Season4

密書1 参上!頑張励(がんばれい)

 ここは、仄かに湿った土の香り漂う、古きよき田園風景に囲まれた自然の町。そこで、田畑に囲まれて立地する一軒の駄菓子屋。その裏手に建つのは、地元民が気楽に海産物を食べられる個人経営の回転寿司店。さらにその隣には町内会長の加藤さん家、そのまた隣にはPTA副会長の小柴さん家。その小柴さん家の向かい側にあるのが、今回の主役となる集まりの根城である。千両箱のような外観に煙突が加えられ、夕時になるとホクホクと白い煙が昇る。回覧板を回しに来る近所の住民やお風呂通ぐらいしかその存在を知らない、幻のヒドゥン銭湯「釜茹で」である。知名度の低さもあり、店を訪れる客は少なく、ご近所さんでも水道トラブルや家のお風呂が壊れた時ぐらいしか利用しないため、店内はいつも静かなのだ。にも関わらず、今日まで普通に営業できているのには、相応の訳がある。入り口の暖簾を潜り、番頭の親父さんに大人料金500円と余分に5円玉を払う。すると、番頭さんがカウンター奥のバックヤードに通してくれる。地下へと続く暗い階段を下り、現れたドアを開くと、そこには、梯子がかけられた巨大な釜が待ち構えている。数少ない利用客の中でも、更にごく一部の人間しか知らない混浴風呂がここにあった。巨大釜が浴槽となっているわけだが、この風呂、足元に大きな底板が敷かれている五右衛門風呂となっている。滅多に一般人が入ることのないこの隠れ湯には、連日、影ながら人々の笑顔を守る自称義賊組「頑張励がんばれい」のメンバーが集っていた。

 湯船に浸かる、ちょっと異様な風貌の4人。彼らこそ、頑張励として活動し、人々の生活を誰にも気付かれることなく守り続ける縁の下の力持ちなのだ。そんな人知れず活動する彼らについて紹介するとしよう。なお、ここは混浴なので、彼らは水着とか褌とか身に着けて入浴しているのでご安心を。


「んはぁ~、良い湯だぜぃ~!」

●金沢 護衛門ごえいもん

全面白塗りの顔にくまどりを描いた、もっさり頭にボリューミーなもみ上げはあごひげと繋がり、歌舞くようなポーズが特徴的な頑張励の中心人物。銭湯の番頭の息子で、父からバトンを渡されて皆のまとめ役として働く新世代襲名のニューエイジなのだ。


「モンさん、仕事上がりだものね。お疲れ様。」

●ハムスター小娘●

茶色と白の斑模様がついた布を頬被りしたショートヘアの少女。頑張励の紅一点を務め、実家が忍びの家系ということもあり、多彩な忍術を操ることができるくノ一でもある。


「俺も早く仕事を終わらせて、駄菓子屋にお菓子を買いに行きたいぜ。」

五円型ごえんがた 凸三とつぞう

時代劇に見るようなマゲを結った頭、ギザギザの太い眉毛が印象深い男。五円玉を指で上に弾いてはキャッチし、を繰り返すのが癖で、この混浴場に入るために必要な五円玉は、全て彼の手の中に納まる。


「仕事に…集中しろ…。」

犬落いぬおち 佑助ゆうすけ

黒頭巾に天狗の面をいつも着けている寡黙な男。彼もまた忍びの家系の者であるため、闇に紛れ、黙々と任務をこなすことに長けている。


先代である番頭や隠居の方々を除けば、頑張励はこの4人だけで人知れず活動しているのである。彼らの活動に要する資金や拠点となるこの釜茹での運営資金は、先代たちの伝や同じ志を持った財団グループからの援助によって賄われているのだ。

 今日もまた、巷で耳にした町人達の悲痛な叫び声を寄せ集め、彼らの笑顔を取り戻すべく、任務の割り当てが行なわれる。

「そういやぁ、そろそろ紅葉シーズンに入るってぇのに、ウフン山の散策コースだけは葉が落ちちまって見れねえらしい。」

護衛門は、あごひげを擦りながら、ここに来るまでに仕入れた情報をぽつりと呟いた。季節は秋真っ只中。山を染め上げる美しい色合いを一目見ようと、人々が山に駆り出される時期である。しかし、時期が早すぎてまだ色が変化していなかったり、逆に遅すぎて落葉してしまって見ることができなかった、と苦い経験をした方も少なくないだろう。この時期になると、そうした声が彼らの耳にもよく届いていた。

