この恋をどうすればいいかわかりません。

私と同じように、もっとたくさんいろんな事を話したり聞いたり探ったりしたいはずだと。


賭けにでた。


そして賭は、見事に負けた。


学校でも、朝日君がスマホ片手に誰かとやりとりをしている姿を何度も見かけた。


電話しているところも見かけた。


でも相手は私じゃない、ほかの誰か。


それで思った。


私と連絡を取るつもりでいてくれてるならもうとっくにそうしているだろうし、しないということはそのものズバリするつもりも用件もないからなんだと。


話がない...ということ。


だから私が何か送っても卒のない返事を返してくれるだろうけど、それは無視できないからで迷惑なんじゃないかと思った。


それもあるから、私からメールを送ることが出来なくて、二ヶ月も中途半端にうじうじ悩んでいる。


二ヶ月何もやりとりをしていなかったことを聞いたチサはさすがにフォローできないようで、私を傷つけない何かベストな答えがないか探している様子だ。


「だからね、それって最初から分かってたことだから、チサ、そんな困らないで?ね?」


眉間のシワがすごくて、可愛い顔が台無しになっているので慌ててチサの肩を揺すった。


「ごめん、うまい言葉出てこなくて。さすがにそれは私も自信なくしちゃう...かな」


「だよね。もっと早くに気付いてたら、朝日君をこんなに付き合わせることもなかったんだけど」


「朝日君のことばっかり。傷つくのは100パー自分なんだからね。こんな時くらい自分の心配しなよ」


「そうだね」


うん。


そうなんだ、後何時間かしたら私は失恋してることをはっきり自覚するんだ。


先の見える恐怖って怖い。


「...メール、しておこうかな。話したいことがあるって、それくらいしていいよね。朝日君予約みたいな」


「朝日君予約、ね。みはねらしい発想だね。いいんじゃない?予約しちゃいな。で、最後くらいワガママに押し切っちゃえ」


「あはは、そだね」


うん、

分かっていても、最後って言葉はきついです、チサさん。


スカートのポケットからスマホを取り出し、まったく呼び出しなれない名前を画面に呼びだした。


最初に連絡先を交換したときと同じ、プロフにはバスケット選手の写真がアップされている。


誰だか知らないことがまた、朝日君との距離を感じさせられて痛かった。


私はひとつゆっくり息を吸い込んで吐き出し、最初の言葉を打つ。


まさかこんな形で朝日君への最初のコンタクトを取るなんて思いもしなかった。


この連絡先が私のスマホにはいったときは嬉しくて嬉しくて、朝日君の特別になれた気がしてすっかり舞い上がってしまったのを覚えてる。


それだけで嬉しかったのは嘘じゃないのに、どうしてこんなにも欲が出てきてしまうんだろう。


私ってこんなに欲深な人間だったんだと、今更ながらに思い知らされた。


難しい事なんて考えずにもっと私を見てもらえば何か変わったんだろうか。


朝日君からの連絡が欲しいばっかりに賭けて、その賭けにすっかり頼ったあげくに自滅した。


なんてみっともなくて、なんて自分本位だったんだろう。


どうしてもっと歩み寄って話をしなかったんだろう。


朝日君からのコンタクトが、私にはそんなに大切なものだったんだろうか。


何様のつもりなんだと、自分で自分に笑えた。


【部活が始まるまでの時間でいいから話がしたいです。もうお願い事はしないから、これだけは、お願い】


チサに言われてすっかりその気になって、最後は少しワガママを入れてみた。


お願いされたところで、ね、バカみはね。


そして送信したところで気が付く。


「...授業中だよね、今」


こんな時間にメッセージを送ってしまったら、授業をサボっているか授業中にスマホを弄ってるとバラしてるも同然だ。


自分の考え無しなバカさ加減に呆れてものも言えない。


バカみはね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る