密書2 マンモスは蛾に変わる

 ここは、肩叩き県の田舎の風情残る町。田畑に囲まれた自然豊かなその地に存在する、地元小学校のPTA副会長を務める小柴さんの家。その向かい側に建つのが、人知れず煙突から煙を上げる千両箱のような外観の銭湯。現代に蘇る自称義賊組が集う、彼らのアジト「釜茹で」である。入り口の暖簾を潜り、番頭の男に入場料+五円玉を渡すと、スタッフルームに入ることができる。スタッフルーム奥の階段を下っていき、目の前に現れたドアを開けば、秘密の混浴風呂たる自称義賊組「頑張励」の集会所に辿り着く。巨大な釜の五右衛門風呂にゆっくりと浸かりながら、頑張励の面々は、集めた情報を共有し、人々の笑顔を取り戻すために任務に当たるのだ。

 他の3人よりも遅れてやってきたハムスター小娘は、外側の梯子を上り、巨大釜の入り口に到達すると、今度は内側の梯子を降りて、底板のある地点に足を下ろした。彼女が来たことを確認し、護衛門は、腕に巻いた防水性のスイッチを押して、底板の高さを調整。それと同時に内壁から「金」と書かれた木札が4枚現れた。ハムスター小娘がビキニのお尻を直して、ゆっくりと湯に浸かると、護衛門はパンッと両手を打ち、それを合図に頑張励の情報交換を始めた。

「おっし!そいじゃあ、おめえら、何か気になることとか、あったか?」

「じゃあ私から。買い物をしていたおばさんが野菜の高騰に悲鳴を上げていたんだけど、どうにかならないかしら?」

「そいつぁ難しいな…。こればかりは農家に何とかしてもらわねえと。」

「成長促進の…秘伝の妙薬が…ある…。」

「いや、それ使ってるのバレたら、流通以前に信用を失って結局手が出せないだろ。」

「バレなければ…いい…。」

「その考え方は危ないわ、佑助さん…。」

「…この問題は後回しだなぁ。しばらく様子を見て、解決の兆しがねえようなら、その時はオイラたちの出番でぃ!」

護衛門が歌舞きながら結論を出したところで次の話題を募る。凸三は何度も指で弾いていた五円玉を手で掴み、マゲの隙間に挟んだ。

「バレなければいい、で思い出したが、とあるスーパーでこの所、万引きが横行しているらしいぜ。」

「それってもしかして、最近、兆強落ちょうきょうらく町に新しくできた『チノ-イポン』ってスーパー?」

「おう、確かそんな感じの名前だったな。ハムちゃん、行ったことあるのかい?」

「ええ。この前の休日におじ様にお使いを頼まれて…ね、モンさん?」

「えぇ!?おっ、おう!そうだったかなぁ!?」

ハムスター小娘がウインクして護衛門に微笑むと、護衛門はあごひげを掻きながら顔を真っ赤にして視線を逸らした。

「なんだよ旦那、休日にハムちゃんとデートしてたのかよ!?かーっ!羨ましいったらありゃしない!この、色男!!」

「ばっ、バカ!凸ぅ!茶化すんじゃねえ!!」

「そっ、そうよ凸さん!べっ、別にデートだなんて…。」

護衛門は更に顔を赤くして慌てふためいた。ハムスター小娘も頬を赤く染めていたが、否定しつつも満更でない様子である。話を脱線させて痴話話に盛り上がる3人を見兼ね、佑助は頭巾から水鉄砲を取り出し、お湯を充填して3人に発射した。