「確か、あの辺一帯は、例年に比べて気温の変化が激しくて、その影響で春にも野花や樹木の開花が見られなかったって聞いたことがあるわ。」

「自然が相手じゃあ、もう一度葉をつけて変色してください…なんてお願いもできねえしな。」

「…。」

どうしたものかと凸三が考えていると、突然佑助が立ち上がり、護衛門に近付いて、手を出した。

「おぅ、佑助!おめぇ、何か策でもあるのか?」

「落ちたなら…代わりを見せればいい…。」

護衛門は、釜の内壁に掛けられていた「金」と書かれた木札を取り、佑助に手渡した。任務開始の合図である。

「佑助さん、頑張ってね!」

「応…。」

頭巾から煙玉を取り出し、握り潰す佑助。煙が晴れたときには、彼の姿はどこにもなかった。


 肩叩き県の北西部に位置するウフン山。綺麗な湧き水と、春と秋に山を飾る自然の芸術が人気の行楽地である。観賞だけでなく、許可の下りている場所では、山菜採りやキノコ狩りもできるため、時期になると訪れる客で賑わっていた。しかし、今年に入って、局地的な気候の激変が起こり、その影響を大きく受けて、山の植物達は疲弊し、開花や色彩変化の時期を狂わされてしまった。そのため、美しい山のデコレーションを楽しみにやってきた客は、彩り鮮やかな花々、紅葉を見ることができず、肩を落として帰っていくのであった。

 そのウフン山の一角、舗装された道を歩くだけで、道を囲む木々の紅葉が楽しめる散策コースの一部の遊歩道。護衛門が耳にした話の通り、葉はすっかり地面に落ち、肌を露わにした枯れ木が軒並み佇んでいた。

「せっかくきたのに、ここもすっかり葉が落ちちゃって…残念ね。」

紅葉を見にきた老夫婦は、道を歩きながら、裸の木々を見上げて溜息を吐いた。すっかり落ち込む老夫婦を草陰から見ていた天狗面の佑助。懐から何かの呪文が書かれた札を何十枚も取り出し、夫婦や他の客に見つからないように近くの木に飛び乗った。その木の枝の一つに札を巻き付け、隣の木に飛び移る。同じように枝に札を巻き付け、次の木に。目にも留まらぬ速さで同じ動作を繰り返しながら木々を移動していき、最終的には、散歩コース全体に札を散りばめた。コースを一回りして、最初の草陰に戻ってきた佑助は、右手人差し指と中指を伸ばしてくっつけ、他の指を折り畳んだ状態にし、左手にも同様に指の形を作って、左右の手のくっつけた指同士で十字を作り、呪文を唱えた。

「枯れ木に華を…咲かせましょ…。」

佑助がピクンと一度体を震わせると、どうしたことだろうか。一瞬にして、枯れ木に葉が生い茂り、散歩コース全体を紅や黄に染め上げた。草陰の前を歩いていたカップルは、突然現れた自然の色彩に口を開けて一瞬固まったが、すぐに我に返り、山が秋にだけ見せる綺麗な笑顔に目を奪われ、風情に浸っていた。散策コースのあちこちから沸き起こる驚嘆と感激の声を耳に入れながら、佑助は木陰に溶け込むように去っていった。


「佑助君、お帰り。」

「応…。」

数週間後、釜茹でに戻ってきた佑助は、505円と共に「金」と書かれた木札を番頭に渡す。番頭は、一度スタッフルームに入り、黒いアタッシュケースを持って戻ってきた。アタッシュケースを開き、中に敷き詰められた札束を確認させると、再び蓋を閉じてアタッシュケースを佑助に渡した。

「紅葉の時期が終わるまで、幻覚術を保つの大変だっただろう、お疲れ様。」

「問題ない…。」

報酬を受け取り、奥の階段へと向かう佑助の背中を見送り、番頭は静かに部屋のドアを閉めた。

 かの光の結社たる人助け研究所でさえ、その存在を知覚していないお気楽4人衆、頑張励。彼らは今日も沸々と煮えたぎる大釜の中で、人々の笑顔と安寧を願って情報を共有し合っている。



☆デイモン・ヨゥディのトゥリービャ☆

やあ、画面の前のみんな!トゥーリッホァ!!

お茶の間と玄関口にある掃きボウキのアイドル、らりるれデイモンだよ!

みんなはネギトロ丼好きかな?デイモンはね、イチゴシロップの掛かった山盛りカキ氷を見る度に思い出しちゃうぐらい大好きだよ!

今日は、魚の旨味とネギのほろ苦さがびっくりビンゴなネギトロ丼を手軽で簡単に作れちゃう方法を教えてあげるよ!

用意するのは、ご飯、刻んだ小ネギ、醤油とわさび…たったこれだけ!ワオ、シンプル!

まず、ご飯に小ネギを入れて、それから醤油とわさびを入れて、お箸でも何でもいいからごちゃごちゃ混ぜます。はい完成!

お好みで、豆腐や白滝を入れて、トロちゃんを再現してもいい感じになるよ!…え?それもはやネギトロ丼じゃねえし、味が全然違うって?HAHAHAHAHA!それはきっと、君がデザートのプリンを買いに行っている間に、調味料の妖精さんがお茶目な魔法をかけたからさ!かわいい子たちだよ、彼らは!


次回も、日常でちょっぴり役に立つかもしれない豆情報をお届け!

それではみなさん…

トゥーリッホァ!!

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