんという居心地の良い人間と一緒に過ごすひと時なのだから、太郎ちゃんに失敗なんて無いのよ。だって、太郎ちゃん自身が成功の塊なんですから。」

「…っはい!」

受話器越しに、男は心が晴れたように笑顔を見せながら涙を流し、電話に向かって深々とお辞儀をした。男の心の靄が晴れた様子を確認して、ハムスター小娘は、〆の言葉を紡いで通話を切り、その場を去っていった。


 数日後、釜茹でに戻ってきたハムスター小娘は、番頭から木札と引き換えにアタッシュケースを受け取り、任務の完了を報告した。

「あれから太郎って人、前よりも独り言が激減して、自分に自信を持てるようになったみたい。」

「手遅れになる前に改善できて良かったな。これも、二重ちゃんの百色声のおかげだな。」

「ふふ、おじ様、褒めても何も出ませんよ!」

番頭と笑顔を交わして、ハムスター小娘は、3人が待つ地下へと降りていった。

 自分が失敗したと感じることが出来る人間ならば、その相手を思いやる気持ちも自然に相手に伝わっていることだろう。相手もまたその人間を欲しているからこそ、失敗したと感じようとも何度も何度も、その人のもとを訪れるのである。




☆デイモン・ヨゥディのトゥリービャ☆

やあ、たい焼きを食べる時はサクサク衣を全部食べ尽くすところから始める皮剥ぎフェチのみんな!

トゥーリッホァ!!

お饅頭はこしあん、たい焼きはつぶあん、草餅には白あん、夜はあの子とあんああん…TPOであんを食べ分ける、不屈の和スイーツマスター、デイモンだよっ!

お茶の間のキッズ達の憧れといったら~?

デイモン!

うーん、惜しい!ゴマを擂っていくそのスタイル、デイモンはだいちゅきちゅっちゅー!!でもね、特撮ヒーローって答えが欲しかったのね!

今日は、そんな特撮ヒーローになれちゃう、万能アルティミットゥ・トゥールを紹介しちゃうよ!!それはずばり…デデデ~~~イモン!!

ティッシュ箱(空)だぁぁぁ!!!!

カラッポになったらポイポイしがちなティッシュ箱だけど、そのポテンシャルはグレート高いぞ!!以下の活用例を見て、君も今日からメシア入りだ!!

①変身ベルト

まず、ティッシュ箱を開いて折り目ごとに切り分けようね!箱の底面部分のでっかい長方形の奴が、ベルトの中心になるぞ!内面の何も描かれていない部分に好みのデザインを施しておこう!後は余った側面パーツとティッシュ箱の口に封してた奴(開封時に捨てがちのあれね!)で帯部分とそれを通す部分を作れば…

やっほぉーーう!!変身ベルトの完成ぜ!!

②マスク

「ベルトいらね」っていう縛りプレイスキーや箱がもう一個余ってたエコロジズトのみんなは、同じように箱を解体して、今度は底面と上面の同じ大きさのパーツ二枚を顔を覆うように使うのがポイントだよ!ポインポイン!!箱は一つだけで十分という修羅の道を歩む玄人は、①で余った上面部分の両端に輪ゴムを通して、口の部分が目の位置に来るように調整して、好きな模様をデコレーションしちゃおう!「目の部分も隠れているのが俺様のあたいのジャスティス!」って通な人は、反対側が見えるような色ビニール紙を使って目の部分を覆ってみるとイイ感じにあれだよ!!

③武器

「ベルトもマスクもいらぬ!己の力こそ全て!」という覇道な帝王肌のみんなは用意したものをそのまま、①②を作ってなお箱が有り余っているティッシュ箱コレクターのみんなは新しいティッシュ箱を用意してね!ティッシュ箱の立体的に「←この形になっている部分をそのままに、他のパーツを抜き取っていって、それらで装飾を作って組み立てれば、気分は正義ガンマン、ティッシュ箱銃の完成だ!!銃の特性や弾の種類は、頭の中で補完してね!

「馬鹿野郎!!おれぁ根っからの剣術家だ!!」という騎士団長やSAMURAIさんにはソードの作り方を教えるよ!!側面部分パーツを縦長になるように置いて、縦の長さを保ったまま、横にグルグル巻いていこうね!出来たら解けないようにテープで固定して、それを縦の長さが半分になるように折り曲げよう!折り曲げたものを箱の口の封の部分と合わせて…柄の部分が完成するね!!今度はまた、もう一方の側面部分も同じように縦が長くなるように巻いていってテープで固定してね!そしたら今度は、上面と底面の同じ大きさのパーツ二つを同じ形の剣の刃になるように重ねて切って、切り終わったら、丸めた側面部分の両面に、高さが合うようにそれぞれ貼り付けていこうね!これで刃の部分も出来上がり!後は柄の部分と合わせれば…

ひゃっほひゃ!!!!君だけのエクスカリバーが手に入るぞ!やったね!

他にも、メリケンサックやボウガン、ウィップやペリカンもできるから、色々試してみようね!!

④UCHIVVA

これはとっても簡単!開き口に沿って箱をぺったんこに折り畳むだけ!下敷きで扇ぐときみたいに、心地良すぎる涼しい風が、君の体をクールダウンさせてくれるぞ!シーズンにはちょっと早い時期の気候の急転で、扇風機もクーラーも出していないときに、すぐに作れて涼むことが出来る、亜熱帯地域にもお勧めさ!!


どうだい?ティッシュ箱も馬鹿に出来ないものだろう?

君も、いらなくなったティッシュ箱を捨てる前にもう一度使って、子供の頃に失ったヒーローになる夢を思い出して、華麗に変身してみてはいかがかな?えっ、ハンドメイドよりも市販で売られている玩具の方が万倍かっこいいって?HUHUN!!完全なる論破に、僕は弁護士生命を脅かされたよ!そりゃあそうだ!ティッシュ箱ベルトは99%ティッシュ箱!光ることもないしイカしたSEがなる訳でもない!

う~ん、完敗だよジョニー!!HAHAHAHAHA!!!!!!!!


次回も、日常でちょっぴり役に立つかもしれない豆情報をお届け!

それではみなさん…

トゥーリッホァ!

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