「ぶへっ!」

「きゃっ!」

「うおっ!」

「凸三…話の続き…。」

「びっくりするから口で言え!!」

「応…。」

佑助は頭巾に水鉄砲をしまい、護衛門、ハムスター小娘、凸三は顔を手で拭って気を取り直した。

「…えっと、万引きの話…だったな。店には監視カメラとか万引きGメンとか、色々対策されているだろうが、その辺はどうなんだ?」

「俺も人伝に聞いた話だから詳しくは分からねえんだが、カメラは潜ませてあったみてえだが、どういうわけか、怪しい挙動の人間は映っていなかったとか。」

「となると、カメラの位置を熟知した常習犯…だろうなぁ。」

「もしくはカメラの映像に細工ができる内部犯とか?」

「人を越した…魑魅魍魎…。」

「いずれにせよ、犯罪が堂々と横行していると聞いちゃあ、緊急性の高い案件として動かざるを得ねえぜぃ!」

護衛門が木札を壁から取り、3人の前に示すと、五円玉が勢いよく木札に飛んできて、札を弾いて湯船に落とした。

「旦那、今回は俺に任せてくれ。てめえの欲望満たしたいがために、商いを妨げるふてぇ野郎、黙って見てらんねえぜ!」

「とか言って、本当は新しい店の菓子コーナーを物色しに行きてえだけじゃねえのか?」

護衛門は笑いながら木札を拾い、凸三に投げて渡した。木札を受け取った凸三は、サムズアップして梯子を上り、任務に向かった。


 肩叩き県中南部にある兆強落町。家々が連なる住宅街の一角で、開店して二週間が経ったばかりのスーパー「チノーイポン」が営業している。開店して日が短いということもあり、店では広告チラシに割引券をつけ、開店記念大セールを実施していた。店の商品も「お求め安い価格でより良いものを提供する」をモットーに仕入れられ、客に歩み寄る姿勢を大切にしている。そんな接客にも商売にも一生懸命取り組む期待の新店だが、一つ、大きな悩みを抱えていた。開店初日から今日に至るまで、何者かに店の商品を万引きされてしまっているのだ。お客様にお求め安いように赤字スレスレのラインで値引きをしているにも関わらず、心無い人物の所業で商品がタダで持ち逃げされてしまう。開店して数日はレジ未済の商品を探知するセンサーや監視カメラに頼っているだけだったが、犯人確保に繋がらず、以降は万引きGメンを動員して店内の警備を強化している。しかし、それでも黒い影の尻尾を掴むことはできずにいた。

 和装にマゲを結った男が店の中に入っていく。五円玉を手の中で転がす凸三だ。凸三は、店内に入り、一通り中を歩き回ってカメラの位置や客に紛れて店内を巡回する私服のGメンを確認し、一度店を出る。

「カップ麺売り場が狙われているな。」

目視できたカメラの台数やGメンの迂回頻度から、被害の大きい場所に目星をつける凸三。外に置いていた笠を被り、店の入り口から少し離れた場所にある電柱に隠れる。懐から透明なフィルターが穴の部分に張られた五円玉を二枚取り出し、両目に押し当てて、穴から店の入り口を覗き込んで観察を始めた。

 一時間、二時間、三時間…粘り強く観察を続ける凸三。と、彼の視線が鋭くなった。

「見つけたぜ!!」

視線の先には、リュックを背負った長身の男。店から出てきた男は、口笛を吹きながら、凸三が隠れている方とは反対の道を歩き始めた。

「逃がすか!!」

凸三は、フィルター五円玉をしまい、代わりに普通の五円玉を一枚、丈夫な糸が結ばれた五円玉を一枚、懐から取り出し、勢いよく男に向かって投げつけた。

「~♪あだっ!!!」

普通の五円玉が男の後頭部に直撃し、男は前のめりに倒れる。もう一方の五円玉は、糸をリュックのチャックに絡ませ、凸三の手の動きに合わせてゆっくりとリュックを開いていく。男が頭を擦って起き上がるところを見越し、リュックを引っ張るように糸を動かすと、男はその力に引っ張られるようにリュックごと背中から店の中に戻された。狙い通り、男を店に引き戻す勢いで糸が千切れて、リュックは凸三の制御から離れる。男が店の中に姿を消すと同時に、ピピピピピと店の警報音が鳴り響く。リュックが開いたことでセンサーがリュック内の盗品を感知し、警報装置が作動したのだ。店から聴こえる店員の怒声と男の悲鳴を耳に入れ、凸三は、ゆっくりと帰っていった。


