フェチLas10(ラストォ!) 渡る世間にオチはなし

 ここは、肩叩き県某所。自然溢れる美しい田園風景広がる、郷愁漂う静かな土地である。田畑に囲まれて立地する一軒の駄菓子屋。この店こそ、平和を愛し、人々の笑顔のために戦い続ける、人助け研究所の本部なのだ。店には、今日も組織の中枢を担う3人がコマッターの情報を集めて任務の会議を開いていた。

「とはいうが、マスターを取り戻したのは昨日だから、今日は会議ではなく、マスターの復帰祝いのパーティーだ!」

ということらしいのだ。

「それにしても、ボタン一つでバーと駄菓子屋がひっくり返って入れ替わるなんて、マスターも味な仕掛けを施すもんだねぇ。」

「恐縮です。こういう二面性を持つ建造物を作るのも、私の願望の一つでしたから。」

「後でもう一度バーに戻して、中を見せて欲しいな。」

「構いませんよ。その時は、美味しい駄菓子ジュースをミキサーで作ってあげましょう。」

「おっ、いいねえ!二次会はバーで駄菓子三昧コースと洒落込もうか!」

「「「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!!」」」

「笑えねえよ!!!!」

和やかな店内に突如響く悲痛な叫び。笑い合っていた人助け研究所の3人は、開かれた店の入り口に目を向ける。金色のボディ、サングラスにスーツ姿の河童がこめかみに血管を浮かべて3人を睨んでいた。フェミニストの会第七参謀長、ロリータ・コングレスである。

「ちがわい!フェチの会の名誉会長すぅぱぁK様だい!!」

そんな感じの人物だったと思われる。

「それで、その青少年の自由と未来を守ろうの会の参謀長が、私たちに何のようだ?」

「フェチの会の会長だっての…。あのさ、俺はすんごく悲しいわけ。ブラザー、何で裏切ったの?」

「所長、裏切ったんですか!?」

「ちげーよ!そいつじゃなくて、マスター五郎!あんただよあんた!!」

「え?」

「え?じゃねえよ!『こいつ何言ってんの?』って顔すんのやめろ!短い間だったが、同じ会の仲間だっただろ!?」

「そうだったな、ハイパーK!私とお前は、恋人以上夫婦未満の微妙な距離を楽しむ、なんちゃってアベックだったもんな…罪な女である冴子ちゃんを、どうか許して欲しい。」

「だからお前でもなくて、マスター!!…それについてはもういいわ。百歩譲る。でも、絶対に許せないのはお前!!」

突然河童に指名され、初めての接客に臨むキャバ嬢の心境である。

「お前の心境なんてどうでもいいんだよ!やい、ナレーター。Season3最終話だってのに、俺がまだ残っているというのに、前回の最後の〆は何だあれ!?もう戦いは終わりましたって終結感出まくりじゃねーか!ラスボス無視か!?ラスボスのデータだけ作っておいて、本編には出さず、後で一般の解析スキーさんが発掘して、幻のデータ入りってオチですか!?ふざけんな!!」

「まぁまぁ、落ち着きなさい。ほら、僕の全裸番長チョコシールあげるから、ね?」

「あっ、どーも。いらねえよ!!しかもこれ、ゴリラゲリラ番長…もう300枚は持ってんだよ!!ハズレなんだよ!!よく店のゴミ箱に捨てられてて、見てるといたたまれなくなるんだよ!!!」

「でも、10枚集めると金の悪魔缶が貰えたり」

「それはチョコキューブのデビルマークだろ!商品が違うんだよ!!あーーーー!!!話が進まねええええええええーーーーーーーーー!!!!!!」

進まない話を進めるのが、ナレーターの手腕の見せ所である。苛立ちを覚えたミラクルKは、地団太を踏みながら店から勢いよく出ていtt

「まだ帰らねえよ!!名前もいい加減覚えろ!!なに、面倒臭くなったの?そう書いたら黙って帰ってくれると思ったの?」

「帰ってくれないんですか?」

「帰らねえよ!!!」

さっきから怒鳴ってばかりで、君は一体何が言いたいのだ?