「凸三、万引き犯の捕獲、お疲れさん。」

数日後、釜茹での受付で番頭から報酬を受け取る凸三。木札と505円を渡して、スタッフルームへと進んでいく。

「どうやら、犯人はお前が捕まえた男一人だけみたいだね。」

凸三は階段を降りるところで足を止め、番頭に振り返り、笑って見せた。

「さすがに情報早いっすねぇ、お頭。一応今日まで数日間監視を続けてみたけど、商品を盗む輩はその後、一切出てこなかったっすよ。」

「センサー遮断素材さえも無視してバーコードからレジ完了如何を映し出す特殊フィルター…便利だけど、まだまだ試験段階なんだっけ?」

「へい、運用は更なる実験を重ねて有用性と安全性を確立してからっすね。うちの親父が警察の秘密技術部に属しているもんだから、これに限らず、いい実験体に使われてますよ、俺。」

凸三はヒラヒラと手を揺らして番頭にお辞儀すると、階段を下って集会所に向かった。

 月日を重ねるごとに巧妙化する犯罪に対抗すべく、悪を挫く光の組織たちもまた、日々、その技術と知恵を進化させ続けている。暗黒の淵に落ちし、悪魔の傀儡が世に蔓延る限り、彼らの戦いは決して終わらない。




☆デイモン・ヨゥディのトゥリービャ☆

やあ、トイレに入ってまず便座を紙で拭くところから始めるみんな!

トゥーリッホァ!!

牛乳と果物を入れて食べる甘そうなパエリアをいつか作ってみたい、地中海が生んだ奇跡の申し子、デイモンだよぉー!!ウェアォォォォォォォォ!!!!

前回終了後、このコーナーに大量のクレームが届いて、デイモン感涙!三角コーナーに溜められた野菜屑君たちの行き着く先のようにデイモンの心を締め付けて止まないよ!

という訳で、そこで、画面を見ながらクッキーにケチャップを付けて食べている君に朗報だ!!

デイモン、一生懸命…んーん、いっっっっっっっっSHOW県名考えた!フォークリフト試験前日のイメトレぶりに頭をフル稼働させたよ!!

そしてデイモン、閃きました!!今回紹介するのは間違いなく、世の全てのみんなに受け入れられる究極料理!

その名も!!…メモの用意はおぅけぃ?大丈夫?硯の仕込みは終わったかい?

おっけえ!ならば行きましょう!デイモンが送る、究極至高の料理…それは…


デデーン!!UMEKOBCHA漬けだ!!


材料はシンプル!ご飯、お湯で溶くタイプの梅昆布茶粉末、あと熱々のお湯!

ご飯に梅昆布茶粉末を振りかけて、お茶を適量シャー!!はい、完成!!

そのまま食べても美味しいし、お好みで刻み海苔や漬物を合わせて食べてもGOO!

お父ちゃんお母さんは、お酒を飲んだ後に〆の一杯として胃に流し込むと、不思議と気持ちがホッとするZO!!

当たりはあってもはずれなし!UMEKOBCHA漬け、みんなも、好き嫌いせずに試してみてね!

えっ、そういうのが欲しいんじゃなくて、もっと手の込んだ料理を教えて欲しいって?HAHAHAHAHA!!時短社会の現代、UMEKOBちゃんに敵う手間隙料理なんて存在するのかい!?え?お前のは料理じゃなく、手抜き飯だって?参ったなぁ、こりゃ一本取られたよ!!世界はブロードウェイミュージカルの演目の数並みに広いんだね!デイモン、また一つお利口ちゃんになったぞ!


次回も、日常でちょっぴり役に立つかもしれない豆情報をお届け!

それではみなさん…

トゥーリッホァ!

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