「お前らのせいぞ!!あんなぁ、前回の最後もそうだったが、今回の始まり方…あれもどうかと思うんだよ。」

「何か問題でもあったか?」

「大有りだよ!!バーに俺が残っていたかもしれないだろ!だのに、前回と今回の間にいつの間にか建物を奪い返して、もう全て終わったみたいにしやがって。」

「ここの所有者は私ですが、何か問題でも?」

「それはそうだけど…そういうことじゃなくて!仲間を取り戻しました→基地はまだラスボスの手中→全員で基地に乗り込み、奪還作戦だ!!…これが自然な流れだろ!!」

「でも、昨日店に行った時には、君、いなかったよね?」

「それは…追ってるドラマが最終回だったから家に帰って見てた…。」

「自業自得じゃないか。」

「それは…そうだな…うん。なんか、すまんかった…。」

シュトルゼンXは、がっくりと肩を落とし、店を出ていった。

「違うよ、メルデレンV君でしょ?」

「アスファルタンGWではなかったでしょうか?」

「何でもいい。とにかく、私たちは、青少年の夢と希望を踏みにじる外道の会から世の純粋な子供達を守り抜いたんだ。その事実だけで十分じゃないか!」

「それもそうだね。」

「ですね。」

「「「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!!!!」」」

駄菓子屋に満ちる温かな笑い声。光の戦士たちは、盟友の帰還に改めて、ゼリージュースの祝杯を交わした。


 夕暮れ時の畦道、正義の一団に返り討ちにされたすぅぱぁKは、トボトボと自宅への道を歩んでいた。

「…名前、わざと間違えてたろ?」

…道を歩んでいた!

「この野郎。」

細かいことは気にしないほうが人生エンジョイできるのである。それより、あそこ。

「ん?」

小川沿いに腰を下ろす無表情の河童が、遠方の空をじっと見つめている。

「あっ、あなたは!!」

すぅぱぁKは、愛おしそうに彼に近付き、甲羅を外しているその背中にそっと抱きついた。

「父ちゃん!!父ちゃんじゃないか!!生きていたんだね!!」

「誰だよ?」

河童は立ち上がり、すぅぱぁKの抱擁を解くと、彼に向き直り、無表情な顔で彼を見つめた。すぅぱぁKは、目に涙を浮かべながら、河童と目を合わせる。

「忘れちゃったの!?俺だよ!!サブハチだよ!!ほら、父ちゃんと愛人との間にできた!!」

すぅぱぁKの言葉に、河童はピクリと体を反応させる。無表情のまま、ゆっくりとすぅぱぁKの顔を、体を、観察するように見回し、再び彼と目を合わせた。

「お前…以前、何処かで会ったことあるか?」

「ううん、初対面!」

河童はすぅぱぁKに掴みかかり、華麗に体落としを決めた。地面に伏したすぅぱぁKは、白目を向いて気絶した。河童は舌打ちして、すぅぱぁKの金色甲羅と自分の緑色甲羅を交換し、沈みゆく夕日に向かって去っていった。

 人は、一人では生きていけない。誰かと支え合うからこそ、世界は止まることなく回り続けているのだ。愛情を、友情を…絆を深め、理解を深め、いつまでも笑顔の日々が続くように、我々は、これからも共に歩んでいく必要がある。

 いつまでも、いつまでも…。




☆今日のぷーたん☆



ぷーたんはね、巣立っていったよ。みんなが最後まで、彼を温かく見守ってくれたから、やっと、この時を迎えることができたんだ。次に羽ばたくのは、君たちの番。今度は僕らが、君たちの晴れの日を見守るからね!


今頃、どんな顔で空を見上げているかな?  ぷーたん、ありがとう!

☆ーーーーーーーー☆


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